地図にない谷
Amazon Prime Reading で公開されていたので読んでみました。
1970年代に書かれた話で、集落の閉鎖的で陰鬱とした雰囲気が伝わってきます。
歴史の表舞台には現れてこない「裏の歴史」の実在を感じさせる作品です。
【作者】
藤本泉
【あらすじ・概要】
大学の休みに帰省した帯金 多江は、故郷の鬼兵衛谷で多くの命を奪っている風土病である「いきなり病」について調査しようとする。
母親の静野はこの調査を妨害するが、婚約者であるモンと一緒に調査を進める。
聞き取り調査を進めるうち、鬼兵衛谷は太閤検地から逃れた人々が住み着き、
江戸時代の一揆の主導者が逃げ込んだ場所であることが分かる。
帯金家に伝わる古文書と静野の日記を持ち出し解読する内に、
鬼兵衛谷の人々と帯金家との確執や、多江の出生の秘密までが判明する。
【感想・考察】
表の歴史で語られることが全てではないこと、国家の管理から逃れた「自由の民」が実在することを語る。
先日読んだ「山彦」でも「サンカ」と呼ばれる管理外の部族の実在を知った。
どちらも Amazon Prime Reading で読んだ本で、陰謀論者ではないが何かの意図を疑ってしまう。。
一般に語られる「正史」としての歴史は、支配者側に都合よく切り取られたもので、
実際の歴史はもっと多面的で多層的なものだ、というのは間違いないことだろう。
国家というフィクションが必要とされる段階では、デフォルメされた「正史」が求めらることも理解できる。
一方で歴史の陰に隠れようとしている人々を救い上げることも必要なのだと思う。
【お勧め度 ★5が満点】
★★