毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

鏡の国のアリス(広瀬正小説全集4)

「左右が反転する鏡の国に入ったら何が起こるか」を

SF的に突き詰めるのが面白い!

素粒子レベルまで反転する考えると、

あまり平和な話にはならなそうです。。

 

【タイトル】

鏡の国のアリス(広瀬正小説全集4)

 

【作者】

広瀬正

 

【あらすじ・概要】

表題作の長編と3つの短編が収められている。

 

 鏡の国のアリス

木崎は銭湯の男湯に浸かっていたはずが

急に女湯になってしまい、慌てて飛び出す。

事情を話した警察でも訝しがられ、

鏡文字や左利きについての専門家である

朝比奈のところに預けられることになり

木崎は左右が全て反転している世界になっていることに気づく。

 

左右が反転し、自分と関わりの深かった

人やモノだけが無くなっていることに戸惑う木崎に

朝比奈はマルチバースの可能性を説き、

「鏡の国のアリス」の作者であるルイス・キャロルも

同じ経験をしたのではないかという考えを伝える。

また左右対称だった銭湯の構造が

マルチバース間を移行した理由なのではないか

という見解も示した。

 

木崎は朝比奈が主宰する「左利きの会」に参加し

朝比奈の娘と親しくなっていった。

また「左利き用サックス」の演奏で注目を集め

経済的な基盤も確保し始めるなど、

徐々に「こちらの世界」に馴染み始めたが

ある出来事を機に「もとの世界」に変える方法を探り始める。

 

フォボスとディモス

火星から戻った宇宙飛行士の建一は

地球に戻った日の夜に恋人のユミと過ごしていたが

深夜にもう一台、建一の乗ったロケットが

帰着したという連絡を受ける。

 

二台のロケットに乗っていた、それぞれの建一は

お互いに自分が本物であると主張する。

 

遊覧バスは何を見た

関東大震災のしばらく後、東北に住む堀川は、

遊覧バスの東京巡りで車酔いをした妻を

親切な菓子屋の佐山夫婦に助けてもらう。

 

戦時の空襲などを経験しながら

堀川家と佐山家の交流は子供の代まで続いたが。。

 

おねえさんはあそこに

ハルオは、おとうさん と おねえさん に育てられ

少しずつ言葉を覚えていく。

ハルオは部屋から出てみたいと言うが

部屋の外はハルオには過酷な環境だった。

 

 

【感想・考察】

 ストーリーも面白いが、

「鏡の世界に入ったら何起こるのか」を

突き詰めて考えた部分が興味深い。

 

面白いと思ったウンチクパートを

紹介すると:

 

インコやチンパンジーなどは鏡に映った自分に反応するが

犬や猫はあまり興味を示さない。

これは知能レベルの違いによるものではなく

犬や猫は、嗅覚や聴覚が鋭い分、視覚依存度が低く

見た目だけの像は本物ではないと見抜いてしまうため。

 

一次元の線は二次元の方向を使えば「裏返す」ことができる。

二次元の面も三次元の方向を使えば「裏返す」ことができる。

三次元の立体も四次元の方向を使えば「裏返す」ことができるだろう。

 

左右対称ではない分子構造もあり

左右が反転した「光学異性体」は

物質としての性質も異なることから

アリスが「鏡の世界のミルクは美味しくない」と

言ったのはおそらく正しいだろう。

 

原子核や素粒子にも空間的に非対称なものがあり得る。

左右が反転し、電荷や磁極が逆になっている粒子で

出来た物質は「反物質」となる。

「物質」と「反物質」が衝突した場合、

 質量がエネルギーに変化され放出されてしまう。

 

日光の陽明門は左右対称の構造だが

一本の柱だけ彫刻が上下逆転していて

対称性を意図的に壊している。

エジプトのピラミッド、アテネのパルテノンや、

インドのタージマハルなど

他国での左右対称な建物でも、

どこかに対称性を壊すポイントが作られている。

完全な対称性に対する「畏れ」があったのだろう。

 

 

科学知識の面白さを味わせつつ

分かりやすく説明しているのはさすがだ。

 

 

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