神酒クリニックで乾杯を 淡雪の記憶
【作者】
知念 実希人
【あらすじ・概要】
神酒クリニックシリーズの第2弾。記憶を失った女性、美鈴が神酒クリニックで治療を受けることになった。彼女はビル爆破に使われた爆弾の時限装置について何かを知っているようだった。精神科医である翼が徐々に記憶を解き明かして行くが、「思い出したくない記憶」が記憶の回復を妨げる。爆破犯を追い詰めながらその目的に気づき、美鈴の思いも蘇る。
前作から引き続いて、それぞれに特殊技能を持つ神酒クリニックのスタッフたちが、存分に活躍するが、特に翼と美鈴の交わりが切ない。
【感想・考察】
この作者の人物造形が好きで、心地よく読める。ミステリーとしては大体の筋書きは途中で見えてくるが、それぞれの登場人物の心理描写が深く引き込まれる。また、今回気づいたのが、格闘シーンの描写の上手さ。文字だけでボクシング対総合格闘技の大戦場面が鮮やかに眼に浮かぶのは素晴らしい。数作を経て描写力が高まっているのだと思う。楽しく読める本だった。