毎日一冊! Kennie の読書日記

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『父、母、子』 マルクス・ザイベルト

ダメ男の独白です。

決断できない男のダラダラした自分語りが読んでいて辛くなりますが、最後にちょっとだけ救いを感じさせてくれました。

 

タイトル

父、母、子

 

作者

マルクス・ザイベルト

 

あらすじ・概要

「彼」は妻から離縁を突き付けられ、子供とは週末だけ会うことになる。

彼は自分の母親からも妻からも「何かを完遂する力がない」と評されていた。博士論文を仕上げるため数年かけていたが中々仕上がらない。担当教授に「書けないかもしれない」と訴えたところ、本心では遺留されることを期待していたが、あっさりと受け入れられてしまう。仕事にも就かず、長らく続けてきた研究も無意味となり、家族も失った彼は虚脱感に襲われる。

子供時代に遊んでいた森に息子を連れて訪れたとき、そこに高い鉄塔があったことを思い出し、子供と一緒に投身自殺をすることを思いつくが、その塔もすでに亡くなっていた。

自殺も完遂できなかった彼は、生き残った子供に安堵する。そして自分自身とかつての妻への見方をほんの少しだけ変えていく。 

 

感想・考察

前半のダラダラと読みにくい愚痴の連続が「彼」の屈折した心情を良く表している。短い話だが読むのを苦痛に感じるほどのダラダラぶりだ。

哲学を専攻する彼だが、自分自身しか見えていない。妻も子供も友人たちも、結局は自分との関係でしか捉えられない。物事を決められず完遂できないのも「決断によって何かを失うこと」を引き受ける覚悟がないからだ。

惨憺たるダメ男だが、打ちのめされ全てを失ったと思った時に、ほんの少しだが 視点を動かすことができたということだろう。

95%までは読んでて退屈だが、最後の5%の展開で救われる話だ。

 

 

 

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