毎日一冊! Kennie の読書日記

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少女終末旅行

 久しぶりにマンガを読みました。
文明滅亡後の世界を旅する話ですが、少女2人の会話が素晴らしく
暗くならず、暖かい物語になっています。


【作者】

 つくみず 

 

【あらすじ・概要】
「ユーリ」と「チト」の2人の少女が、ケッテンクラートという半走軌車に乗り、
荒廃した世界を旅し、西の果ての高い塔を目指す。

荒廃した大地に生き残った人間は少なく、旅の途中で出会ったのは2人だけ。
地図を作り続けるカナザワと、残った図面を元に飛行機を作ろうとするイシイ。

また人間の文明の名残りを処理する生命体「ヌコ」たちに出会う。
古代人が残した図書館や古い絵画に触れ、雨音から音楽を感じながら
旅を続けていく。

長い旅路の果て、ケッテンクラートは補修不可能なまで壊れ
食料も調達できない状況に陥る。
引き返すことができない状況で、最後に西の塔の上にたどり着き
最後の食料を分け合う二人。

 

【感想・考察】
二人の旅は何を目指したもので、最後はどうなったのだろうか。


・普通に読むと「二人は旅の最後に力尽き、人間の文明は潰えた」のだと思える。

二人以外の人間がいなくなった絶望的な世界で旅を続け
自分たちにも、過去文明を積み上げてきた古代人たちも
「いつか全て終わると知っていても、何かをせずにいられない」という
根源的な気持ちに突き動かされていると感じる。
生きることに意味はないのかもしれないが、終わりまで行動を続け
「生きるのは最高だったよね」と言って人生の終わりを迎える。

おそらくこの読み方が一番素直で、作者のメッセージも
ここにあるような気がする。

 

・少しうがった見方をすると
「二人は人類の移住先に旅立った」のだとも読めるようだ。

おじいさんが「西の塔を上を目指せ」と命じたのは、
そこに希望があることを知っていたからではないか。

人類が滅亡した戦争からどれくらいの時間がたっているのか不明だが
武器の残骸があるのにも関わらず「死体」が見当たらない。
大部分の人類は地球外に出たということではないだろうか。
(唯一、最後の場面で海のほとりに人骨らしきものが見えるが)

さらに細かく読むと、ロケット基地に残されたメモに
「方舟計画中止に伴う○○計画 3/28予定」とか
「火星基地通信途絶、○○予想、○○中止」等と書かれている。

これは、人類を移住させる「方舟計画」は失敗したが
その代替案が練られていたこと、
少なくとも火星までは人類はたどり着いていたこと、
を示しているのだろう。

ロケットの側面に「外太陽系○○」と書かれており
略称が「OSSP」とあるので、
「外太陽系惑星 Outer Solar System Planet」の探査機だった
可能性もある。

「古代人」の文明レベルは現代の我々を少し超えるレベルだと思われるが
古代人が神と崇めたヌコ達は、人類をはるかに上回る文明を持っており
彼らとの接触で、宇宙への渡航技術が飛躍的に向上した可能性もありそうだ。

塔の最上部にあった「黒い石」が、何らかの起動装置だった可能性もある。


ただ、これらはすべて可能性の話で、明示的な描写はない。ちょっと飛躍している感じがするし、やはり「二人の旅は終わった」とする解釈の方がすっきりする。

 

マンガというのは小説以上に、伏線を隠しやすいし、
その分多様な解釈を許す面白さがあると感じた。

 

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