幸せサプリ
妻を失った男が幼い娘を守りながら生きていく、という感じで始まる話です。
プロットの仕掛けも面白いのですが、妻と娘を守ろうと戦うひたむきな男のストーリーとして、切ない余韻を残します。
最近はこの作者の作品が好きです。
【作者】
高山環
【あらすじ・概要】
「僕」はある日突然に妻の千尋を亡くし、4歳の娘 藍と二人で生きていく。
「日本人を幸せにするサプリ」を売る社長を慕い、ブラック環境でも成果を上げてきた僕だが、その欺瞞に気付き告発しようとする。結局は居場所を失い退社する。
千尋が亡くなり保育園に馴染めなくなった藍を連れ、仕事を探す「僕」は探偵社からの誘いを受ける。藍を連れて、迷い猫探しや、庭の穴掘り、落し物探しなどをする中で、後頭部の傷が疼きだす。
ある日、僕は死んだはずの千尋が喫茶店に入っていくのを見るが、藍には千尋を見ることができないようだ。誰かが自分達を追いかけていると感じた僕は、過去から逃げずに対決することを選ぶ。
【感想・考察】
家族を深く愛する主人公の、真摯な態度と弱さ。
彼の真剣さに気付き、弱さを救おうとした千尋の、表層に囚われない自立した精神。
二人のラブストーリーとして読むと、悲しくも美しい。
幼い娘とぬいぐるみ達の国を共有する男の、父と娘の童話としても読める。
探偵達のしかけた謎を解くミステリとして読んでも、きっちり驚かせてくれる。
叙述トリック的な部分は途中で分かってくるし、最後はちょっと後味が悪いけれど、やっぱりとても面白い。
【オススメ度】
★★★★☆