『神話の密室―天久鷹央の事件カルテ―』 知念実希人
天久鷹央シリーズ最新刊!
このシリーズは、知念実希人さんの数ある作品群の中でも、一番正統な「医療ミステリ」だと思う。
単に病院を舞台としたミステリというわけではなく、病気や薬などの知識を、ミステリの鍵としてガッツリ組み込んでいる。
それでいて素人にも分かりやすいエンタテインメントになっているのだから、すごいとしか言いようがない。
本作では患者として小説家が登場し、いつもの「医療に詳しい小説家」から、「小説家としての苦悩を愚痴りたい医者」に逆転している感じが面白い。
刊行ペースはゆっくりでもいいんで、SNSで悪口も言わないんで、これからも楽しい作品をお願いしいます。
リンク先にあらすじと感想を上げました。
『さいはての彼女』 原田マハ
忙しい毎日に追われ心が凝り固まった女性たちを「旅」が癒していく4つの短編小説集です。
切羽詰まってくると「旅行なんて行ってる暇はねえ!」となりがちですが、短時間でも短距離でも、今の日常を離れてみることが必要なのかもしれないですね。
リンク先にあらすじと感想を上げました。
『夜行』 森見登美彦
10年前の京都鞍馬火祭で消えた長谷川さん。
彼女以外のメンバー5人は10年ぶりに京都に集まり、とある画家の手による銅版画「夜行」にまつわる思い出話をしていきます。
「夢の中の夢」のように確実なものがない怖さを描き出すホラー寄りファンタジーでありながら、伏線を回収しながらミステリ的な解釈もできる話にもなっています。
森見さんの作風を踏襲しながら、新しい要素が入ってきているようです。
リンク先で結構ガッツリ考察してみました。
ネタバレなので未読の方は見ない方が良いです。
読後に幾通りも解釈があることを実感したい人はぜひ。
『ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう』 スティーヴン・ホーキング
ホーキング氏が、宇宙や生命にまつわる「ビッグ・クエスチョン」に答えていく本です。数式とかはほとんど出てこず、分かりやすい説明になっています。
(ブラックホールの話などは、数式無しでもついていくのが大変ですが。。)
「地球外の星に植民しよう」とか「AIが自己設計を繰り返すようになると危険」という主張を聞くと、ホーキング氏が「科学の可能性」を極めて高く氷解していたことが分かります。
現状をみると、ターミネーターを生んだようなAIも、準光速の宇宙船も、まだまだ遠い存在にも思えるけれど、枠組みを超えて夢を見るから、先に進むことができるのでしょう。
こちらのリンク先に、要約と感想をあげました。
『きみと暮らせば』 八木沢里志
「血の繋がらない兄妹の二人暮らし」と、設定はラブコメ風ですが、どちらかというと淡々とした展開です。
登場人物の座右の銘として「花を見て根を思う人になれ」という言葉が紹介され「表面に見えているものは、地に根を張った地道な積み重ねの結果である」ことが強調されています。
『純喫茶トルンカ』などでもそうですが、この作者さんは派手な展開より、日常を淡々と丁寧に描きながら、心の内面や人と人の繋がりを温かく表現する作品が多いようです。心がふっと温かくなるようなお話ですね。
リンク先にあらすじと感想を紹介しています。
お手間を取らせてしまいますが、こちらに見に来てもらえると嬉しいです。
『吉田松陰「人を動かす天才」の言葉―――志を立てることから、すべては始まる』
吉田松陰は思っていたより過激な人物だったようです。
松下村塾での指導も理論や学問の追求ではなく、実践的な思想を伝えていたことが分かりました。
幕末から明治にかけての維新は、当初「尊皇攘夷思想」がベースにあって、諸外国からの干渉を排除することが一つの目的だったのに、主導権を握った人たちは現実のパワーバランスを見て、とりあえずは諸外国との協調路線を目指す方向に移っていきました。
これが純粋な松陰には変節に見え、彼の後半生に意固地で過激な行動をとらせるようになったのだと思えます。。
松陰の言葉に思想として隠し的なモノがあるわけではないが、その行動を引っ張った背景を知ると面白いと思います。
リンク先に要約と感想を載せました。
よろしければ見てもらえると嬉しいです。
『純喫茶トルンカ しあわせの香り』 八木沢里志
「純喫茶トルンカ」シリーズ第2弾。
東京谷中の路地裏にひっそり佇む喫茶店トルンカと、そこに集う人たちの物語です。
一方的な憧れだと思っていた恋が相手に力を与えていたり
幼馴染を守っているつもりが、本当は自分も守られていたり、
職を失った友人を助けたつもりが、自分自身が救われていたり、
人と人との関係は、相互に影響を与えあって作られるものなのですね。
リンク先にあらすじと感想を上げました。
読んでもらえると嬉しいです。