やみくもに量を求める速読ではなく、質を追求する「スロー・リーディング」を提唱する本です。
まずは「作者の意図を正確に把握すること」につとめ、
その上で「自分なりの考えを広げていく」という
創造的で個性的な読書をしよう、という内容でした。
作者自身も遅読家で遅筆家であるといい「ゆっくり読みゆっくり書く」ことを大切にしているようです。
モンテスキューが『法の精神』を書き上げるのに20年かけた例を挙げ、知性的な人間が長期間考え続けた内容を、速読で取り入れようとするのは「フルボディーのボルドーワインを一気飲みするくらい下品」だと断じています。
そうですね。
「暗黒大陸編」期待して待ちましょう。
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『麦酒の家の冒険』 西澤保彦
「ビールが詰まった冷蔵庫と、ベッドひとつしかない家」
その奇妙な状況を「純粋に理論だけ」で解き明かしてく、安楽椅子探偵的なミステリです。
といっても「こういう状況だったら、こういう判断をするのは不自然だよね」みたいな、蓋然性を積み上げていく論理なので「これしかない!」というスッキリ感はありません。
むしろ、ビールに溺れた頭で、気心の知れた仲間とダラダラとダベってる雰囲気がいい。
「安楽椅子探偵」というより「酔っ払い探偵」ですね。
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『玩具修理者』 小林泰三
めちゃくちゃ面白い!
「人間と精密な機械と何が違うの?」と問う『玩具修理者』と、
「時間の流れや因果律って人間の主観だよね」という『酔歩する男』
の2編が収められた短編集です。
小林泰三さんは、思考実験を突き詰めた「哲学よりのSF」の作品に凄みがありますね。
「自我の本質は記憶にあるの?」という問いから思考実験を重ねた『失われた過去と未来の犯罪』も印象的だったけれど、本作は「常識的な感覚」と「思考実験の帰結」のギャップから生まれる恐ろしさが「ホラー」に仕立て上げられて、さらに迫力がありました。
すごい作品です。
『夢をかなえるゾウ』 水野敬也
数年ぶりの再読。読むたびに新しい発見がありますね。
胡散臭い大阪弁を喋るゾウの神様「ガネーシャ」が、「変わりたい」と願う「僕」を導いていく話です。
構成は本当に巧みで
・胡散臭くなりがちな「自己啓発」を、より一層の胡散臭さで上書きする。
・靴磨きなど「具体的で簡単」なことから入り、実際に手を動かさせる。
・中盤のエピソードの積み重ねで、感情移入を深める。
・終盤「ガネーシャがいなくなる」予告で、言葉の重みを増す。
などなど、読者をコミットさせる仕掛けが満載です。
うまいなあ。
内容的には「どこかで見たことのある」話だし、よく見ると前後の整合性が取れてなかったりするんだけど、「その時の読み手に役立つ言葉」があれば、十分有益なのだと思う。
今回の自分には「ただでもらう」がハマった。
難しけどもらいに行こう。
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『太陽の坐る場所』 辻村深月
有名女優になったキョウコをクラス会に誘う様を、洞窟に閉じこもったアマテラスを引っ張り出す神話に擬える。
28歳の男女の「マウント取り合い」に、キョウコの投げかける太陽の光がもたらす化学変化が面白い作品です。
正直「ここまで繊細だと生きにくいよなぁ」という展開です。
それでも「あなたより私が幸せ」から「自分の大切なもの」へと価値観が切り替わっていく様が、なかなかダイナミックでいい感じでした。
辻村深月さん、流石の描写力です。
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『超約ヨーロッパの歴史』 ジョン・ハースト
副題に「The Shortest Hisotry of Europe」とある通り、短くまとめられたヨーロッパ史解説です。
短いのですが、ヨーロッパ文化の起源、侵略と征服の歴史、キリスト教の影響、言語や農業からの分析、封建制から近代の議会制民主主義までの流れ等々、それぞれの切り口が独特で興味深く読むことが出来ました。
受け取った印象は
・ローマ帝国以降、西ヨーロッパは小国乱立の期間が長く「国」の観念は希薄。
・その分、キリスト教が統一バックボーンになっている。
・大国構築のための「民族」というフィクションは今日も生き残っている。
というあたりです。
EUという超国家の実験が、かつてのローマ帝国を超えて、あるいはキリスト教圏を超えて広がるなら、面白いなあと思います。
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『「Why型思考」が仕事を変える 鋭いアウトプットを出せる人の「頭の使い方」』 細谷功
表面的事象や行動をなど「何を」を重視する「What型思考」と、その背景にある本質や行動の背景を考える「Why型思考」について解説する本です。
状況が変わっているのに前例踏襲を続ける思考停止が多いですね〜
「Why」を考えることは大事です。
逆に、直接的な対人関係では「Why」を押し付けてくるのは勘弁してほしい。
「〇〇が欲しい」という客に「どうして〇〇が欲しいのですか?そいうことなら△△はいかがですか?」とかいう営業マンは出禁で。黙って〇〇を持ってきて。
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