毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話

【作者】

 きんどう

 

【あらすじ・概要】

 Kindle の電子書籍アフィリエイトで生計を立てる きんどう氏の著作。

きんどう(きんどるどうでしょう)というサイトで Kindle本のセール情報や新刊情報などを紹介しアフィリエイトの収入だけで億を狙うという。

 内容はアフィリエイトを行いたい人向けではなく、電子書籍を売り込みたい出版社にきどうをアピールする意味合いが強い。「月刊数万冊出版される電子書籍だが、書店のように平台積みなどでアピールする方法もなく、ストアサイトのランキングやセールなど限られた売込みチャネルしかないため、アクセス数が多く程よくまとめられた紹介サイトは利用価値がありますよ」というのが主旨。

 

【感想・考察】

 「生活のために仕事をするのではなく、仕事のために生活している」状態だというが、アフィリエイトだけで生活しているのはすごいと思う。

 本屋で面白そうな本を探すときの楽しさ、ワクワクする感じが電子書籍では得られない。ストアサイトで検索したりランキングを見たりするだけでは、未知の分野や作者と触れ合う機会はどうしても小さくなってしまう。リアルな本屋で本を探す楽しみは便利さには代え難い価値がある。

 一方で紙の本は場所を取るとか、海外では買いにくいとか、メディアとしては電子書籍に負けている。電子書籍の便利さと、リアル書店の楽しさを組み合わせたようなサービスができないものかと思う。

 

鉄道員(ぽっぽや)

【作者】

 浅田次郎

 

【あらすじ・概要】

 浅田次郎の短編集。「奇跡」が起きる8つの短編。

 

鉄道員(ぽっぽや)

 映画化もされた表題作。北海道の寂れた鉄道駅の駅員乙松。彼は不器用で仕事に一途で、娘を亡くした日も、妻を亡くした日も変わらず駅に立ち続けていた。

 乙松が定年退職を間近に控えた正月開けに、駅で少女が人形を忘れて行く。その日の夜には少女の姉が、翌日にはさらにその上の姉が人形を受け取りに来て、乙松から仕事の話、鉄道の話を聞いていく。

 家族を幸せにできず、ただ訥々と仕事に打ち込んできた彼に奇跡が訪れる。

 

ラブ・レター

 違法就労を斡旋する事務所に戸籍を貸し、中国人女性「康白蘭」と偽装結婚をしていた「吾郎」。吾郎は籍を貸していたことすら忘れていたが、警察から妻が亡くなったとの連絡を受け葬式をあげるため房総の端まで赴く。向かう車中で白蘭が残した吾郎へのラブレターを読む。白蘭は人身売買まがいの違法就労斡旋に怒ることもなく、自分を助け結婚してくれた吾郎への感謝の気持ちだけを繰り返し綴っていた。

 白蘭の粗末な遺品や、ほとんど参列する人のない葬儀を見て、吾郎は深い憤りと悲しみを抱えていく。

 

悪魔

 比較的裕福な家庭に育った主人公の少年。ある日家庭教師を雇い始めてから、徐々に家庭が崩壊して行く。同じ家庭教師に教わった同級生はある日突然に亡くなってしまった。家庭教師は悪魔なのか。

 

角筈にて

 プロジェクトの失敗を受け、地球の裏側まで左遷させられる貫井恭一。彼の歓送会の二次会でかつては角筈と呼ばれていた新宿ゴールデン街に赴く。その街角で恭一は、数十年前に彼を置き去りにしていなくなった父の面影を見つける。

 父がいなくなってからは叔父に育てられた恭一。叔父夫婦のその娘達の優しさに恵まれ、学力も優秀で東大を卒業し一流商社に入り、ついには叔父の娘と結婚するに至った。幸せな生活を築いてはきたが、恭一と離れるときに父は何を思い何を願っていたのか、常に心から消えることはなかった。

 妻と二人ブラジルに飛び立つ前日、再び角筈を通った恭一はあの日の父と巡り会う。

 

伽羅

 ライバルの衣料品メーカ営業から、ブティック「伽羅」を紹介してもらった主人公。美しい女性店主の立花静は金払いが良いが業界の慣習も知らず、衣料品メーカの食い物にされようとしている。

 普段はエゲツない売り方も辞さずトップセールスとして歩んできた主人公だが、静に対しては強引な手法をとることができず、無理な納品を引き上げ、徐々に距離を置くこととなる。

 ある日、主人公に伽羅を紹介したライバル営業が、自動車事故で急死を遂げる。

 

うらぼんえ

 夫の実家の「うらぼんえ」の行事に参加するため同行した「ちえ子」。外科医である夫は年下の看護婦との間に子供を設け、ちえ子とは離婚を望んでいる状況だった。

 夫の実家では舅や義兄から離婚を迫られ、家族もいないちえ子は寄る辺のない寂しさに潰されるが、すでに亡くなった祖父が訪れ、夫の実家との交渉を請け負う。

 結果としては夫が望む形での離婚となってしまったが、自分を支えてくれようとした祖父を思い、すがすがしい気持ちで人生に区切りをつける。

 

ろくでなしのサンタ

 ポン引きの現行犯で捕まった「三太」は留置所に数日入れられる。メッキ工場での金地金の横流しの末端に与し、たった数十万の手取りで実刑のババを引きそうになっている「北川」の話を聞き、自分と同じく「不器用で無口」な彼に同情する。

 クリスマスイブに母の身柄引受で釈放された三太は、北川の妻と子供にプレゼントを贈ることを思いつく。

 

オリオン座からの招待状

 京都西陣の街で古くから営業してきた映画館オリヲン座が記念最終興行を行う。小学生時代にオリヲン座の映写室から一緒に映画を観ていつしか夫婦となった二人が数十年ぶりに西陣の街を訪れる。夫婦はすれ違いから別居状態となり心が離れていたが、数十年に渡りオリヲン座を守り続けてきた主人との思いを聞き、夫婦も思いを新たにする。

 

【感想・考察】

 特に好きなのは「ラブ・レター」だった。過酷な状況に置かれながらも感謝の気持ちを忘れない女性と、自らも決して恵まれた環境にはいない男が彼女の境遇を思い心を乱す様は、自分の心も波立つ。「角筈にて」で描かれる夫婦の姿にも心打たれた。

 浅田氏の作品は、人生の理不尽さと、それでもそれを乗り越え強く生きようとする人々の姿が描かれることが多い。心が温かくなり力づけられる。周囲の人々に感謝し強く生きようと思える。

 傑作揃いの短編集。

 

 

どうか幸せになって

【作者】

 ごみたこずえ

 

【あらすじ・概要】

 図書館職員が古くなった本を処分しようとしたところ、高齢の職員から止められ「私はかつてこの本に救われたんだ」と言う。

 その本は数十年前に、ある男が娘に贈ったものだった。男は娘が生まれ長くはいきられないことを知る。全ての苦しみを封じ込めようと、醜い心や地獄の苦しみを本の中に収めたが、最後のページに娘への想いを書き加える。

 

【感想・考察】

 淡々とした描写だが、温かさが伝わってくる。「幸せになってほしい」親の子供に対する思いが、リングのように繋がり人々を救っていく。心が温かくなるストーリー。

 

東京タワーが消えるまで

【作者】

 森沢明夫

 

【あらすじ・概要】

 惚れ込んだアーティスト「Deep Sea」を売り出すため、大手レコード会社を退職し、専属レーベルを立ち上げた主人公 佐倉すみれ。体力の限界を超えて働き詰めているうちに恋人とすれ違い「バイバイ」と別れのメールを送られてしまう。命運をかけたライブでは 入れ込んだ Deep Sea が離れていってしまう。

 疲れ切った さくらは、占い師である友人の勧めに従って醤油製造をしている実家に戻り、家族の優しさに触れ、心が離れていた父と和解する。

 Deep Sea が離れた後、また心を揺さぶるアーティスト「ハルト」と出会い、起死回生の全力投球を再開する。ハルト、その娘のミッチー、レコーディングミキサーのトシちゃんたちと共に、観客の心を根こそぎ奪うステージを作り上げる。

 

【感想・考察】

 すみれ と 恋人のじゃれあい、父の朴訥とした愛情表現、ハルトのひたむきさ、ミッチーの優しさ。お互いを大切にしようと不器用ながらも全力で走り続ける登場人物たちが、心温まるストーリーを紡ぎ出す。日々の生活も仕事も頑張ろうと思える勇気をくれる話だった。

 

私の財産告白

【作者】

  本多静六

 

【あらすじ・概要】

 財産の作り方、増やし方について述べた本。50年以上前の著作だが、内容は王道で古さは感じない。日本近代経済の祖となった渋沢栄一やみずほグループを築き上げた安田善次郎などとの交流も描かれる。

 特に印象に残ったのは以下の部分。

 

・財産の増やし方

 ①収入の4分の1の天引きで、「雪だるまの芯」を作る

  吝嗇と節約は違う。外面を気にして財産がないうちから豪奢な生活をしても高が知れている。一時期苦しんでも財産を築いてから大きく使って世界に貢献すべき。

 ②時局を見極め投資を行う。「2割で利食い、10割で半分売却」が鉄則。

 

・財産の使い方

 ①自己を利するだけでは、大局的にはうまくいかない 

 ②お金の使い方は他人がよく見ている

  安田氏は財産を築いた後のお金の使い方の計画があったが、発信せず他者からの援助要請を冷たく断る印象があり、結局恨みを持たれ殺害された。一方渋沢氏は大きな財産を築きながらも、「人情」を厚く示すことを忘れず、社会で重要な地位を占めるに至った。著者自身も学校への寄付が多額であったことから、却って反感を抱き退職勧告を受けたが、他者への配慮が足りないことを気づかせてくれたとしている。

 

・凡人の成功戦略

 ①「人よりも少しだけ先回りして勉強をすること」

  「天才マイナス努力」より「凡才プラス努力」が上に行く。

 ②職業の娯楽化

  本当に楽しい、時間を忘れて没入できることを仕事にすれば、努力を努力と思わず楽しんで進んでいける。

 

【感想・考察】

 「人生即努力、努力即幸福」これが著者の体験社会学の最終結論だと言う。努力を苦労と思わない「職業の娯楽化」が最強だという話はよく見る。この著作では努力を重ねるから娯楽化できるという逆からの視点も提示している。

 投資術などは、山林価格の高騰や株式の高騰など幸運もあり、結果論の部分もあるが、「収入の一部を天引きし投資のタネにする」と言う考え方は普遍なのだろう。

 

本日は、お日柄もよく

【作者】

 原田マハ

 

【あらすじ・概要】

 幼馴染である広告代理店勤務の今川厚志の結婚式に参席した二宮この葉。久遠久美のスピーチに心奪われ涙する。この葉は同僚の結婚式のスピーチのため久遠にスピーチの作り方を教わる。

 同僚の結婚式でのスピーチが参列者の心を揺さぶり、この葉も「言葉の力」を理解し始める。厚志のライバルでもある 広告代理店勤務の 和田日間足の目にとまり、この葉が務める会社のブランド戦略プロジェクトに抜擢される。

 今川厚志の父は政治家であり、野党第一党の党首である小山田のパートナーでもあったが、厚志が子供の頃に亡くなっている。厚志は父への反発もあり政治の世界からは距離を置いていたが、政権交代を狙う選挙で小山田は厚志に立候補を依頼する。

 この葉はスピーチライターとして厚志を支える決意をし、選挙戦をともに戦い抜く。

 

【感想・考察】

 原田マハの著作は初めて読んだが、とても読みやすく心にすっと馴染んでくる。かつて好きでよく読んでいた原田宗典の妹だということも初めて知ったが、気取らず読みやすい文体はどこか似通っている感じもした。

 主人公 この葉 と 厚志 の恋愛物語であり、政治の裏で動くブランディング戦略を語る物語であると同時に、「スピーチの心得」を伝える指南書としての性格もある。ただそれ以上に「言葉の力」について圧倒された。

 冒頭の久遠による結婚式の祝辞や、小山田氏の盟友への弔辞など、あざとさを感じるくらいに計算されているが、静かな導入から具体的なエピソードで共感を呼び、相手の感情を揺さぶるようなクライマックスを迎える。やはり「プロの小説家」が言葉を操る力は圧倒的で驚嘆せざるを得ない。

 言葉の力について考えさせられる作品だった。 

 

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書

【作者】

 小原和啓

 

【あらすじ・概要】

 団塊世代以前と最近では「何のために頑張るか」が違っている。以前は「達成・快楽」を求めていたが、「意味合い・良好な人間関係・没頭」を目指している。がむしゃらに達成を目指してきた世代からみると理解しがたいかもしれないが、モチベーションのあり方が環境の変化に合わせ変わってきたことを認識し、上の世代も若い世代も相互に理解をすることが必要。断崖以前の世代はいろいろなモノが不足していたので、「乾いていた」のに対し、最近の世代は既になんでも揃っている中に育ったので「乾けない」

 ソフトバンクの孫正義や楽天の三木谷は、「日本一」、「世界一」という目標を掲げ、がむしゃらに邁進しているが、Facebook のザッカーバーグは数千億円での買収にも応じず、自分が楽しいと思うことに没頭して結果的に富を得ている。

 

 AI が高度化し「単純作業」や「合理性に基づく判断」であれば人間は敵わないレベルに既に達している。「私は誰に何を言われても、これが好きだ」という偏愛、嗜好性は非効率であるがゆえに 合理的計算では導き出すことは難しく人間の強みになると、筆者はみている。そういう部分では画一的な目標の達成を求めた世代よりも、「乾けない」世代の方が強みを持っていると考えられる。

 

 個人がそれぞれ「意味合い」を求め、好きなものに「没頭」できるようにするには、お互いの強みを活かしていくチーム作りが大事になる。それぞれが持っている、それをする理由「WHY」を尊重する姿勢、相手を信頼して任せることが大事になる。「価値=違い×理解」

 食べるための仕事「ライスワーク」から、生きがいとしての仕事「ライフワーク」に移行させていく。お金を得るための仕事にも真剣に集中しながら、自分の「ライフワーク」の時間を確保し、少しずつ「好き」を「得意」に変えていく。

 好きなこと→得意なこと→対価を得られること→世界が求めるもの と移行し、重なる部分が「生きがい」になる。

  

【感想・考察】

 「最近の若いものは覇気がない」という年配世代もいるが、達成したいと思っていることがずれていることを認識できないと、お互いに不幸なのだと思う。「良好な人間関係」のなかで、自分が「意味合い」を感じることに「没頭」できるのは幸せだと思うし、その結果目標を「達成」し、「快楽」が得られるなら素晴らしいと思う。相手が何を尊重しているのか理解するようにしていきたい。

 また、筆者の働き方は極めて魅力的だ。バリなどで過ごしながら、ネットワークを通じてコンサルティングなどの仕事をし、世界中に家族を連れて回りながら世界を知り、インサイトを得るための活動をしている。365日、24時間が仕事であり、趣味であるという「ライフワーク」に生きるのは素晴らしいと思う。

 

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