毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

歴史バトラーつばさ 私立ヒミコ女学園「和風文化研究会」

「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」で

蝉の声が静かなのではなく、

人々が静かになっていたということ??

 

いい加減な設定と軽いノリの学園コメディーですが

割ときっちりと考察された歴史の謎が出てきます。

 

作者の鯨統一郎さんは

邪馬台国はどこですか?」とかでも

歴史の謎への独自解釈を提示していて

つよい歴史愛を感じます。

 

 

【タイトル】

歴史バトラーつばさ 私立ヒミコ女学園「和風文化研究会」

 

【作者】

鯨藤一郎

 

【あらすじ・概要】

ヒミコ女学園の 和風文化研究会 とSOJ(Study of Japan) は

日本文化を扱う部活として競い合っていた。

 

和風研は廃部を逃れるのに必要な最低人数を

集めるため新入生勧誘を行っていたが

SOJは「文化討論会」を仕掛け妨害してくる。

 

「北浦つばさ」の和風研入部も妨害されたが

彼女はその特殊能力でSOJと闘った。

 

千利休ゲーム

北浦つばさの和風研入部をかけた文化討論会が行われる。

 

「千利休が切腹させられたのは何故か?」

 

利休による秀吉の暗殺失敗説や、

お吟を巡る女性問題説も出たが、

SOJは定説の「山門に自分の像を掲げたこと」

を理由に挙げ

「秀吉は利休への敬意ゆえに

名誉ある切腹を命じた」と解釈した。

 

それに対してつばさは

「山門の落成から2年もたっていたことから

山門の像と切腹は直接は関係ない」と考え

「利休との主導権争いに負けそうになった秀吉が

強制終了のため切腹を命じた」と解釈した。

 

秀吉の不興をかった僧侶の送別茶会を

敢えて秀吉の膝元である聚楽第で行ったことや

薩摩の島津氏も秀吉との仲介を依頼するなど

政治的発言力もあったことを傍証としている。

 

政治でも 茶の湯においても

「マウントとりたい」秀吉をいなしながら

精神的に上に立つやり方に「負け」を

感じていたのだろうと読み解いている。

 

 

松尾芭蕉ゲーム

圧倒的知識量を誇る 皇海山キララの入部をかけた文化討論会。

 

お題は「松尾芭蕉は忍者?」

 

忍者の里である伊賀の出身で、

将軍の膝元江戸にしばらく住んだあと、

日本中を旅していた松尾芭蕉は

諜報の任務を負った忍者であったという説がある。

 

SOJは「松尾芭蕉は伊達藩を警戒した徳川幕府が

同行を探るために差し向けたスパイだった」とみる。

 

これに対しつばさは

「伊達藩が諜報の目的だとすると

帰路日本海側を大回りするのは不自然」だとし、

「時期的に徳川幕府が安定していた元禄時代で

伊達藩への警戒が強かったとは思えない」という。

 

そして「地方での動物の扱いを調査する忍者だった」

という説を提示する。

ちょうど「生類憐みの令」が発令され、

生き物が重視されていた時期だったこと。

芭蕉には動物をモチーフにした俳句が多かったことを

傍証として挙げている。

 

 

出雲阿国ゲーム

人の動きを完全に真似る踊り子 生井沢桃香 を巡る争い。

 

「歌舞伎の始祖は女性だったのに、

現代の歌舞伎では男性だけが演じるのは何故か」

 

SOJは「歌舞伎の始祖と言われている女性

出雲阿国 による 阿国歌舞伎と、

現代の歌舞伎は全くの別物」だと解釈した。

 

女性である阿国による歌舞伎は、女郎による

女郎歌舞伎に引き継がれたが、

公序良俗観点から禁止された。

その後は女装の少年が演じる若衆歌舞伎へ

移っていった。

その頃、男性が演じる野郎歌舞伎も発生したが

「踊り主体」の阿国歌舞伎の流れと違い

「芝居主体」で大きく異なるものだったという主張。

 

それに対してつばさは

「そもそも出雲阿国は男性だった」と反論する。

 

 

【感想・考察】

「紫式部と清少納言の子孫同士の争い」

という設定が何の意味もなかったり、

「学校の経営権を巡る株を買い占めゲーム」

が本筋に何の影響もなかったり、

話の展開と無関係に脱ぎだしたり、

まあ全体ストーリーは無茶苦茶。。

 

一方、歴史ミステリの考察部分は

作者の個人的見解の範囲ではあるが

きちんと調べられているし、

独自見解の意外さ、面白さがある。

 

歴史ミステリというのも

面白いジャンルかもしれない。

 

 

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