毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

とにかくタイトルが秀逸ですね。

たった一言で、根深い問題の存在やその解決の難しさが

キャッチーに表現されています。

間に挟まれる「会社あるある」の一言コメントも

飲み屋での愚痴のように軽く読ませながら

結構重たいテーマを含んでいます。

 

伝え方の上手い作者さんだな、と

思わされる本でした。

 

 

【タイトル】

あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

 

【作者】

日野 瑛太郎

 

【あらすじ・概要】

日本の働き方のおかしいところ

日本の職場では例外的であるべき残業が恒常化している。

長時間働く人間が高く評価されるため

周囲に合わせたり、上司の帰りを待ったりという

非効率な残業も多い。

 

また、日本の有休消化率は世界的に見ても低く

完全消化しているのは3割程度。

 

定時退社や有給取得などについて

「社会人の常識」という言葉で思考停止して

それが本当に意味のあることか考えられていない。

 

日本のサービスレベルは高いと評されているが

数百円のファーストフードレストランでも

高いサービス水準が要求される。

「お客様が神様」という思想で

受け取る対価以上のサービスを提供していて

そのしわ寄せは企業ではなく働く人が負担している。

 

また、日本の企業は今でも新卒一括採用の傾向が強く

一度レールを外れると再チャレンジが難しい。

そのため、安定的な正社員の地位にこだわり

そこにしがみつくため、不利な条件でも受け入れている。

 

「社畜」について

「会社と自分を切り離して考えることができない会社員」を

著者は「社畜」と定義している。

 

高度成長期の日本では、終身雇用と年功賃金の制度が

機能していたため、企業のため多少無理することがあっても

最終的には見返りを得ることができていた。

近年は企業に終身雇用・年功賃金を支える余力が

無くなってきているにも関わらず、

「多少の無理は仕方ない」という考えだけが残ってしまった。

 

社畜を支える仕事観として以下の6項目を挙げている。

① 「やりがい」のある仕事であれば、それで幸せ

 仕事にやりがいを感じられるのは幸せなことだが

「やりがい」に搾取搾取されることもある。

 

② 辛くても「成長」したい

 自分が目指す成長と会社の要求はあっているか。

 

③ 給料をもらう以上は「プロ」

 責任と報酬は見合っているか。

 

④ 「言い訳は悪」

 自責は重要だが、都合よく使われかねない。

 

⑤「経営者目線」を持つべき

 経営者目線で会社の都合を気にして欲しいが

 本当に経営に口を出して欲しいわけではない。 

 

⑥「どれだけ頑張ったか」が大事

 効率を追求することは悪ではない。

 

 

「社畜」を生むメカニズム

教育、就職活動、入社後の3段階で社畜教育が行われいてる。

 

「将来の夢」は「なりたい職業」だという前提があり

やりがいのある仕事に付けることが幸せだという

「やりがい教育」が行われている。

 

大学も就職予備校と化している部分がある。

新卒一括採用のため就職の機会が限られており

就職活動への取り組みが重視される。

その過程での「自己分析」は

自分の「やりがい」を強制的に認識される。

 

入社後の新人研修では、

徹底的に社員の自尊心を砕き「命令に従う」ことを

学ばせるケースも多い。

 

職場でも、強烈な「同町圧力」が存在し

空気を読んでみんなと同じ行動を取ることを強制される。

 

脱社畜のために

① 「やりがい」にとらわれない

 好きなことが仕事に当てはまれば幸せだが

 そうできるケースはそれほど多くないし、

 自分の好きなことが仕事になりえないこともある。

 「やりがい」のために、労働と報酬が

 いびつな関係になるのは避けるべき。

 

② つらくなったら逃げる

 「逃げずに頑張ることで成長できる」ことを期待するより

 心身を壊してしまうことを避ける方が大事。

 

③ 「従業員目線」を持ち続ける

 従業員が「経営者目線」を持つことを求めるのは

 会社の利害を自分事として感じ、

 個人の利益より会社の利益を優先して欲しいから。

 従業員は従業員としての視点も忘れるべきではない。

 

④ 会社の人間関係を絶対視しない

 職場での人間関係はあくまで職場でのもの。

 1対1の人間としてはどちらが偉いわけでもない。

 

⑤ 会社を「取引先」と考える

 従業員と会社は取引関係にある。

 労働力を提供し対価を受け取っているだけで

 会社が義務を果たさないなら権利を主張すべき。

 

⑥ 自分の労働市場価値を把握する

 会社理不尽な要求に対し強い態度に出るためには

 いつでも会社を移れることが前提となる。

 自分の労働市場価値を高め、客観的に見極める必要がある。

 その会社でしか使えないスキルや、

 あまりにも競合が多いスキルは市場価値が低くなる。

 

⑦ 負債は極力負わない

 住宅ローンなどの大きな負債は、自由度を下げてしまう。

 

⑧ 自分の価値観を大事にする

 「みんなに合わせる」ことを強要されるが、

 「自分にとって一番いいように行動する」ことが一番大事。

 「やりがい」が大事な人もいるだろうし、

 ローンを背負っても「マイホーム」が大事な人もいるだろうが

 「自分にとって」それが大事なのか冷静に考えるべき。

 

【感想・考察】

「社畜」が会社にとって好都合なのは間違いないが

従業員にとっても「社畜でいる方が楽だ」という

側面もあるのだと思う。

 

本書が提唱しているように

「やりがい」に流されずに、自分なりの基準を維持し

周囲に流されず、自分がやりたいことを自分で把握し

絶えず自分の労働市場価値を高め続けていく。

そういう「強さ」のある人間でなければ

「会社と対等な関係を築くより従属するほうが楽」だと

考えてしまうのだろう。

 

経営側の貪欲さだけではなく、従業員側の依存体質も

不均衡の要因なのだと思う。

 

新卒一括採用など制度として機能しなくなったものは

更新していく必要があるし、

心身を壊すような労働の強制を排除する仕組みは必要だが

同時に従業員側の「強さ」も必要なのだろう。

 

経営側を糾弾するような内容だが、

同時に働き手に対しても厳しい提言をしている本だ。

 

 

 

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