毎日一冊! Kennie の読書日記

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『閻魔堂沙羅の推理奇譚 金曜日の神隠し』 木元哉多

「閻魔堂沙羅の推理奇譚」シリーズ7作目は長編です。

 

パズル的な推理ゲームがメインの本シリーズには

短編の方が合うと思っていましたが、

長編になって登場人物たちの内面的葛藤が

より濃密に描かれていて、中々読み応えがありました。

 

タイトル

閻魔堂沙羅の推理奇譚 金曜日の神隠し

 

作者

木元哉多

 

あらすじ・概要

41歳の新山律子は母子家庭で育ち、

母親の町子からネグレクトを受けていた。

律子の中学時代に町子が殺人を犯し

その事実から逃げるよう名字を変え

伯父と一緒に暮らしていた。

 

律子はひたむきな努力の結果、優秀なデザイナーとなり

店舗プロデュース会社の経営に携わるようになったが、

夫とは離婚し、中学生の娘 美久とも関係が悪化していた 。

 

そんな折に「町子に金を貸し逃げられた」という

街金業者から連絡が入り、殺人犯の娘だということを

周囲に知らされたくなければ借金を肩代わりするよう、

脅迫を受ける。

 

同じころ、ずっと絶縁していた町子が律子の家も訪れ、

一旦は追い払ったがしつこく付きまとってくる。

 

街金業者が連絡したことで

元夫や会社の共同経営者も、律子の母親が

殺人犯であったことが知られてしまう。

 

律子が汚名から逃れ必死で築きあげてきたものが、

再び母親によって崩されようとしている。

 

 

その後、紆余曲折の末、何者かに殺されてしまった律子は

死後裁きを受ける閻魔堂で、美久の身を心配していた。

 

律子は母親としての資質がなかったことを嘆くが

沙羅は「真剣に考えていなかっただけ」だと言う。

律子は生き返りをかけた推理ゲームに挑み

「見えている事実から真実を推理する」ことに挑戦する。

 

感想・考察

律子の生き様が凄まじい。

幼少期から親の愛情を受けることなく

多感な中学時代には母親が殺人犯となってしまう。

 

傷つき周囲から責められた分、

「完璧でないといけない」という思いが強くなる。

夫や娘にも完璧を求めて敬遠され、

決して弱みを見せない姿勢が、

会社の共同経営者との間にも壁を作っていた。

 

「殺人犯の娘」という設定は重すぎるが

そこまではいかないにしても、

自分の「弱み」を隠したいという気持ちは誰にでもあるだろう。

 

だが、自分の「弱み」をオープンにできること自体は

「弱さ」でなく、とても強い姿勢だと言える。

 

人は「弱み」無く完璧であることはできない。

自分の「弱み」は防御したいと思うが、

相手が分厚い防御を敷くことは不快に思う。

 

弱さをひた隠し防御しようとする律子の苦悩と

律子が守りを解いた時の美久の対応は感動的だ。

 

子供は親に完璧出ることを求めるのではなく

自分とどのように関わろうとするのか、

失敗する姿を含めて見ているということなのだろう。

 

短編向きの舞台設定だと思ったが

長編でもダレない密度の濃さだった。

 

 

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