毎日一冊! Kennie の読書日記

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時をかける少女

 「時をかける少女」のシリーズで見たことがあるのは、細田守のアニメ版だけ、原作小説は初めて読んだのですが、かなり短い短編だったことに驚きました。コアとなるアイデアが力強いものであれば、ストーリーは時を超え生き残っていくのですね。

 

【作者】

 筒井康隆

 

【あらすじ・概要】

 表題作を含む3編の短編小説集。

 

・時をかける少女

 放課後に深町一夫、浅倉悟朗と掃除をしていた芳山和子は、理科準備室に人影を見つけ追いかけたが、そこでラベンダーの香りをかぎ意識を失ってしまう。

 翌朝、和子は暴走するトラックに轢かれそうになるが、次の瞬間に和子が気が付くと自宅のベッドにいた。轢かれそうになったのは夢だったのだと考えた和子だが、周囲の状況を見て自分が一日時間を遡っていることに気づき混乱する。

 一夫、悟朗と共に学校の先生に相談し、テレポーテーションとタイムリープが同時に起こっているのだろうと結論付ける。自分の特異な能力を快く思ない和子は、その原因となっているだろう「理科室の人影」に接触をするため、自分の意志でのタイムリープを試みる。

 和子が意識を失った日の理科準備室に戻ったが、人影の正体は一夫だった。一夫は数百年後の未来から訪れた人間で、自分の時代に戻るため理科室でラベンダーを材料とした時間跳躍の薬を作ろうとしていたのだった。

 過去に自分についての記憶を残すわけにいかないため、一夫は関わった全ての人の記憶を消して未来に戻る。

 和子は一雄の記憶を失うが、ラベンダーの香りがするたびに、未来に出会う誰かを予感する。

 

・悪夢の真相

 般若の面と高い場所を異様に怖がる昌子。同級生の文一と一緒に恐怖の原因を探す。昌子の弟、芳夫が恐れる「トイレにいる鋏を持った女性」や「廊下に転がる男の首」の原因も探りながら、自分自身の過去の出来事と向かい合っていく。

 

・果てしなき多元宇宙

 暢子はおとなし過ぎる同級生の史郎に、もっと強くなって欲しいと願っていた。遥かに離れた時間軸を生きる科学者の実験の失敗で、「粗暴な史郎」がいる世界に飛ばされた暢子は、元の世界に戻りたいと願う。

 

【感想・考察】

 「時をかける少女」のストーリーは素晴らしいと思う。「タイムリープが引き起こす恋のすれ違い」というジャンルの作品は多いが、登場人物たちの心情描写がイキイキとしている。切ない話だが湿っぽくはならず、暖かい余韻を残す。50年の時を超えて読んでも胸に響いてくる名作だと思う。

 また「悪夢の真相」も心理の内側に切り込んでくるような恐ろしさがありながら、弟の件で可愛らしいオチを付け、怖いだけの話にはしていない。

 筒井氏は偉大だと感じた。

 

【オススメ度】

 ★★★☆☆

 

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