毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

虹の歯ブラシ 上木らいち発散

〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」で登場した

援助交際探偵 上木らいち の物語です。

 

エロミステリの連作短編集と見せかけて

メタ的な仕掛けをぶち込んできています。

 

光をプリズムで分散させるように

角度によって「ハサミ葉桜イニシエーション」的に

姿を変えていく「上木らいち」を楽しむ物語です。 

 

好き嫌いが別れる話だとは思いますが

個人的には がっつりツボにはまりました。

 

 

【タイトル】

虹の歯ブラシ 上木らいち発散

 

【作者】

早坂吝

 

【あらすじ・概要】

上木らいち は、平日の曜日ごとに

固定客を取って援助交際をしている。

曜日ごとに違う7色の歯ブラシを並べていた。

 

 紫は移ろいゆくものの色

らいちの月曜日の客、村崎の秘書が殺された。

 

秘書の死体は上半身裸でカラーコピーに乗せられ

徐々に死斑が出る様子が写されており

犯人は一晩中コピー機の前にいたものと思われた。

 

村崎はらいち の証言で容疑から外れたが、

捜査にあたっている刑事の藍川から話を聞き、

部屋を訪れたときの様子を思い出して、

らいち は村崎の犯行であることを確信する。

 

 

藍は世界中のジーンズを染めている色

火曜日の固定客、刑事の 藍川 と知り合った時の事件。

 

ラブホテルの一室で男の死体が発見された。

監視カメラには部屋から逃げ出した、ゴスロリ姿が

移っていたが顔は隠されていた。

 

藍川はラブホテルで仕事をしていた らいち に

事情聴取をし、彼女の推理を聞いた。

 

 

青は海とマニキュアの色

包丁を研いでいた水曜日の固定客は

漁村Mで起きた事件について書かれた

らいち からのメールを読んでいた。

 

メールによると らいち は、

田舎の漁村M にある宗教団体のような組織に

入り浸ってしまった知り合いの少女に

「母親が心配している」ことを伝えに行った。

 

らいち は組織の神官や信者たちの信頼を得るため

「海の力を与える」という教祖と交わった。

 

ところがその夜、密室で教祖が殺されてしまう。

 

 

緑は推理小説御用達の色

らいち の木曜日の固定客の話。

 

らいちの住むマンションは防犯設備が整い

壁も分厚く防音に優れいてたが

らいちの隣室に住む男は壁を薄く削り盗聴し

鍵交換の業者を装い部屋への侵入を繰り返していた。

ストーカー行為はエスカレートしていき

ついに男は在室中の らいち を襲うことを計画する。

 

らいち の凄まじいプロ意識が垣間見られる。

 

 

黄はお金の匂いの色

金曜日の固定客との話。

 

らいち が通う高校で容姿に自信を持つイケメンが

彼女を口説こうとするが、あっさりと振られる。

プライドを傷つけられたイケメンだが

らいち の言い値を準備して援助交際を持ちかける。

ところが らいち は受け取った紙幣を破り捨ててしまう。

 

らいち は何故紙幣を破ったのか。

金曜日の固定客に「ウミガメのスープ」形式の

YES、NO 問答でを投げかける。

 

 

橙は???の色

10年前の らいち の話。

らいち閉鎖された施設で「先生」の実験台となっていた。

 

 

赤は上木らいち自身の色

らいち自身の話。

光を当てる角度により、らいち は姿を変えていく。

 

 

【感想・考察】

紫の章から橙の章までの各章にひとつずつ

仕掛けが組み込まれていて

最終章で らいち の正体を読み解いていく。

 

バークレーは「毒入りチョコレート事件」で

伏線の拾い方は、恣意的にコントロールできることを

示していた。

本作では、さらに進んで叙述トリックにおいても

伏線の解釈や拾い方は作者次第であることを示した。

 

言葉の曖昧さを利用しながら、

時には厳密な論理性を根拠にしている。

 

伏線の拾い方・解釈によって

らいち は次々をその姿を変えていくが

それぞれ完成度が高いので、

質の良い叙述トリックを連続で味わうような快感があった。

 

相当クセの強い作者だが実に面白い。

 

 

 

当ブログは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムであ「Amazonアソシエイト・プログラム」に参加しています。