毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

集中力はいらない

 

「集中すること」が高く評価されているけれど

「広く分散し飛躍するラテラルな思考」の方にこそ

機械にはできない人間の価値があるとしています。

集中力にかける自分には励みになる本でした。

 

【タイトル】

集中力はいらない

 

【作者】

森博嗣

 

【あらすじ・概要】

 

集中しない力

集中というのは機械の様な働きであり

人力による大量生産や戦争など「反応」が必要な場合に

役に立つが、現代ではその重要性は下がっている。

本当は「新たな発想」にこそ価値があり、

それは、集中からは生まれない。

 

著者の経験では、一定期間ある問題を考え続けた後

そこから離れ意識を集中させていない時に

新たな発想が生まれることが多いという。

 

情報に反応し踊らされないためにも

集中し過ぎず冷静さを保つことが必要。

 

 

集中しないと何故良いか

生物はもともと集中するようにできているが

人間は集団の形成で余力が生まれ

「分散」により集団としての能力を高めてきた。

 

「分散」により複数の工程を並列処理することで

それぞれはじっくり慎重に行いながら

全体では待ち時間なく進めることができる。

 

分散型の仕事で複数のことに取り組んでいれば

ハズレがあっても吸収できるし

時間的にも分散させておけば

不測の事態に対応することができる。

 

考える力は「分散」と「発散」から

「欲しいものは何か?」と聞かれ

「面白いもの」と答えるのは抽象的、

実際に選ぶ段階では「この汽車のおもちゃ」

というように具体的する必要がある。

しかし本当に欲しいものは「面白いもの」で

汽車のおもちゃが面白いかどうかは分からない。

抽象度の高い方が求めるもの正体に近い。

 

抽象的なものは行動を起こすには扱いにくいが

具体的なものは必ずしも正解ではない。

 

抽象的な表現は広い範囲の可能性を包含するので

抽象的なものを抽象的なまま考えるためには

精神の分散が必要になる。

 

例えば工場の工員に「工夫していることはあるか?」と聞いて

「このネジを先に締めるようにしている」というのは具体的だが

「個々の工夫の設計段階への還元に努めている」というのは抽象的だ。

その視点に立つためには、全体を分散的に見なければならない。

 

学ぶこと、選択して反応することが「考えること」だと

思い込んでいる人が多いが、

「考える」というのはインプットしたものを用いて

理屈を組み立て仮説を立てることだ。

 

分散思考による発想の飛躍が「個性」になる。

 

思考にはリラックスが必要

分散思考をするためにはリラックスしている方がいい。

集中して緩めるように緩急をつけることも効果がある。

「固有名詞」は便利だが、名前を覚えることで

その周辺情報が欠落してしまうことがある。

情報として扱いやすくなるが、発想の幅を広げるためには

名前にこだわらないことが有利になる場合もある。

 

思考がすなわち人間である

「集中」は思考を排除するもので

「人間」を排除するものだともいえる。

自分の願望と思考を切り分け、分散的な視点から

客観的な思考ができれば「信頼できる」人評価される。

思考こそが人格であるともいえる。

 

【感想・考察】

たくさんの情報を集め帰納的に判断をすることであれば

人間はコンピュータによる機械学習にかなわないだろう。

「判断すること」でも多くの分野で機械が人間を上回り始めている。

 

従来人間の方が得意だった「パターン認識」でも機械学習が力をつけ

自動運転なども実用化に近づいている。

 

一方、初見で極度にデフォルメした猫のイラストを猫と判断することは

人間の方が高精度でできるだろう。「マンガ的なデフォルメの作法」と

「猫のイラスト」を結び付け、パターンの飛躍を埋めることができる。

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例えばこれは 人間が見れば明らかに「猫のイラスト」だが

機械に判断させるのは難しいのではないだろうか。

 

多数のサンプルから共通点を探し条件づけるのは

「集中」する作業でコンピュータが得意な部分だろう。

一方で多数のサンプルから幅を広げ「飛躍」させていく能力は

コンピュータにはまだ当面難しそうだ。

 

そう考えると、ラテラルな飛躍にこそ人間の価値があるという

著者の主張はその通りだと思う。

 

森博嗣氏が1996年に出した著書『すべてがFになる』のなかにも

真賀田四季が西之園萌絵に、

「思考が飛躍する特徴があるわね。それが、貴女の一番の才能。」

と語る場面があり、

当時から一貫して「思考の飛躍」に価値を置いていことが分かる。

インターネット黎明期で、まだ機械学習という言葉もなかった

時代であることを考えると大変な先見の明だ。

科学者の発想法として既に確たる考えがあったのだろう。

 

 

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