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『宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎』 村山斉

宇宙の原初を探る手掛かりは極小の素粒子の世界にあり、素粒子を分析していくと宇宙の広がりに繋がっていきます。広大な宇宙と極小の素粒子の世界は、自らの尻尾を飲み込む「ウロボロスの蛇」の様な関係だとして、素粒子物理学から宇宙の姿を探ろうとします。

「宇宙は何でできているのか」「それを支配する法則はどのような物か」が本書のテーマです。

 

タイトル

宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎

 

作者

村山斉

 

あらすじ・概要

  • ものすごく小さくて大きな世界

人類に観測できる宇宙のシズは10の27乗メートル、一方で現時点で最小単位と考えられているクォークは10のマイナス35乗メートル。

初期の宇宙は高エネルギーで光も飛び出ることができなかったため、当時の様子を観測する方法はないが、現在残る素粒子から当時の状況を推測することはできる。

 

  • 宇宙は何でできているのか

宇宙の星をすべて合わせても宇宙全体の質量(=宇宙の全エネルギー)の0.5%ほどにしかならない。 ニュートリノのエネルギーを加えても1%程度。全ての原子を集めても全エネルギーの4.4%にしかならない。

23%は、物質として有ることは分かっているが観測はできない「暗黒物質」で構成され、それ以外の73%は正体不明の「暗黒エネルギー」が占めている。

 

  • 宇宙の膨張は加速している

宇宙は膨張し続けるか、どこかの段階で収縮に転じるかと考えられていたが、 観測の結果宇宙の膨張は加速していることが分かった。

 

  • 究極の素粒子を探す

紀元前3世紀ごろ、ギリシアのデモクリトスは万物はたった一つの粒子からできていると考えた。 

17世紀のヨーロッパで元素が発見され、元素は原子から作られる分子からできているという説が生まれた。のちに原子にも原子核と電子という構造があり、原子核は陽子と中性子でできている、さらに陽子も中性子もクォークでできている、というように「物質の根源」を探る動きは継続している。

 

  • 光は波か粒子か-量子力学の始まり

 光電効果の分析から光が波と粒子の性質を併せ持つことをアインシュタインは発見した。ここから素粒子を扱う量子力学が始まったと言える。

 

  • 標準模型

 物質を構成する素粒子はフェルミオンと呼ばれる。

アップクォーク、ダウンクォーク、ニュートリノ、電子の4種類がそれぞれ3つの世代を持つ。

力を伝える素粒子はボゾンと呼ばれる。電磁気力を伝えるフォトン、強い力を伝えるグルーオン、弱い力を伝えるZボゾンとWボゾンで構成される。

 

物質を構成するフェルミオンは同じ場所に複数を置くことができないが、力を伝えるボゾンは排他原理に従わずいくらでも重ねることができる。

 

  • 4つの力

① 強い力

グルーオンが伝達。到達距離は短い。原子核の結合などに働く力。プラスの電荷をもつ陽子が原子核の中で反発しないのは、電磁気力より「強い力」がくっつけているから。

 

② 電磁気力

フォトンが伝達。到達距離は無限。強い力の100分の1程度の力。原子や分子のふるまい、エレクトロニクスの原理。

 

③弱い力

Wボゾン、Zボゾンが伝達。強い力の10マイナス5乗程度の力。中性子のベータ崩壊などに影響する。

 

④重力

グラビドンが伝えると予測される。強い力の10マイナス40乗の力しかない。万有引力。

 

4つの力を一つの原理で説明することが、現在の物理学者の大きな目的。

 

  • 不確定性関係

位置の曖昧さと運動量の曖昧さの積はプランク定数りょり大きくなる。ミクロの世界では場所を正確に決めると運動量の曖昧さが増し、運動量を正確に決めると位置が曖昧になる。

これは、エネルギーの曖昧さと時間の曖昧さの積はプランク定数より大きくなると言い換えられる。

時間の幅の短い=寿命の短い素粒子はエネルギーの幅は曖昧だが、寿命の長い素粒子はエネルギーを厳密にコントロールする必要がある。

 

  • コペンハーゲン解釈

素粒子は波と粒子の性質を併せ持つため、観測者が見ていない時に位置は確定せず、観測された瞬間に初めて位置が決まるとする考え方。

アインシュタインは「神はサイコロを振らない」として確立に依存すると考えることを嫌い、未知の法則が隠れているだけだとしたが、現在では 

 

  • ボゾンとフェルミオン

物質を作るフェルミオンは同じ場所に複数置けないが、力を伝えるボゾンは同じ場所にいくらでも重ねられる。

これは両者の「スピン=角度運動量」の違いによるもの。フェルミオンのスピンは1/2、3/2、5/2など半整数になるのに対し、ボゾンのスピンは 2/2=1、4/2=2、6/2=3

など整数になる。スピン同士が干渉しないため複数を重ねることができる。

 

  • 陽子・中性子と中間子

陽子はクォーク3つで構成される。

アップクォーク(+2/3)×2と ダウンクォーク(-1/3)×1  で電荷は+1

 

中性子もクォーク3つで構成される。

アップクォーク(+2/3)×1 と ダウンクォーク(-1/3) ×2で電荷は 0

 

パイ中間子はクォーク2つで構成。

アップクォーク(+2/3)×1 と 反ダウンクォーク(1/3) ×1で電荷は 1

 

反整数のスピンをもつクォークが3つ重なることができることを、仮想的にクォークの色で説明したものが量子色力学と呼ばれる。

 

 

  • パリティ保存の破れ

自然界は左右を区別せず、左右を空間的に反転させてもパリティは保存されると考えられてきた。例えばニュートリノのスピンは左巻きだが、反ニュートリノのスピンは右巻きで、これは鏡に映した状態でCP対称性が保持されていると考えられる。

ところが、タウ粒子とシータ粒子は同一の粒子だが崩壊前後でパリティが保存されていないことが発見され、自然界は右と左を本質的に区別していることが分かった。

 

  • クォークには3世代以上ある

パリティ対称性が破れるケースがあることから、クォークなどの素粒子には3つ以上の世代があると予測された。

2世代であれば2点を結ぶ直線で回転対称だが、3点以上であれば三角形以上の多角形となり、鏡に映す(=反物質なる)ときに対称性がなくなることを説明できる。

後に実際に3世代あることは実験で確認された。

 

  • 「超ひも理論」による「大統一理論」

素粒子を点ではなく1次元の広がりを持つ「ひも」だと考える「超ひも理論」が重力まで含めた4つの力を説明する「大統一理論」の元となる可能性を秘めている。

 

感想・考察

難解な数式などは使わずに素粒子の世界を紹介してくれるので、とても分かりやすいが、本当に腹落ちするような理解には至らない。

「素粒子が力を伝えるというのはどういうことなのか」とか「スピンが整数だとどうして複数の素粒子が重ねられるのか」とか、「そういうものだ」と頭に入れることはできるけれど、突き詰めて考えるだけのベースがない。

 

入門書をたくさん読むだけでは限界があると感じる。

一般教養レベルとして、現代の物理学の状況を知るにはちょうど良いが。

 

 

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