毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

『放課後図書室』 麻沢奏

ベタな高校生の恋愛ストーリーです。キュンキュンです。甘ったるいです。

自分にもこういう青春もあり得たのでしょうか。。

 

タイトル

放課後図書室

 

作者

麻沢奏

 

あらすじ・概要

高校2年の果歩はクラスメートの早瀬と同じ図書委員になる。

中学時代、果歩の友人を通して早瀬に「告白」したことになっていたが、実際にはお互いを意識するだけで話をすることもない関係だった。

放課後の図書室で二人で過ごすうち、またお互いに意識し始める。早瀬がサッカー部に復帰し図書委員としての活動を止めると知り、果歩は動き始める。

 

感想・考察

ベタな恋愛ストーリーだが、「想いは言わなきゃ伝わらない」「人には多面性がある」というメッセージが伝わる。

 

果歩が「苦手だな」と感じていた友人たちも、腹を割って踏み込んでいくと違う面が見えてくる。果歩の目にはクールで完璧にうつる早瀬だが、早瀬の視点からの描写では焼きもちを焼いて拗ねたりと意外に幼い面がみえる。

人の多様性を認めることで、自分が「自分なり」であることも認められるようになるのだろう。

 

Kindle Umlimited では、普段の自分は絶対に選ばないような本と出会えるのが面白い。

 

 

『図書館の殺人』 青崎有吾

 

体育館の殺人」「水族館の殺人」「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」に続く、裏染シリーズ代4弾です。

物語のリアリティとかを求めるのではなく、純粋な論理パズルとして楽しむ作品です。

ミステリでは王道ネタのダイイングメッセージも「書かれた意図はどうとでも解釈できる」として、内容自体は一切無視しながら物理的な効果だけに着目しているのが面白いですね。

 

タイトル

図書館の殺人 裏染シリーズ

 

作者

青崎有吾

 

あらすじ・概要

風ヶ丘高校の試験期間、図書委員長の城峰有紗は図書館で従兄の城峰恭介と会い話をする。

翌朝、早番の図書館職員が出勤したときに、1階の貸し出しカウンターに血痕を見つけ、2階の書棚脇で城峰恭介が殺されているのを見つけた。

恭介は分厚い本で頭を強打され死んでいた。また血で「く」の字を残し、もう一つ本の表紙の登場人物に丸印をつけていた。丸印で囲まれた登場人物の名が、図書館司書で「く」から始まる「久我山」だったことから、警察は彼を疑うが、アドバイザーとして呼ばれた裏染は「ダイイングメッセージなど、どうにでも解釈できる」として無視し、残された証拠から犯人の行動を辿ろうとする。

 

感想・考察

裏染シリーズも4作目になり、登場人物のキャラクタもだいぶ固まってきた。徹底した論理パズルになっているミステリとしての展開と、キャラクタ小説としての軽妙さがバランス良く楽しい。

謎解き前の段階では裏染の思考過程は見えず、結果だけ示されるので、ホームズが言うように「驚かせる効果」がある。

そして「読者への挑戦」を挟んだ後に「犯人の条件」「犯人ではありえない条件」をから容疑者を絞り込んでいく思考過程を綿密に描く。その一方で犯行動機やダイイングメッセージの意図など、主観的な条件は極力排除している。

もちろん、どれだけ客観的な論理展開に徹しようとしても「どの部分を拾うか」は作者が任意に選べるし、純粋に客観的とは言えないのは哲学論議と同じだが、作者の意図をメタ的にも拾いながら楽しむことができる。

パズラーはルールに則ったファンタジーともいえる。

最後に提示された「裏染本人に纏わるミステリ 」の話も気になるところ。次回作に期待。 

 

 

『夏期限定トロピカルパフェ事件』 米澤穂信

春季限定いちごタルト」に続く小市民シリーズ第二段。

すでに日常系ミステリの枠は超えてます。前作で垣間見せた小佐内ゆきの狂気も全開で、小市民どころかダークヒーローになってます。。

 

 

タイトル

夏期限定トロピカルパフェ事件

 

作者

米澤穂信

 

あらすじ・概要

小市民を目指す小佐内ゆきと小鳩常悟朗の高校2年の夏休みの話。

 

  • シャルロットはぼくだけのもの

夏休みの初日、小佐内は小鳩に「小佐内スイーツセレクション・夏」と書かれた地図を渡し、夏休み中に市内のスイーツを一緒に制覇することを提案する。

翌日小佐内は小鳩に電話し、マンゴプリン2つとシャルロットというケーキ4つを買って家まで持ってくるように頼む。小鳩は店に向かうが人気商品であるシャルロットは3つしかなかった。

 

  • シェイク・ハーフ

小鳩が入ったハンバーガーショップで友人の堂島と会う。

堂島は友人から「ドラッグで遊ぶ不良グループから抜けられない姉を助けて欲しい」と頼まれ、そのグループの動向を見張っていた。堂島は何かを見つけ、「半」と書いたメモを小鳩に渡し「何かあったらここに連絡して欲しい」と言い残して店を出ていった。堂島のメッセージの意味を考えていた小鳩の下に小佐内が現れる。

 

  • 激辛大盛

友人の姉を不良グループから抜けさせようとした堂島だったが「邪魔だ」と言われてしまう。落ち込んだ堂島は激辛大盛タンメンのやけ食いに小鳩を付き合わせた。

 

  • おいで、キャンディーをあげる

老舗の和菓子屋が年に一度の三夜祭りでだけ提供する「りんごあめ」のため、小佐内家で待ち合わせをしていたが、小鳩が訪れると小佐内は外出中で彼女の母親と二人で待つことになった。するとそこに「小佐内ゆきを預かった」という身代金要求の電話がかかる。

 

感想・考察

ケーキの話やメモの解読という日常系ミステリから始まるが、いつの間にかシリアスな犯罪に話が繋がっていくそして合わせ小動物のように可愛らしい小佐内ゆきが、ダークっぷりを徐々に発揮していく。

最後に二人で夏季限定トロピカルパフェを食べるシーンは冷たくて切ない。

 

デカ盛りパフェが食べたくなった。

 

 

『父、母、子』 マルクス・ザイベルト

ダメ男の独白です。

決断できない男のダラダラした自分語りが読んでいて辛くなりますが、最後にちょっとだけ救いを感じさせてくれました。

 

タイトル

父、母、子

 

作者

マルクス・ザイベルト

 

あらすじ・概要

「彼」は妻から離縁を突き付けられ、子供とは週末だけ会うことになる。

彼は自分の母親からも妻からも「何かを完遂する力がない」と評されていた。博士論文を仕上げるため数年かけていたが中々仕上がらない。担当教授に「書けないかもしれない」と訴えたところ、本心では遺留されることを期待していたが、あっさりと受け入れられてしまう。仕事にも就かず、長らく続けてきた研究も無意味となり、家族も失った彼は虚脱感に襲われる。

子供時代に遊んでいた森に息子を連れて訪れたとき、そこに高い鉄塔があったことを思い出し、子供と一緒に投身自殺をすることを思いつくが、その塔もすでに亡くなっていた。

自殺も完遂できなかった彼は、生き残った子供に安堵する。そして自分自身とかつての妻への見方をほんの少しだけ変えていく。 

 

感想・考察

前半のダラダラと読みにくい愚痴の連続が「彼」の屈折した心情を良く表している。短い話だが読むのを苦痛に感じるほどのダラダラぶりだ。

哲学を専攻する彼だが、自分自身しか見えていない。妻も子供も友人たちも、結局は自分との関係でしか捉えられない。物事を決められず完遂できないのも「決断によって何かを失うこと」を引き受ける覚悟がないからだ。

惨憺たるダメ男だが、打ちのめされ全てを失ったと思った時に、ほんの少しだが 視点を動かすことができたということだろう。

95%までは読んでて退屈だが、最後の5%の展開で救われる話だ。

 

 

 

『ムゲンのi : 上・下』 知念実希人

圧倒されました。

医師としての経験なのでしょうか。近親者の死を乗り越えようとする人たちに寄り添い、勇気づけるようなお話です。

幻想的な夢の世界での医療ミステリで、いろいろな要素がテンコ盛りですが、決して煩くはなく、加速していくストーリーに引き込まれていくうちに、暖かい想いが心に満ちていくようです。

素晴らしい作品です。

 

タイトル

ムゲンのi : 上・下

 

作者

知念実希人

 

あらすじ・概要

神経精神科医の識名愛衣は、特発性嗜眠症候群(イレス)の患者を担当していた。これまでに数百人しか症例がなく治療法も分かっていない奇病だったが、愛衣の勤務する病院に一度に4人も入院し、1人は先輩が担当、3人は愛衣が主治医となっていた。

 

疲れが溜まった愛衣は実家に戻り、父と祖母、ペットの猫とウサギに久しぶりに会う。霊能者だった祖母はイレスの患者について「患者は心が弱っている時にマブイ(魂)を抜き取られている。ユタの資質がある愛衣がマブイグミをすれば、彼らを救える。彼らのククルを探せ」という。

愛衣が祖母に教わった方法を試したところ、患者の夢の世界に潜り込んでいった。愛衣はパートナーとなる自分のククルと共に、患者のククルを探すため夢の世界を冒険する。

 

第1章 夢幻の大空

かつてパイロットだった父と一緒に飛んだ空を大切にしていた片桐飛鳥。自分もパイロットを目指していたが、とある事故のため片目の視力を失いパイロットとなることを絶望していた。

 

第2章

冤罪事件を主に扱ってきた弁護士の佃三郎は、元恋人を殺した罪で有罪判決をうけた男久米が自白を撤回し無罪を訴えた事件を担当した。何者からかの情報で検察側が根拠としていた秘密の暴露の瑕疵に気づいた佃は久米の無罪を勝ち取るが、その後、彼の正義を揺さぶるような事件が起こる。

 

第3章 夢幻の演奏会

加納環はあるトラウマからピアノを弾けなくなったが、ある男のお陰で徐々に演奏の楽しさを取り戻していく。しばらく地方に転勤していた環は、久しぶりにその男と会った時、彼が付き合い始めた女性に支配され精神を病んでいることに気づく。彼にその女性から離れることを勧めた環は、やがて恐ろしい事態に直面する。

 

第4章 夢幻の腐食

環のマブイグミで、かつて愛衣自身が巻き込まれた通り魔事件の犯人についての話を聞き、愛衣は動揺し倒れてしまう。数日入院した後、実家に戻るがそこでは状況が一変していた。

愛衣の先輩医師である杉野華が担当しているもう一人のイレス患者は、施錠された特別病室に入れられ、カルテの閲覧もブロックされていた。普段は優しい院長の袴田も、その患者について聞くと恐ろしい剣幕で拒絶する。

 

第5章 そして、夢幻の果てへ

。。。

 

感想・考察

生きることは苦しいかもしれない。でも、それを乗り越えるのは愛。作者からのメッセージが届く。

同じ作者の「死神シリーズ」のような雰囲気だが、もう一歩踏み込んでいる感じだ。

 

「夢」の中では論理が崩壊しているので、論理パズルとしてのミステリにはなっていないが、違和感を感じさせる伏線が散りばめられ、きちんと回収されていくのは気持よく、一気に引き込まれていく。

 

傑作だと思う。

 

 

『吉原刀匠に聞く日本刀とっておきの話』 吉原 義人、鈴木 重好

武器であり美術品でもある日本刀についての本です。

著名な刀鍛冶との対談形式で刀の素晴らしさやその作り方を解説していきます。

 

タイトル

吉原刀匠に聞く日本刀とっておきの話

 

作者

吉原 義人、鈴木 重好

 

あらすじ・概要

  • 日本刀の構造

日本刀の刃は固い部分と柔らかい部分でできている。

硬い方が鋭く切れ味が良いが、衝撃に弱く折れやすくなってしまう。

炭素含有量が1.0%〜1.2%と高く、硬くなりやすいものを皮鉄として表面に使い、炭素含有量が少なく硬くなりにくい部分を心鉄として内部に使う。

 

  • 折り返し鍛錬

折り返し鑿を入れる鍛錬で1回あたり0.03%の炭素を失う。折り返しは13回前後で最高強度に達する。

 

  • 土置き

焼き入れ前に刀身に年度を塗る。粘土の厚みにより冷却される時間に差が出る。急速冷凍の方が硬さが出るが粘りがなくなる。また粘土の厚みの違いは刀の模様(刀文)の形を決める。

 

  • 焼き入れ

焼き入れ前の鋼の炭素含有量は皮鉄の部分で 0.7%程度。この炭素含有量であれば800℃程度でオーステナイト状態となり、これを急速冷凍するとマルテンサイトという固い組織になる。

刃先の部分は焼きが入りマルテンサイトとなり、刃の縁の部分はオーステナイトに変態しつつある状態で沸や匂が刀文として見える。

刀の背の方は皮鉄でもゆっくり冷却されマルテンサイトとなっていない部分、また心鉄として元々炭素含有量が低い部分なので、硬さはないが粘りがある。

また、マルテンサイト化することで刃先の組織が膨張することで、刀に反りが生まれる。

 

  • 焼き戻し

焼きが入った部分と入らなかった部分で勤続組織としての歪みが生じ脆くなるので、180℃程度で温め常温で覚まし組織として安定させる。

 

  • 彫刻

元々は刀の重量を軽減し、重量バランスをとるために行われていた。後期には芸術目的での彫刻もされるようになる。

 

 

感想・考察

現代では、刀に武器としての実用性はあまり求められず、どちらかというと工芸品美術品としての価値が主なのだと思う。それでもその価値は、美術品としての美しさ以上に実用品としての性能が重要視される。この辺は電波時計が安価に買える時代の高級機械式時計の価値と似ている気がする。

実用性がないところでもスペックに美学を見出しちゃうのは、合理的ではないけれど、理解できる。

 

普段読まないような本にも手が伸びるのが Kindle Unlimited の良いところだ。

 

 

『春期限定いちごタルト事件』 米澤穂信

「古典部シリーズ」に近い雰囲気の日常系ミステリです。

タイトルからして甘ったるいラノベ風ですが、さすがは米澤穂信さん、甘いだけでは終わりません。

 

タイトル

春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ

 

作者

米澤穂信

 

あらすじ・概要

小市民を目指す小佐内ゆきと、小鳩常悟朗。二人の高校入学から一年生の夏休みまでの話。

 

  • 羊の着ぐるみ

小鳩は友人の堂島から呼び出しを受け、ポシェットを盗まれた女子生徒を助け校内を探して回る。「出しゃばったマネをせず目立たない小市民に徹する」ことを誓った小鳩だが、推理を働かせてしまう。

 

  • For your eyes only

甘いものをこよなく愛する小佐内は「春季限定いちごタルト」を買った後、途中で寄ったコンビニで自転車ごといちごタルトを盗まれてしまう。

美術部の先輩がOBに託された絵の扱いに困って堂島に相談してきた。堂島は小鳩に助けを求めるが、本格的な油絵を描く人の絵にしては、セル画のようにのっぺりした同じような2枚の絵を見てもその真意は分からなかった。

小鳩は過去の学校新聞やOBの受賞時のインタビューなどを元に、絵の意味を推理したが、自分が前面に出ることを嫌い「小佐内が推理した」ということで真相を暴いた。

 

  • 美味しいココアの作り方

小鳩と小佐内は堂島の家に招かれココアをごちそうになる。「少量の牛乳でココアパウダーを練ってから溶かす作り方」をしたはずなのに、ココアを練った容器もスプーンも見つからない。3つのカップだけでどうやって3杯のココアを作ったのか。

 

  • はらふくるるわざ

中間試験の最中、小佐内の教室でビンが落ちて割れる事件があった。集中力を削がれた小佐内は答えを忘れてしまい、怒りを解消するため封印していたケーキバイキングに向かった。

小鳩は現場検証しビンの落下の真相に気づく。しかし「小市民を目指す」という誓いのため、小佐内も小鳩も言いたいことをかみ殺さざるを得ず、お互い無理のある笑顔を浮かべる。

 

  • 狐狼の心

小佐内と小鳩は 盗まれた小佐内の自転車を運転している男を見つけたが、追いかけると自転車は放置され、タイヤが自動車に惹かれ変形していた。

「春季限定いちごタルト」を盗まれ、自転車を壊された小佐内の怒りは「小市民の誓い」の臨界点を超えた。

 

感想・考察

「頭が切れるが出しゃばらない」小鳩常悟朗は「古典部シリーズ」の折木奉太郎に通じるものがあり、可愛らしく感じられる。一方「高校生と思えない小動物の様な外見で、人見知りで小鳩の背中に隠れ、甘いものが好き」という小佐内ゆきは、可愛らしい描写から始まり徐々に恐ろしさを垣間見せるのがホラーだ。 

「さわやかな青春ミステリ」で終わらせたくはないようだ。

 

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