『アムステルダム運河殺人事件』 松本清張
実際の事件をベースにした「アムステルダム運河殺人事件」と、ゴルフ発祥の地を舞台とした「セント・アンドリュースの事件」、ヨーロッパを舞台とした2つの中編ミステリがおさめられています。
50年くらい前に書かれた小説で日本の情景を見ると、街の風景も人々の生活様式も大きく変化しているのが伝わりますが、本書で50年前のヨーロッパの様子をみても現在とあまり変わらないように感じます。
もちろんネットの影響などで変わった部分はあるけれど、全体としてゆったりとした雰囲気は今も残っています。
数十年前の小説から「現在と直接つながる歴史」が見えてくるのが面白いと思います。歴史小説になるとちょっと離れすぎている。
リンク先にあらすじと感想を上げました。
『残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか』 更科 功
・中途半端な「目」は役に立たない。
・例えば網膜だけがあっても生存競争上有利にならない。
・でも、これだけ複雑な器官が偶然一気にできたとは考えられない。
やっぱり「設計者」がいたんじゃね?
という「インテリジェントデザイン」に説得力があると感じていました。
でも「一つの器官は様々な用途に使われている」ことを思えば理解できる気がします。
例えば脊椎がいきなり姿勢維持のため生まれたわけでなく、最初カルシウムの貯蔵庫として働き、ついで脊髄の保護にも使われ、蠕動運動の軸として活用され、やがて姿勢性維持にも使われた。
機能ごとに分けて考えれば、中途半端に見えるステップにも意味があるということで、複雑な器官が「徐々にできていく」可能性もあると思えます。
新しい示唆を与えてくれる本でした。
リンク先に要約を載せています。
『星やどりの声』 朝井リョウ
偉大だった父が亡くなって数年。
父が残した「家族の絆」とともに暮らしてく三男三女の物語です。
どんなに幸せな家族でも、時間が経てばステージが変わります。
死んでしまった父親はもう変わることができないから、子供たちの背中をそっと押すために奇跡を贈った、ということなのでしょう。
軽く読みやすい文体で、切ない物語を描き切る。朝井リョウさんらしい良作でした。
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『ZOO 1』 乙一
ホラーからSF、ミステリ要素もある、さまざまな作風の短編集です。
設計者が自分を埋葬するために作った少女型ロボットが「心」を学び取っていく話「陽だまりの詩(シ)」が一番好きでした。
ホラー寄りの話も「何かが欠損している」人たちの行動は不気味で怖いのだけれど、やりきれない切なさが滲んでいて、心に残る作品になっています。
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『横浜殺人事件』 内田康夫
真面目な会社員の変死と、テレビレポーターの殺人。
童謡「赤い靴」からヒントを得て、無関係に見えた二つの事件が重なっていきます。
完成度の高いプロットでミステリとして面白かったのですが、それ以上に描かれた横浜の風景に惹かれました。
今から30年以上前の昭和末期ごろから、「変わったもの」と「変わらないもの」があります。大好きな横浜の街に重ねて、時間の流れに想いを馳せるのも楽しい読み方でした。
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『除妖師』 如月恭介
『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』 三宅香帆
読んだ人に「面白い」と感じてもらえる文章の工夫を紹介しています。
文章の達人たちの小説やエッセイなどを引用し、「どうして引き込まれるのか」 「なぜ面白いと感じるのか」を分析しています。
私などは、何か読んでいても「あー、面白かった!」で流しちゃうけれど、「文章の面白さ」という主観的な部分を、できる限り「再現性のある科学」に還元していく姿勢は凄いと思います。
「バズる」には、文章以外にも課題が多いので、タイトルはちょっと言い過ぎと感じますが。。
リンク先に要約をまとめました。
でもこの本は引用部分の解析にキモがあるので、要約だけでは重要なところが伝わりません。少しでも興味をもたれれたら、ご購入されることをお勧めします。