毎日一冊! Kennie の読書日記

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『誰も僕を裁けない』 早坂吝

 「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」「虹色の歯ブラシ」に続く、上木らいちシリーズ第3弾です。

援助交際探偵とかエロネタ満載だったり、オチがぶっ飛んでたりと、賛否両論を呼ぶシリーズなのは分かりますが、このタイトルからは「うるさい!!ミステリのルールの中で論理をこね回すのが楽しいんだよ!!」という作者の思いが感じられます。

私は大好きです。

 

タイトル

誰も僕を裁けない

 

作者

 早坂吝

 

あらすじ・概要

埼玉県に住む高校生の戸田公平は同級生の春日部が援助交際している現場をのぞいてしまう。その後、春日部は自殺してしまい、実際にはレイプされている可能性もあったと思い至り、罪の意識にさいなまれる。

数年後、戸田は埼(みさき)という女性からアプローチを受け、埼玉県にある彼女の家に深夜に侵入する。ところが埼が未成年だったことから、埼玉県淫行条例違反で逮捕されてしまう。

 

その頃、上木らいち の元に「メイド衣装セット」が届く。大手企業の社長である逆井東蔵からの手紙が同封され、ゴールデン期間中限定で、東京都内の逆井邸でメイドとして働いてほしいと書かれていた。

逆井邸で東蔵とその妻、火風水(ひふみ)、3人の息子一心、二胡、三世、一人娘の京(みやこ)、執事の渋谷と共に過ごすこととなるが、何故からいちに対する態度がおかしい。 そしてその夜から逆井邸での連続殺人が始まる。

 

感想・考察

「〇る館なんて手垢のついた設定」といいつつ、めいっぱい利用してギリギリを攻める。細かい情景描写や、変態プレイの内容まで漏らさず伏線として回収する。本格ミステリへのこだわりが感じられる。

そして、作品内で語らせている通り「社会派ミステリという形ではなく、本格ミステリの枠の中で社会へのメッセージを伝えよう」とする試みが見られる。

 

作品内で、道徳・倫理よりも法令の条文に杓子定規に従う司法組織に違和感を覚えていた少年は、やがて法令を司る側に身を移す。

一方本書自体は、リアリティだとか社会的な正しさは無視して、本格ミステリのルールに厳格に従い、論理パズルとして徹底する本作は、杓子定規な現実社会を映す鏡であり、皮肉でもあるのだろう。

このシリーズを読み「何だよ、この下劣な展開は!?」と感じることが「何だよ、この下劣な社会は!?」というメッセージに直結していく。

(という解釈に誘導しておいて、最終章で小声で。。 )

 

 

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