毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

掟上今日子の挑戦状

「本を読んで、教訓を得ようとか、学ぼうとか、

この先に生かそうとか、そんな風に構えることはないんですよ。

面白いことを考える人がいるなーって、

ただそう思って本を閉じればいいんですよ」

と作中の探偵 掟上今日子が語ってます。

 

西尾維新さんはそう思って書いているのだろうし

本を楽しむのってそういうことなんだと思いますね。

 

掟上今日子の備忘録」「掟上今日子の推薦文

に続く忘却探偵シリーズの3作目です

また楽しませてくれました。

 

【タイトル】

掟上今日子の挑戦状

 

【作者】

西尾維新

 

【あらすじ・概要】

翌日になると全てを忘れる忘却探偵 掟上今日子 が

事件の謎を解く 3つの短編集。

 

掟上今日子のアリバイ証言

アリバイ工作のために話しかけた相手が

翌日にはすべて忘れてしまう忘却探偵だった。

 

とある水泳選手が自宅の浴槽にドライヤーを浸けたことで

感電死していた。

事故死とするには不自然な状況で

第一発見者である知人が容疑者となっていた。

彼は死亡推定時刻には、カフェにいた女性と

話していたと証言したが、

その相手は、忘却探偵の 掟上今日子 だった。

 

掟上今日子の密室講義

名探偵に憧れて刑事になった男に

掟上今日子が「密室」の講義をする。

 

アパレルショップの試着室で女性が殺された。

担当警部のアシストを依頼されて掟上今日子は

カーテンで閉じられただけの試着室だが

監視カメラと目撃者により「密室」となっていて

犯人がどのように抜け出したのかが分からない。

掟上今日子は警部にヒントを出す。

 

掟上今日子の暗号表

「丸いと四角いが仲違い

逆三角形では慣れ慣れしい

直線ならば懐っこい」

残されたダイイングメッセージの謎を解く。

 

繋がりあっせん会社の社長は

副社長が違法に集めた名簿を使っていることを知り

会社の信用を守るため副社長を殺害した。

副社長は絶命する前に血でメッセージを残す。

ダイイングメッセージが金庫の番号である

かもしれないと考えた社長は

それが自分が犯人だと示すリスクも知りながら

探偵の掟上今日子に解読を依頼する。

 

【感想・考察】

忘却探偵シリーズ3作目で 掟上今日子の

キャラがだいぶ固まってきた。

お金にシビアで、割と男好きで、

大胆な行動力を持っている。

そして、翌日にはすべて忘れてしまう

という過酷な状況を受け入れている。

 

掟上今日子の内面心理描写が全く、

それがミステリアスで面白いのだが

忘却探偵がどういう行動原理を持っているのか

のぞき見してみたい気もする。

 

興味が出てきたので

西尾維新さんの別シリーズの作品も読んでみよう。

 

 

文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る

 「リンゴが落ちるのは何故だろう」という疑問から

 ニュートンは万有引力の存在に気が付く。

 

 「万有引力があるのは何故だろう」とい疑問から

 質量が時空をゆがめることで重力が生まれることに

 アインシュタインは気づく。

 

 そして今「質量が時空をゆがめるのは何故だろう」

 という謎に対し諸説が入り乱れている。

 

 世界の仕組みの謎を一つ解くと、また次の謎が現れる。

 だからこそ面白い。

 

 

【タイトル】

文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る

 

【作者】

松原 隆彦

 

【あらすじ・概要】

物理学の視点で日常現象を説明したり

物理学界のトレンドを概説したりしている。

 

いくつかの項目を取り上げて紹介する。

 

・物理学を応用した投資判断

 物理学者であるジェームズ・シモンズが設立した

 投資会社ルネッサンスは、金融の専門家を雇わず

 物理学者や統計学者の手による会社。

 驚異的なパフォーマンスを上げていた。

 個別ではなく全体の傾向を見る統計力学を用い

 エントロピーの増減に着目しているのではないかと

 著者は推察している。

 

・ラプラスの決定論から確率へ

 ニュートン力学の世界では、初期条件が決まれば

 結果はすべて確定するという決定論が一般的で

 世界のすべてを知るものを、提唱者の名から

 「ラプラスの魔物」と呼んでいた。

 ところが量子論の世界では、

 初期条件が決まっていても

 粒子がどこにあるかは観測するまで定まらず

 それまでは確率的にしか分からない。

 ミクロな世界では未来は一つに決まらないと言える。 

 

・メールはどうして届く

 メールは主に電波を介して伝わる。

 波には「周波数ごとに分解できる」とい性質があるため

 多くの情報を一つの波に乗せて伝えることができる。

 

・4つの力とは

 「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4つに

 宇宙で働くすべての力は集約される。

 

 「重力」はもの同士が引き合う力で極めて弱い。

 

 「電磁気力」はマイナスとプラスの電荷が引き合い

 マイナス同士、プラス同士が反発する力。

 原子が崩壊しないのは、プラス電荷の原子核と

 マイナス電荷の電子が引き合うのから。

 重力より圧倒的に大きな力なので重力下でも

 原子は崩壊しない。

 

 「強い力」は原子核の中で陽子と中性子を

 くっつけている力。

 プラス電荷をもつ陽子が複数集まれば

 電磁気力により反発するはずだが

 それを上回る「強い力」が引き合わせている。

 

 陽子を中性子に、中性子を陽子に変える

 β崩壊を引き起こすのが「弱い力」

 

 人間の身の回りのレベルで実感できるのは

 「重力」と「電磁気力」で、

 「強い力」と「弱い力」は原子核の中で働くミクロの力。

 

・空が青く見える理由は

 比較的波長の短い青い光は散乱しやすいため空が青く見える。

 大気の層は8㎞程度だが、夕方や朝方に太陽光が斜めに射すと

 大気を通過する距離が長くなるため、散乱しにくい

 赤い光だけが残って届く。

 

・地球の自転軸が公転軸に対して傾いているのは

 自転軸と公転軸に相関関係はなく、

 「たまたまそうなった」ということ。

 天王星などは90度ほど傾いているので

 極地ではずっと昼間、ずっと夜となっている。

 

・偏光レンズでクリアに見える理由は

 自然光はあらゆる方向に振動しているが

 地面や水面に反射した光は販社面と水平方向に振動する。

 縦方向の振動だけを通過させる偏光フィルターを

 通すことで反射によるギラツキを避けることができる。

 

・素粒子は不滅か

 宇宙ができて0.00001秒後までは限られた種類の素粒子が

 ごちゃ混ぜになって存在していた。

 0.00001秒を超えたくらいからクォークが集まり

 陽子と中性子ができていった。

 4分後くらいになると陽子と中性子が結合し原子核ができる。

 当初はほとんどがヘリウムと水素の原子核だった。

 

 素粒子は非常に安定していて、

 崩壊するところを観測できていない。

 今までの宇宙年齢よりは長い寿命を持っていると思われる。

 

・意識はどこから生まれるのか

 「すべてが素粒子でできている」のであれば

 人間の意識も電気信号のやり取りに過ぎないのか。

 脳の仕組みを回路で再現出来れば、

 意識を移植することができるのか。

 意識の本質はまだ理解されていない。

 

・特殊相対性理論と一般相対性理論

 「特殊相対性理論」は等速直線運動の場合

 光の速さを基準として時間と空間、エネルギーが

 相互に互換であることを示した。

 

 「一般相対性理論」は全ての動きに当てはまるよう

 一般化した。中でも重力が「時空間の歪み」に

 よるものであると説明したのが画期的。

 

 時空の歪みは日食時の星の位置のズレにより

 証明されている。

 またGPSなどの機器は、相対性理論をベースとして

 「重力による時空の歪み」を補正することで

 実用化されている。 

 

・量子論とは

 量子論とは素粒子などミクロの世界を説明する理論。

 「素粒子は並みと粒子の両方の性質を持つ」とか

 「素粒子のふるまいは観測するまで決定しない」とか

 マクロの世界とは異なる原理で動いておいて

 日常感覚では理解しにくい。

 

・多元宇宙理論

 量子の世界では、観測をした瞬間に

 それまでは確率に過ぎなかったものが

 確定した現実となる。

 逆に「あり得る観測結果の数だけ

 別の結果を見ている別の観測者がいる」という

 多世界解釈をエヴェレットは提唱した。

 

・宇宙の始まりと量子論

 宇宙の始まりの「ビッグバン」理論が優勢だが

 そもそも「時空はいつできたのか」

 ということは説明できていない。

 量子論の「トンネル効果」を外から観測したように

 無に見えるところに、急に「時空」が生まれたのではないか

 という理論をスティーブン・ホーキングらが提唱している。

 

 

【感想・考察】

 

 「宇宙物理学者」である著者による超入門書。

 概説的だが大きな地図を見るようで全体像が見やすい。

 

 基礎がないと細かい説明を聞いていても分からなくなるので

 全体像が見えるような基礎概説書はありがたい。

 「グルーオン」の細かい説明を読んでいても

 「で、そもそも、それって何だっけ」となってしまうので。。。

 

 

あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

とにかくタイトルが秀逸ですね。

たった一言で、根深い問題の存在やその解決の難しさが

キャッチーに表現されています。

間に挟まれる「会社あるある」の一言コメントも

飲み屋での愚痴のように軽く読ませながら

結構重たいテーマを含んでいます。

 

伝え方の上手い作者さんだな、と

思わされる本でした。

 

 

【タイトル】

あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

 

【作者】

日野 瑛太郎

 

【あらすじ・概要】

日本の働き方のおかしいところ

日本の職場では例外的であるべき残業が恒常化している。

長時間働く人間が高く評価されるため

周囲に合わせたり、上司の帰りを待ったりという

非効率な残業も多い。

 

また、日本の有休消化率は世界的に見ても低く

完全消化しているのは3割程度。

 

定時退社や有給取得などについて

「社会人の常識」という言葉で思考停止して

それが本当に意味のあることか考えられていない。

 

日本のサービスレベルは高いと評されているが

数百円のファーストフードレストランでも

高いサービス水準が要求される。

「お客様が神様」という思想で

受け取る対価以上のサービスを提供していて

そのしわ寄せは企業ではなく働く人が負担している。

 

また、日本の企業は今でも新卒一括採用の傾向が強く

一度レールを外れると再チャレンジが難しい。

そのため、安定的な正社員の地位にこだわり

そこにしがみつくため、不利な条件でも受け入れている。

 

「社畜」について

「会社と自分を切り離して考えることができない会社員」を

著者は「社畜」と定義している。

 

高度成長期の日本では、終身雇用と年功賃金の制度が

機能していたため、企業のため多少無理することがあっても

最終的には見返りを得ることができていた。

近年は企業に終身雇用・年功賃金を支える余力が

無くなってきているにも関わらず、

「多少の無理は仕方ない」という考えだけが残ってしまった。

 

社畜を支える仕事観として以下の6項目を挙げている。

① 「やりがい」のある仕事であれば、それで幸せ

 仕事にやりがいを感じられるのは幸せなことだが

「やりがい」に搾取搾取されることもある。

 

② 辛くても「成長」したい

 自分が目指す成長と会社の要求はあっているか。

 

③ 給料をもらう以上は「プロ」

 責任と報酬は見合っているか。

 

④ 「言い訳は悪」

 自責は重要だが、都合よく使われかねない。

 

⑤「経営者目線」を持つべき

 経営者目線で会社の都合を気にして欲しいが

 本当に経営に口を出して欲しいわけではない。 

 

⑥「どれだけ頑張ったか」が大事

 効率を追求することは悪ではない。

 

 

「社畜」を生むメカニズム

教育、就職活動、入社後の3段階で社畜教育が行われいてる。

 

「将来の夢」は「なりたい職業」だという前提があり

やりがいのある仕事に付けることが幸せだという

「やりがい教育」が行われている。

 

大学も就職予備校と化している部分がある。

新卒一括採用のため就職の機会が限られており

就職活動への取り組みが重視される。

その過程での「自己分析」は

自分の「やりがい」を強制的に認識される。

 

入社後の新人研修では、

徹底的に社員の自尊心を砕き「命令に従う」ことを

学ばせるケースも多い。

 

職場でも、強烈な「同町圧力」が存在し

空気を読んでみんなと同じ行動を取ることを強制される。

 

脱社畜のために

① 「やりがい」にとらわれない

 好きなことが仕事に当てはまれば幸せだが

 そうできるケースはそれほど多くないし、

 自分の好きなことが仕事になりえないこともある。

 「やりがい」のために、労働と報酬が

 いびつな関係になるのは避けるべき。

 

② つらくなったら逃げる

 「逃げずに頑張ることで成長できる」ことを期待するより

 心身を壊してしまうことを避ける方が大事。

 

③ 「従業員目線」を持ち続ける

 従業員が「経営者目線」を持つことを求めるのは

 会社の利害を自分事として感じ、

 個人の利益より会社の利益を優先して欲しいから。

 従業員は従業員としての視点も忘れるべきではない。

 

④ 会社の人間関係を絶対視しない

 職場での人間関係はあくまで職場でのもの。

 1対1の人間としてはどちらが偉いわけでもない。

 

⑤ 会社を「取引先」と考える

 従業員と会社は取引関係にある。

 労働力を提供し対価を受け取っているだけで

 会社が義務を果たさないなら権利を主張すべき。

 

⑥ 自分の労働市場価値を把握する

 会社理不尽な要求に対し強い態度に出るためには

 いつでも会社を移れることが前提となる。

 自分の労働市場価値を高め、客観的に見極める必要がある。

 その会社でしか使えないスキルや、

 あまりにも競合が多いスキルは市場価値が低くなる。

 

⑦ 負債は極力負わない

 住宅ローンなどの大きな負債は、自由度を下げてしまう。

 

⑧ 自分の価値観を大事にする

 「みんなに合わせる」ことを強要されるが、

 「自分にとって一番いいように行動する」ことが一番大事。

 「やりがい」が大事な人もいるだろうし、

 ローンを背負っても「マイホーム」が大事な人もいるだろうが

 「自分にとって」それが大事なのか冷静に考えるべき。

 

【感想・考察】

「社畜」が会社にとって好都合なのは間違いないが

従業員にとっても「社畜でいる方が楽だ」という

側面もあるのだと思う。

 

本書が提唱しているように

「やりがい」に流されずに、自分なりの基準を維持し

周囲に流されず、自分がやりたいことを自分で把握し

絶えず自分の労働市場価値を高め続けていく。

そういう「強さ」のある人間でなければ

「会社と対等な関係を築くより従属するほうが楽」だと

考えてしまうのだろう。

 

経営側の貪欲さだけではなく、従業員側の依存体質も

不均衡の要因なのだと思う。

 

新卒一括採用など制度として機能しなくなったものは

更新していく必要があるし、

心身を壊すような労働の強制を排除する仕組みは必要だが

同時に従業員側の「強さ」も必要なのだろう。

 

経営側を糾弾するような内容だが、

同時に働き手に対しても厳しい提言をしている本だ。

 

 

 

三月の雪は、きみの嘘

「あるところに、ウソばかりついている女の子がいました」

という絵本の引用から始まる、

どうしても「ウソをついてしまう」少女の物語です。

 

少女が、自分を縛る「かつてのウソへの後悔」を

周りを囲む優しい人たちの力を借りて

少しずつ解き前進していく姿が美しい話です。

 

いつか、眠りにつく日」「夢の終わりで、君に会いたい。

 に続く、いぬじゅん さんの「切ない系三部作」最終編で

私的には一番好きな作品でした。

 

【タイトル】

三月の雪は、きみの嘘

 

【作者】

いぬじゅん

 

【あらすじ・概要】

熊切文香は両親の離婚を機に

幼いころに住んでいた浜松の高校に転入した。

 

文香は、相手の顔色をうかがい、自分を守るため

何気ないことでもウソをついてしまう。

「ウソばかりの自分には、本当の友達などできない」

と考え、周囲に壁を作ってしまっていた。

 

ある日文香は同級生の大重拓海に、

冷たく「ウソばっかつくのって疲れない?」

と言われ動揺する。

 

ところが図書室であった拓海は別人のようで

文香に親しげに話しかけ、

「文香がどうしてウソをついてしまうのか」を

解決するためのヒントを渡す。

そこには1冊の本と、文香が幼いころ読んでいた

絵本の一節が書かれたメモがあった。

 

そのメモを見て、かつてその絵本を一緒に読んでいた

「たっくん」のことを思い出し、

拓海が「たっくん」なのではないかと問うが

完全否定されてしまう。

 

拓海から「ヒント」を受け取り、

文香は少しずつ自分の言葉で語ることを取り戻していく。

 

ところが、高校で同じクラスになった 内田則美 は、

文香が小学校時代の友人であったことを打ち明けると

急に接触を避けるようになる。

 

「たっくん」や則美との記憶が欠けていることに

気づいた文香は、かつての思い出を辿り

やがて自分が「たっくん」と別れた日を思い出し

初めてついたウソを思い出した。

 

【感想・考察】

「自分の思うこと」ではなく

「相手が求めていること」を口にする。

 

「相手の気分を害さないため」というのは

自分を守りたいという弱さから発する思いだ。

いつか自分の本当の思いが見えなくなり

相手に踏み込むこともできなくなる。

 

主人公 文香の戸惑いにシンパシーを感じるし、

彼女を受け入れ支えようとする人たちの優しさには

心を打たれる。

 

著者は他の作品にも

「伝えたいことは伝えるべき」で

「苦しい時に偽る必要はない」「世界を恐れる必要はない」

メッセージが込められていて、勇気をもらえる。

 

また良い作者に出会うことができた。

 

 

灰は灰へ:Ashes to Ashes 伊達町サーガ

北海道の伊達町を舞台とした3つの短篇集です。

SF、ホラー、エロ、ミステリ等々をまぜこぜにしたような

夢の中に取り残されたような不安を感じさせる話です。

 

どの話でも兄弟・姉妹のつながりが

描かれているのは共通要素で、

どこかで繋がっているように見えますが

作中ではっきりと分かるわけではありません。

 

捉えどころのなさが味わいなのかもしれません。

 

 

【タイトル】

灰は灰へ:Ashes to Ashes 伊達町サーガ

 

 

【作者】

伊藤なむあひ

 

【あらすじ・概要】

北海道の伊達町を舞台とした3つの短編集。

 

アルミ缶の上に

「わたし」スーちゃんは友人の葬儀に出るため実家に戻ってきた。

名探偵となった姉に「友人を殺した犯人を捕まえて欲しい」という。

わたしは姉と自転車に乗り、

友人のミちゃんがいるリサイクルショップに訪れる。

 

ぼくらの楽園(仮)

「俺」と ゆうご と たっくん の三人は、

粗暴なムシャ先輩が ゆうご の姉を連れているのを見つけ

二人の後をつけ、営業を停止したラブホテルに入っていくのを見た。

電気も止まった暗いラブホテルの中で、

ゆうご は姉を救うため、ムシャ先輩に立ち向かっていく。

俺と たっくん はムシャ先輩から逃げ

ホテルの一室に入ったところ、中には憧れていたミハラ先輩がいた。

 

方舟事件は迷宮入り

女子高生のタカハタユキは、自らを名探偵という同級生の女子

八月さんに憧れていた。

八月さんは、自ら「方舟事件」と名付けた

連続女子高生失踪事件の解決に取り組んでいた。

ユキは「宇宙水」を売っている中年女性が

失踪した女子高生たちを捕らえていたことを知り

八月さんが名探偵として活躍できるよう画策する。

 

【感想・考察】

読んでいて不安な気持ちになる作品。

 

とくに1つめの 「アルミ缶の上に」は

身の置き所が定まらない気持ち悪さがある。

誰を、何を、信じればいいのか分からず、

夢の中の夢に沈んでいくような拠り所がない不安を感じる。

 

さらに、不自然な句読点でリズムを乱したり

極端に長い文を重ねたり、2文字で改ページしたりと

読むペースを乱し息苦しさを煽るなど

内容だけでなく文章自体も不安感を醸し出している。

 

2つめ、3つめの話は、まだストーリーになっているが

それでも夢の中のような頼りのなさを感じる。

 

ここまで心を乱す作品というのは

ある意味すごいと思う。

 

 

「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます

 食品メーカの品質管理や、スーパーなどでの

食品販売を経験した著者が

外食産業の「ごまかし」を暴くする本です。

 

「このハンバーグにはリン酸塩が多様されている!」とか、

「このソースにはグルタミン酸ソーダが0.3%入ってる!」など

私自身は正直分からないし気にならないのですが

外食産業でどういうことが行われているかを

知っておくことは役に立つかもしれませんね。

 

 

【タイトル】

「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます

 

【作者】

河岸宏和

 

【あらすじ・概要】

 食品工場やスーパーなどでの勤務経験を活かし

「外食の裏事情」を暴く本。

 

外食産業が優先しているのは「安さ」と「安全」

日本の外食産業では「安さ」と「安全」が優先され

味や栄養などは二の次になっている。

 

食中毒などの事故を起こさないよう衛生管理をしながら

材料や人件費などのコストを下げる工夫を重ねている。

 

「作りたて」を提供すれば間違いなく美味しいが

衛生面や人件費などのコスト面から

保存のきく冷凍品や手間のかからない仕入れ品が

使われており、味や栄養は重視されていない。

 

個人店の二極化がチェーン店の広がりを進めた

個人店には「丁寧に手作りした美味しい店」もあるが

レベルの低い店も多い。

売上が落ちると新鮮な食材を使うこともできず

悪循環にはまるり、一見客狙いのハズレ店になってしまう。

 

個人店の二極化により、安定的に「そこそこ美味しい」

チェーン店が選ばれるようになった。

 

安い理由-ニセモノに置き換える

コスト削減のため、食材を加工・置き換えしている。

 

くず肉や内臓肉を固めて一枚肉の様にした「成形肉」や

赤身の肉に脂肪を注入した「人口霜降り肉」、

マグロ赤身に植物油を添加した「ニセネギトロ」なども

広く使われている。

 

またミートボールなどは 植物性タンパク質で増量され

味をごまかすために肉エキスなどが加えられている。

 

安い理由-職人を不要とする「仕入れ品」

食材のロスを減らし、人件費も減らすため

工場で加工された「仕入れ品」も広く使われている。

 

カット野菜や刺身、焼鳥、魚フライなど。

冷凍やチルドの状態で配送され、店舗では

温めて皿に並べるだけですむ。

 

いくつか代表的な仕入れ品の見分け方を紹介

・焼鳥にねぎまがあれば仕入れ品ではない

・刺身は角が立っているものは仕入れ品ではない

・コロッケなどで甘いのは保存のためで仕入れ品

・ラーメンは店に寸胴鍋があるかどうかで見極める

 

 

スーパーで国産野菜が多い訳

日本の食料自給率は低いが

スーパーでは国産野菜を多く見かける。

これは産地表示義務のあるスーパーが

国産品を優先して入手し、

輸入野菜は表示義務のない外食に流れるから。

 

外食は食品添加物の表示義務なし

外食では食品添加物の表示義務もないため

何が使われているかは分からない。

 

 

良い店の探し方

・店の外観、内装が整っていて衛生的か

・働く人の身なりは清潔か

・働く人は客に注意しているか

・地元の人が自腹で行くのは良い店

・飲み放題に美味しい店はない

・クーポンを出す店に美味しい店はない

・刺身が美味しい店は全部美味しい

 

【感想・考察】

コスト削減をすすめて「安く」「安全」な

食べ物を提供する店も必要だと思う。

成形肉や仕入れ品も、それ自体が悪いわけではない。

 

一方で、真面目に美味しさを追求する店が

コスト重視のチェーン店に駆逐されてしまうのは

避けたいとも思う。

 

本書にもある通り、個人店には当たり外れが大きくて

なかなか挑戦できない。

ネットで「良い店」を 探そうとしても

最近では 大手グルメサイトの影響が強すぎて

正味のところが見えなくなってきている。

 

たまにハズレがあっても、

新しい店の開拓自体を楽しめるくらいの余裕がないと

美味しい店に辿り着くことはできないのだろう。

 

拘りをもたずチェーン店も利用し

美味しい個人店もたくさん知っている。

そんな豊かな人間になりたいものだ。

 

 

夢の終わりで、君に会いたい。

いつか、眠りにつく日」に続く いぬじゅん さんの作品です。

 

前作に続き、人の死が絡む切ないストーリーですが

「生きていることの素晴らしさ」や

「言いたいことは言わなきゃダメ」という思いが

込められているように感じます。

 

「誰かの期待に沿うこと」が標準になっている自分には

深く共感でき、勇気づけられる話でした。

 

 

【タイトル】

夢の終わりで、君に会いたい。

 

【作者】

いぬじゅん

 

【あらすじ・概要】

高校一年生の森井鳴海は、いつも相手の顔色を見て、

苦しいことも飲み込んできた。

鳴海は夢の中の時間が何より好きで

そこで少し前に死んでしまった猫の「親方」に

会えることを楽しみにしていた。

 

家でも学校でも、イヤなことばかりだった誕生日に、

鳴海は公園のジャングルジムから夕焼けを眺めていたが

風にあおられて頭から落下し、

友人からもらったプレゼントを壊してしまった。

 

その日以降、鳴海の見る夢は「正夢」となる。

転校生「武藤雅紀」との出会いや

両親が離婚を決意してしまうこと、

姉の交際相手が既婚であることなど

夢で見た内容が次々と現実となっていった。

 

雅紀は死別した母親を忘れ再婚しようとする父に怒って

祖父母の元で暮らし、誰もが敵だと感じ、心を閉ざしていた。

 

鳴海は、正夢でみた情報を使って、

雅紀と父親のいさかいを防ごうとする。

上手くいかないながらも、鳴海と雅紀は徐々に惹かれあっていく。

 

正夢を見るようになってから、

鳴海の体力は急激に落ちていった。

夢の時間が徐々に「闇」に覆われ始め

いつか「夢に喰われてしまう」と感じる。

 

そして鳴海は自らの死の光景を「正夢」として見てしまう。

 

 

【感想・考察】

いつも相手の顔色を窺い、心を押し殺している少女が

夢の世界を通じて、少しずつ自分の思いを取り戻していく。

 

 

感情を表に出すことを恐れ、

自分の中にしまい続けていると

怒りも、悔しさも、嬉しささえも

感じ取れなくなってしまうようだ。

 

感情を表に出すことが難しいにしても

少なくても自分の中では「自分が感じていること」を

言葉にして受け止めることが必要なのだろう。

 

苦しくて逃げることがあってもいいし、

その時は「苦しくて逃げた」ことをきちんと認識し

受け止めればいいのだと思う。

「苦しい」と感じることから逃げて

「逃げた」自分を認めることからも逃げ続けると

自分を好きになることができないのだろう。

 

バイト先のママである「よしこちゃん」の

「気持ちってね、抑え込みすぎると

おかしくなっちゃうものよ。

言葉にできないなら無理しなくていい。

だけど、思ったことを攻めて自分には

聞かせてあげなさいな」

という言葉が心に響く。

 

勇気をもらえる話だった。

 

 

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