『閻魔堂沙羅の推理奇譚 金曜日の神隠し』 木元哉多
『閻魔堂沙羅の推理奇譚』シリーズの第6弾。今回は長編です。
「母からネグレクトされた挙句、母の犯した殺人のせいで後ろ指をさされてきた律子が、苦心を重ね成功をつかみ取った。だが律子の前に母が現れ、彼女が築き上げてきたものを壊していく」というお話です。
律子の生き様が、なかなか凄まじいです。
母親に振り回され「愛されないのは自分が不完全だから」だと思ってしまったのか、あまりにも自堕落な母を見て「ああなってはいけない」と感じたのか、律子はとにかく「完璧でなければならない」と考えるようになっていきます。
その反動として「弱さを見せないための壁」が高く分厚くなり、周囲との関係がずれていくというお話。
現状を全肯定するだけでは堕落してしまうのでしょう。一方、不完全さを許せないのは弱さです。相反するものですがバランスをとるのは難しい。弁証法的により高次で統合する必要があるのかもしれません。
「不完全さは必ずあると認識して確率論的に許容しつつ、その改善への意思も包括した全肯定」でしょうか。
難しいですね。