毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

文学

『太陽の坐る場所』 辻村深月

有名女優になったキョウコをクラス会に誘う様を、洞窟に閉じこもったアマテラスを引っ張り出す神話に擬える。28歳の男女の「マウント取り合い」に、キョウコの投げかける太陽の光がもたらす化学変化が面白い作品です。正直「ここまで繊細だと生きにくいよな…

『推し、燃ゆ』 宇佐見りん

主人公の あかりは、自分にとっては「完全に普通の人」でした。 とりとめのない一人称視点の文章が「発達障害」っぽい感じを出しているけれど、自分の思考も、これくらいの「とっ散らかり方」だし、学校やバイト先での「コミュニケーション」のしずらさも「…

『コーヒーが冷めないうちに』 川口 俊和

「一杯のコーヒーが冷めるまでの間だけ」過去に戻ることができる、古びた喫茶店「フニクリフニクラ」で起きるドラマ。「過去には戻れる。でも、過去に起きた出来事を変えることはできない」という制約があるけれど、それでも人は「大切な人が過去に残した思…

『凍りのくじら』辻村深月

父の名を継いだ写真家 芦沢理帆子のお話です。中盤から話が加速し、ラストの怒涛の伏線回収は鳥肌ものでした。理帆子の孤独を救った「強い光」がカッコよくて涙が出そうになる。サブタイトルが秘密道具だったり、ストーリーを組み込んだり、随所にドラえもん…

『卵の緒』 瀬尾まいこ

母と小学生の息子と、母親の再婚相手、3人の家族の物語です。いやぁこのお母さん、めちゃくちゃカッコいい! 家族っていうのは、血がつながっているから自動的に成立するものじゃない。逆にいえば血がつながらなくても「愛」があれば成り立んですね。物理的…

『図書館の神様』 瀬尾まいこ

古風な名前に負けず、清廉潔白に全てに全力を尽くしていた清(きよ)は、高校時代にバレーボール部キャプテンとして挫折を経験する。清は大学卒業後に高校の臨時講師になり、部員1名の文芸部顧問となった。生きる指針見失っていた清は、不倫相手のケーキ職人…

『運命の湯/運命の人はどこですか?』 瀬尾まいこ

「運命の人探し」という恋愛アンソロジー企画の一篇らしい。親に付けられた「ジュリエット」という名前。疎ましく思いながらも「ロミオ」を探しちゃう女子のお話です。 「運命の人は思っているよりそばにいる」 というのは、王道の展開だけど中々斬新で衝撃…

『もういちど生まれる』 朝井リョウ

20歳の青春群像劇です。前5話の連作短編形式で、それぞれに視点を変えて立体的に物語が紡がれていきます。最初の2話くらいは、大学生の恋愛ものっぽい感じで、正直読みにくかったのですが、3話目くらいからそれぞれの繋がりが見えてくると、俄然面白くなりま…

『心の闇に灯りを点せ~不思議な少女の物語~』 まつながみつる

全3篇の短編集です。表題作の『心の闇に灯りを点せ』は霊感の強い少女の話。スピリチュアルな要素強めですが、日本人の宗教観が透けて見えたりして面白いです。『家庭教師』での心理描写もすばらしく、良い感じの恋愛ストーリーになってました。 リンク先に…

『僕は僕の書いた小説を知らない』 喜友名トト

前向性健忘となり、2年前の事故以降の記憶が保てなくなった小説家アキラのお話です。 アキラは、パソコンに「引継ぎ」記録を残し、妹や友人の力を借りて生活する。 周囲の人たちが前に進む中、自分だけが「何も積上げられない」ことを怖れ、少しずつ小説を書…

『雨の降る日は学校に行かない』 相沢沙呼

女子中学生たちの「学校での生き辛さ」との闘いを描く短編集です。相沢沙呼さんといえば、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』とか『ロートケプシェン、こっちにおいで』とか、ミステリ名手のイメージが強いですが、本作ではミステリ要素はほとんどありません…

『朝が来る』 辻村 深月

産みの母と育ての母、二人の母親の物語です。後半に語られる産みの母「ひかり」の人生には感情移入しまくりで、追いつめられる場面が息苦しくなるほどでした。苦しいことからは逃げ出したい。意に添わない他人はムカつく。そうやって人間関係を細めていくと…

『幻覚少女』 根本総一郎

数十年前のトンネル事故で死んだ少女の幽霊が、男子大学生に憑りついて、事故原因を作った政治家への復讐を計画します。復讐ストーリーの裏にある「3つの家族のすれ違いと関係修復」が感動的です。再読なのですが、改めて泣かされてしまいました。 リンク先…

『カラマゾフの兄弟』 フョードル・ドストエフスキー

長すぎるのでとっつきにくい印象があったけれど、ミステリとして読んでも、恋愛小説としても、当時のロシア情勢をめぐる話としても、宗教と魂の解放の物語として読んでも面白いです。 殺された父と、三人の息子+一人の非嫡出子 を、当時のロシア情勢を重ね…

『星やどりの声』 朝井リョウ

偉大だった父が亡くなって数年。父が残した「家族の絆」とともに暮らしてく三男三女の物語です。どんなに幸せな家族でも、時間が経てばステージが変わります。死んでしまった父親はもう変わることができないから、子供たちの背中をそっと押すために奇跡を贈…

『さいはての彼女』 原田マハ

忙しい毎日に追われ心が凝り固まった女性たちを「旅」が癒していく4つの短編小説集です。切羽詰まってくると「旅行なんて行ってる暇はねえ!」となりがちですが、短時間でも短距離でも、今の日常を離れてみることが必要なのかもしれないですね。 リンク先に…

『きみと暮らせば』 八木沢里志

「血の繋がらない兄妹の二人暮らし」と、設定はラブコメ風ですが、どちらかというと淡々とした展開です。登場人物の座右の銘として「花を見て根を思う人になれ」という言葉が紹介され「表面に見えているものは、地に根を張った地道な積み重ねの結果である」…

『純喫茶トルンカ しあわせの香り』 八木沢里志

「純喫茶トルンカ」シリーズ第2弾。 東京谷中の路地裏にひっそり佇む喫茶店トルンカと、そこに集う人たちの物語です。 一方的な憧れだと思っていた恋が相手に力を与えていたり幼馴染を守っているつもりが、本当は自分も守られていたり、職を失った友人を助け…

『100回泣くこと』 中村航

「学生時代に拾った犬が体調を崩す。犬が好きだったバイクの音を聞かせるため、4年間放置していたバイクを直そうと恋人が提案する。牛丼を差し入れ、キャブレターの分解整備を手伝う恋人に、彼は突然プロポーズした」という導入です。何かよく分かります。牛…

『純喫茶トルンカ』 八木沢里志

昭和の匂いが残る東京谷中の路地裏にひっそり佇む純喫茶トルンカが舞台。そこに集う人々が織りなす3つの物語です。それぞれ不完全な人たちが、お互いにお互いを思いやり、少しずつ前に進んでいく様子が丁寧に描かれていて、胸が暖かくなりました。 こちらの…

『どうしても生きている』 朝井リョウ

日常で感じる息苦しさ、違和感を徹底的にリアルに描いている。 分かりやすい因果関係に逃げたり、誰かのせいにして諦めたり、思考停止して無意味にはしゃいでみたり、痛みを無視して「大丈夫」と言ってみたり。生々し過ぎて心が痛い。メンタルが弱っていると…

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』 斜線堂有紀

身体が金になってしまう奇病を患う女性と、純粋な愛情を証明するため「完全解」を探す少年の物語です。 その時、二人が死んでいれば「完璧」だったかもしれない。でも完全じゃない世界で生きることもまた素晴らしい。 こちらのリンク先にあらすじと感想を載…

『小説の神様』  相沢沙呼、降田天、櫻いいよ、芹沢政信、手名町紗帆 、野村美月、斜線堂有紀,、紅玉いづき

8人の作者さんによる「小説の神様」をテーマにしたアンソロジーです。 作家目線だったり、書店員だったり、読者だったり、編集者だったり、それぞれの作者が様々な視点から「小説の神様」を解釈して作品に仕上げています。「本を読むことは自由。どんな解釈…

『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』 山田詠美

長兄を亡くし壊れ始めた家族を取り戻そうと戦う3人の子供たちの物語です。 色々面倒な世の中で、せめて家族とは自然体で気をつかわず接したいと思うけど、綻んでしまったときに目を背けるわけにはいかない、ということですね。 こちらのブログにあらすじと感…

『有頂天家族』 森見登美彦

森見登美彦さんらしい京都ファンタジーの世界で、ユルく生きる狸たちがカッコいい。ただ楽しく生きようとする狸一家が、狸鍋愛好家やライバル狸たちに巻き込まれ、家族の絆で乗り越えていくお話です。 こちらのブログにあらすじと感想をあげました。 読んで…

『青くて痛くて脆い』住野よる

人との距離を保つことをポリシーとする田端楓は、青臭く理想を追い求める秋好寿乃と出会い、理想を追求するためのサークル「モアイ」を立ち上げる。数年後、楓は理想を失い変質してしまったモアイへの復讐を始める。 「君の膵臓を食べたい」のような泣かせる…

『君の話』 三秋縋

「完璧な幼馴染」の記憶は作られたものなのか。記憶を操られても、寄生虫に心を乗っ取られても「僕は僕の幸せを信じてあげるべき」なのですね。 うーん、面白かった。 こちらのブログであらすじ紹介と感想を書きました。 こちらのリンクからみにいってもらえ…

『勝手にふるえてろ』 綿矢りさ

妄想が暴走する「こじらせ女子」が面白い。 「好きになった人(1)か、好きになってくれた人(2)か」で揺れ動くピュアなヨシカが「自分の愛ではなく他人の愛を信じるのは、裏切りではなく挑戦」という決意に辿り着くまで。 こちらのブログであらすじ紹介と感想…

『1リットルの涙』 木藤亜也

脊髄小脳変性症にかかった少女が綴った日記です。 徐々にできることが制限されていく様子が生々しく伝わってきて、読んでいて息苦しくなってきましたが、「生きていること」の奇跡を感じさせれる本でした。 こちらのブログに書評を書いたので、リンク先を読…

『武士道ジェネレーション』 誉田哲也

「武士道シックスティーン」から続くシリーズ集大成。高校生だった香織と早苗が、大学を卒業し次の世代へと橋渡しをしていきます。 今作は「武士道とはいかにあるべきか」が掘り下げられ、メッセージ性の高い内容になっていました。 あらすじと書評をこちら…

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