東京来訪
六本木に憧れ日本にやってきたアメリカ人男性のクズっぷりと、彼を受け入れる女性の病みっぷりが、清々しいほど凄まじいです。
【作者】
高山環
【あらすじ・概要】
テキサスに住むウィルソンは「努力」を憎み、惰性で生活を続けていた。好きな食べ物はタコベルで、チェーン店以外の食事は受け付けない。
ウィルソンはテレビで見た東京の景色に興味を惹かれ、親から金をもらい仕事も辞め、単身日本に向かう。
六本木に辿り着くことができず困惑していたウィルソンの元に「ユウコ」が現れ、彼を六本木まで案内する。彼は六本木ヒルズの圧倒的な存在感の前に吐き気を催し、逃げ出すように離れていった。
ユウコはウィルソンを家に連れていき、そこから暫しの同棲生活が始まる。ウィルソンは全面的に世話になりながら、身勝手な態度でユウコを傷つけるが、ユウコは彼から離れようとしない。
ある日、ユウコの不在中に彼女の預金通帳を見つけたウィルソンは、現金を抜き出すことを計画する。
【感想・考察】
ウィルソンのクズっぷりの描写が生々しい。叱責されてもその場だけやり過ごすように、面倒なことを回避していく姿勢。先のことを考えず、刹那的に生きる。自分自身の中にもそういう傾向が出る時もあり、少し怖くもなる。
「先の目標に向かって力強く生きていく人生」だけでなく「今、その時を全力で生きる人生」もあると思う。ただ「全ての一瞬を大事にすること」と、「面倒だから思考停止する刹那的な生き方」は大きく違う。
極めて「気持ちの悪い」ウィルソンの生き方が反面教師となる。
一方で、ユウコの屈折した感覚は、十分に説明され切れず、唐突な感じを受ける。ただ、それ故にブッ飛んだ感じで、印象深い作品になっている。
【オススメ度】
★★★☆☆