大前研一 2019年の世界~2時間で学ぶ、今の世界を理解する3本の軸~
3つのポイントから、2019年の世界状況を解説しています。
大前研一氏のセミナーを基に書籍にまとめたものです。
【タイトル】
大前研一 2019年の世界~2時間で学ぶ、今の世界を理解する3本の軸~
【作者】
大前研一
【あらすじ・概要】
・独裁型国家モデルの台頭、
・主導国が無くなった国際社会、
・デジタル技術による既存産業の破壊
の3つの観点から今日の世界状況を解説する。
①国家モデルの変遷~西欧型民主主義から独裁型へ
西欧型民主主義を理想とする時代が長く続いたが
テクノロジーによるボーダレス化で「新興国」の経済発展が進み、
成長期に有効な「独差型国家」が力を持ち始めた。
米国のトランプを始め「民主的な手続き」で選ばれた人が
独裁的なリーダーになるという現象が増えている。
メキシコのオブラドール、ベネズエラのマドゥロ、
ブラジルのボルソナーロ、トルコのエルドアン
フィリピンのドゥテルテなど。
大国でも中国の習近平、ロシアのプーチンなどは
独裁的な傾向を強めている。
②Gゼロ-マイナス1~主導国なき国際社会
米国トランプが「自国First」主義で
国際社会の秩序維持という役割から降りた。
トランプの「移民や中国に雇用を奪われた」
という認識は完全な誤りだとする。
トランプの認識はグローバル経済モデルの
変遷についていけていない。
第1- 地域ごとに生産性の高いものを交換する
「比較優位論」モデルの時代。
第2- 先進国が自国で製造した製品を輸出する。
人件費の違いがポイントとなる。
1980年代~90年代の日米貿易摩擦はこの段階。
第3- グローバル企業が国境を越え最適地で生産し
顧客のある市場で販売する。
Apple や HP など。
第4- 通関統計に反映されないサイバー経済。
Google、Amazon など。
第5- eコマースのフェーズ、電子決済の領域。
アリババ、テンセント、平安保険など。
第1、第2フェーズは 第3フェーズの
グローバル企業の活動に巻き取られている。
第3フェーズでは米国企業が圧勝している。
第4フェーズでは、規模的には米国・中国が大きいが
グローバルに活躍しているのは米国企業。
第5フェーズでは中国企業が圧勝という状況。
トランプは未だ第2フェーズの認識に囚われ
貿易戦争を仕掛けようとしている。
③デジタル・ディスラプション~既存産業の破壊
自動車産業では EV化、自動運転、カーシェアが
急速に進んでいる。
また Amazonなどが 小売市場を破壊し始めている。
デジタル・ディスラプションの時代に
人間には1を10にするのではなく、
0を1にする能力が求められる。
④日本の今後
日本は平成の30年間に国際的な影響力を大きく落とした。
今後の方向性として
・世界をかき回すトランプに反応しない
・AIやロボットに負けないインスピレーションをもつ人材の育成
・「主権国家」から「地域国家」へのシフト
を提唱している。
【感想・考察】
セミナー、講演の内容をまとめたものなので
全体の構成が分かりにくいところもあるが
大前氏の目指す方向性はよくわかる。
基本的にグローバルでの発展を志向していて
EUのような国を超えた試みに好意的な一方、
トランプのような「自国優先主義」を嫌う。
私も、グローバルな融和は不可欠だと思うが
情報技術の発展で急速に進みすぎたグローバル化に対して
反動的な動きがあるのは必然だと感じる。
例えば資本主義の発展による弊害が大きくなった時期、
共産主義のような反動が起こり、
その影響で資本主義が次のステージに上がっている。
同じようなことがグローバルとローカルの関係でも
起こるのではないだろうか。