毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

スノーデンは正義の味方なのか? 情報戦争を読み解く

  NSA(アメリカ国家安全保障局)での個人情報収集の手口を告発したスノーデン氏の行動に疑問を投げかける内容でした。

 

 

 

【作者】

  エドワード・ルーカス

 

 

【あらすじ・概要】

  主張はごくシンプルで下記の2点に集約される。

 

・そもそもNSAなどの機関は、国家の安全保障のために諜報活動を行なっている。スノーデン氏の告発には諜報手法の是非を問う意味は有ったが、国民の国家への信頼の毀損、同盟国との関係悪化、機密情報流出の可能性などを考えると、デメリットがはるかに上回る。

 

・スノーデン氏の行為は、結果的にロシアなどの敵対国を利する結果となった。スノーデン氏の告発前後の行動からみて、ロシアなどが彼の背後にあったのではないかと推察される。

 

 

 

【感想・考察】

  スノーデン氏の告発は、アメリカの公安組織にとっては大きな損失だったと言えるだろう。ただ世界的な視点で見ると、その問題提起には意味があったのだと思われる。

 

   Microsoft, Google, Facebook, Apple などに、情報の抜け道となるバックドアを設けさせ、インターネット通信を傍受していたことなどは、アメリカ国民にとっても気分の良いことではないだろうし、そうしたインフラに頼っている他国にとっても大きな脅威となる。

 

  同盟国大統領の私的な通話を傍受していたことなどは、国家間の諜報合戦としてあり得ることは理解できるが、すでに生活インフラとなっているインターネットが監視下に置かれていることはレベルが違う話だ。

 

  ネットワークのインフラを支えるのは米国企業が多く、情報戦では米国機関が圧倒的に有利だ。中国では独自のファイアウォールで情報を守り、華為など国産のインフラメーカを育てようとしているし、EU圏でもGDPRなどで、米系の情報寡占企業からの防御を始めている。

 

  ネットワークの情報流通量が増え、ビックデータの解析能力がさらに上がりつつある時期に、情報戦争の在り方に一石を投じたスノーデン氏の告発には大きな意味があったのだと思う。

 

 

  一方、スノーデン氏がロシアや中国の意向で動いていたのではないか、という推察については判断は難しい。

  一つ言えるのは「情報規制の厳しい中国配下の香港で告発を行なったのは不自然」という著者の見解は浅い。

  当時、香港の民間レベルでは中国本土の情報監視強化に極めて強い嫌悪感が蔓延していたし、アジア圏内では英語での情報発信に適した地域だったこともあり、告発を行う場所として香港は十分に合理的だった。

 

  じっくり読む価値がある本ではないが、問題提起としては面白い。

 

 

【オススメ度】

   ★☆☆☆☆

 

日本一売り上げるキャバ嬢の 指名され続ける力

 

  記録的な売り上げを持つキャバ嬢である「エンリケ」こと 小川えり の試行錯誤の歴史です。とにかくバイタリティが溢れていて、文章を読むだけで元気をもらえるような本です。

 

 

【作者】

  小川えり

 

 

【あらすじ・概要】

  「誕生日に2億円」など記録的な売り上げを上げ続けるキャバ嬢である著者。彼女が売れるようになった経緯、売れ続けるためにしていることを解説する。

 

  自分語りや、キャバクラの外では通用しない話も多いが、仕事全般に通じるようなところもあった。

 

 面白いと感じたのは以下項目。

 

・素でいること

   猫をかぶると苦しくなる。素を出すことで自分が楽になるし、お客にも喜んでもらえる。

 

・相槌は「え〜っ!」より「あぁ〜!」

  「え〜っ!」は相手の話に驚いている感じだが、微妙に「本当なの?」いう否定のニュアンスを含む。「あぁ〜!」は「なるほど!」と相手の話に完全に納得がいった感じで印象が良い。

 

・接待の場

   接待の場では、接待する側の常連を極力地味に見せ、接待される側を持ち上げる。

 

・「悪くない」は思い込み

  はっきりした理由が分からず起こる客に謝るのは難しい。だが、少なくとも相手の気持ちを汲み取れなかったことは自分の落ち度。

 

・週7日勤務

  人と同じことをしていては人と同じ成果しか出ない。「ナンバーワン」になるため、自分にまずできることとして「休まない」という選択肢を取った。

 

・フットワークの軽さ

   寝ている時も携帯は待ち受け待機。時間を作って呼び出しにはできるだけ気軽に対応する。

 

・インスタコメント返し

   インスタで毎日300件くらい付くコメントに2〜3時間かけ全て返信する。行動量が尋常でない。

 

・オーラは作れる

   まずは姿勢を良く。自分に自信を持つ。

 

 

【感想・考察】

  圧倒的なバイタリティに驚かされる。ドンペリ一気とか、週7日勤務とか、毎日300件のインスタコメント返しとか、凄まじい。

 

   

  キャバ嬢としての技術は直接自分に役立つものではないが、その「心意気」には感銘を受ける。

 どのような世界でも成功する人は「指摘を素直に受け入れる」、「良いと思うことはフットワーク軽く行う」、「圧倒的な行動量で成果が出るまでやりきる」という共通点があるようだ。

 

 

【オススメ度】

   ★★★☆☆

 

 

 

雪国

 

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という冒頭が有名な作品ですが、初めて読みました。

雪国の情景の重苦しさと美しさ、男の目を通して映る女の愛の純粋さと危うさが、淡々と描かれています。

なんだか胸が苦しくなるような作品です。

 

 

【作者】

  川端康成

 

 

【あらすじ・概要】

  親の資産で暮らす島村は、列車で雪国に向かい、以前親しくなった芸者の駒子に会いにいく。

道中では、病身の青年を甲斐甲斐しく介護する葉子という娘の姿を見て心を奪われる。

  島村が何度か雪国を訪れるうち、駒子は宴席の合間にも会いに来るほど彼に惹かれていくが、

いつかは自分の元を離れて行くことを考える。

 

  葉子が介護していた青年は、駒子の三味線師匠の息子で、かつては駒子とも親しい間柄であった。

島村が帰京する日、青年の容態が急変し葉子は駒子を呼びにきたが、駒子は頑として戻らず島村を見送る。

 

  その次には島村は長逗留をする。葉子と言葉を交わし、東京に連れていって欲しいと言われる。

その後、映画上映をしていた繭蔵で葉子は火災にあい、意識を失って階上から雪の上に落ちる。

 

 

【感想・考察】

  ストーリー自体に複雑さはなく、淡々していて、情景や心情の描写が絵的で美しい。

車窓に映る葉子と背後に透ける雪景色のコントラスト。

夏の終わりの蜻蛉たちの醸し出す悲壮感。

キリリと冷え切った夜空に降り立ってくるような星空。

少し暗くて重い雪国の中で、時折鮮やかに浮かびたつ情景が描かれている。

 

 駒子の献身的な愛も、時に明るく時に鬱屈して息苦しく見える。

身勝手だが繊細な島村の目線で描写されていることで、猶更やり切れなさを感じた。

 

 

【オススメ度】

   ★

 

 

東京来訪

  六本木に憧れ日本にやってきたアメリカ人男性のクズっぷりと、彼を受け入れる女性の病みっぷりが、清々しいほど凄まじいです。

 

 

【作者】

高山環

 

【あらすじ・概要】

テキサスに住むウィルソンは「努力」を憎み、惰性で生活を続けていた。好きな食べ物はタコベルで、チェーン店以外の食事は受け付けない。

  ウィルソンはテレビで見た東京の景色に興味を惹かれ、親から金をもらい仕事も辞め、単身日本に向かう。

  六本木に辿り着くことができず困惑していたウィルソンの元に「ユウコ」が現れ、彼を六本木まで案内する。彼は六本木ヒルズの圧倒的な存在感の前に吐き気を催し、逃げ出すように離れていった。

  ユウコはウィルソンを家に連れていき、そこから暫しの同棲生活が始まる。ウィルソンは全面的に世話になりながら、身勝手な態度でユウコを傷つけるが、ユウコは彼から離れようとしない。

  ある日、ユウコの不在中に彼女の預金通帳を見つけたウィルソンは、現金を抜き出すことを計画する。

 

 

【感想・考察】

ウィルソンのクズっぷりの描写が生々しい。叱責されてもその場だけやり過ごすように、面倒なことを回避していく姿勢。先のことを考えず、刹那的に生きる。自分自身の中にもそういう傾向が出る時もあり、少し怖くもなる。

  「先の目標に向かって力強く生きていく人生」だけでなく「今、その時を全力で生きる人生」もあると思う。ただ「全ての一瞬を大事にすること」と、「面倒だから思考停止する刹那的な生き方」は大きく違う。

  極めて「気持ちの悪い」ウィルソンの生き方が反面教師となる。

  一方で、ユウコの屈折した感覚は、十分に説明され切れず、唐突な感じを受ける。ただ、それ故にブッ飛んだ感じで、印象深い作品になっている。

 

 

【オススメ度】

  ★★★☆☆

 

 

そこにいるのは誰

  ホラーと謳っていますが、怖いというより不思議な不気味さのある、

ショートショート的な短編集でした。さらっと読めます。

 

【作者】

 星邑光

 

【あらすじ・概要】

以下8篇の短編集。数ページのショートショート的な作品から、中程度の長さまで多様。

 

・そこにいるのは誰

寝付けない夜、夏子は誰もないはずのキッチンから音が聞こえる。喧嘩をして出ていった恋人が帰ってきたのだろうか。

 

・上品なマダム

上品なマダム派レストランでの食事後に、なかなか会計が来ない不満をボーイにぶつける。ランチタイムから数時間が過ぎ、いつしかディナータイムとなる。

 

・水蜜桃

大好きな水蜜桃を食べると、父母や友達が涙を流し私を見ている。たかだか水蜜桃で何故泣くほど悲しむのだろう。

 

・お盆休み

お盆休みの計画を話し合う男たち。実家に帰り両親に会う男、温泉に行く男など、それぞれの予定を語り合う。

 

・恩人

ヌルヌルとした不気味な生物から逃げ出した私は、灼熱に焼かれ動けなくなる。私を助けてくれた少年に感謝をする。

 

・のーまくさんまんだー

山田さんは朝昼晩と三度のお経を欠かさない信心深い人だった。のーまくさんまんだーばーざらだんせんだーまーかーろーしゃーだー。

 

・僕のとうさん

僕は公共の駐輪場が駅から離れているため、郵便局の駐輪場を利用していた。郵便局の警備員が郵便局利用者以外の駐輪を見つけ、執拗に追いかけてくる。

 

・星に願いを

屋上で星を見上げていたタカシとマリコ。マリコは流星にタカシと永遠に一緒にいられるよう願う。その直後、タカシは思いかけない行動を取り始める。

 

 

【感想・考察】

ブラック・ショートショートだった。「僕のとおさん」は「世にも奇妙な物語」的なコミカルな理不尽さと、追い詰められる不気味さがいい感じで面白い。

 

 

【オススメ度】

★☆☆☆☆

 

 

詐欺の帝王

 かつて「オレオレ詐欺の帝王」と呼ばれた本藤彰(仮名)のインタビューを通じ、裏社会のお金の流れや携わる人々の考え方を解説する本です。

 本書からは「詐欺の手口を広め、被害者を減らす」というより「裏社会への嫌悪を強め、加害者を減らす」という方向性を感じました。

 

【作者】

 溝口敦

 

【あらすじ・概要】

 本藤(仮名)へのインタビューや調査を通じ、裏社会での「金の稼ぎ方」、「行動哲学」が浮かび上がる。

 

 本藤は大学のイベントサークルで「キャンパス・サミット」を企画運営し、累計数十万人を動員する実績を上げる。イベント会場となるヴァルファーレなどの「箱屋」との交渉を引き受けることで、暴力団との繋がりを持つことになった。ただし、本藤本人は暴力団に所属することはなかった。

 大学卒業後は大手広告代理店に就職するが、かつてケツモチをしていた「スーパーフリー」によるレイプ事件の影響で左遷され、そのまま退職してしまう。

 一方、当時の暴力団では「組の名前を出す恐喝」などが締め付けられ、シノギとなるのは薬物かヤミ金だった。関東圏では山口組系の「五菱会」が有力だったが「スーパーフリー」の事件と前後して、本格的な摘発を受け壊滅的な状況だった。

 本藤はヤミ金に可能性を感じ参入を決意する。警察の目が五菱会に向いているうちに足場を固め、五菱会から離脱したヤミ金社員を吸収しながら拡大していった。またヤミ金での売り上げ達成のために、貸していない金を取り立てる「架空請求」を行う店が出始め、それを参考に「オレオレ詐欺」に転換していく。

 

 「ヤミ金」も「オレオレ詐欺」もトバシの携帯、架空名義の銀行口座など必要なインフラは共通で、移行は容易だった。また「一度引っかかった被害者を徹底的にしゃぶりつくす」という戦術も共通していた。

 

 リスクの多い世界の中心にいながら、本藤自身は殺されることも逮捕されることもなく過ごし、危険が迫る前に詐欺から足を洗った。

 

 

【感想・考察】

 著者曰く、オレオレ詐欺は「中途半端な悪人」が手掛けるものだという。

 現代では高齢者が既得権益にしがみ付き、また富の偏在が進むことで貧困から抜け出せない若者がたくさんいる。若年層の中には糊口を凌ぐため手段を選ぶ余裕のない者もいるのは間違いないと思う。

 ただ「ため込んで使わない高齢者からお金を引き出し、社会に循環させることで貢献している」という彼らの理屈には納得できない。実際には「ヤミ金」にしても「オレオレ詐欺」にしても、貧困層同士が食い合っているようにしか見えない。

 そういう目的であれば本物の富裕層から「合法的に」資産を引き出す方法を考えるべきであろう。

 

 

 

【オススメ度】

 ★★★☆☆

 

日本再興戦略

 日本の「強み弱み」を分析し、近年の技術革新を視野にいれた「日本再興」のグランドデザインを提案すると謳う本です。内容的に浅い感じが否めませんが、アイデアとして面白い部分もありました。

 

【作者】

 落合陽一

 

【あらすじ・概要】

 ざっくり拾うと以下のような内容。

 

 ・「欧米」というけど欧州と米国は違うし、それは幻想だ。

 ・「西洋的」な分かりやすさと「東洋的」な思想は違う。

 日本は八百万の神を奉じる多神教だから中央集権に向かない。

 ・江戸時代には士農工商制度もあったし、カースト的な身分制は日本に会う。

 ・士農工商のうち、ゼロサムで価値を生まない「商」が最下位なのは納得。

 ・「百姓」は百の仕事をするという意味で、仕事に多重性があった。

 ・自動翻訳が進化すると英語力より論理的な話をする能力が需要になる。

 ・自動運転の進歩で移動時間の捉えられ方が変わる。路線価なども変化する。

 ・レイテンシの少ない5G 通信の普及で医療や介護分野への採用が進む。

 ・自動運転でも独立型より通信型が主体となる。

 ・人口減少期なので機械による労働機会の損失は大きな問題にならない。

 ・日本の高齢化ソリューションは他国に売れる。

 ・トークンエコノミーによる地方自治体の活性化。

 ・トークンエコノミーによる、プラットフォーム独占への戦い。

 ・日本が成功すると隣国が侵略するから自営軍が必要。

 ・侵略者は悪なので非人道的な機械兵器も許される。

 ・民主主義思想と民主主義制度は分けて考える。

 ・リーダー2.0 は共感力があり弱点を補いあえる。

 ・職業のポートフォリオを考えるような教育。

 ・アートを教育に組み込む。

 ・「ワークライフバランス」より「ワークアズライフ」が日本に会う。

 ・兼業解禁をする一方、解雇はしやすくするべき。

 ・付加価値を生まないホワイトカラーおじさんを守りに使う。

 ・年功序列から離れるべき。

 ・日本に男女平等は合わない。仕事に合った男女比率を考える。

 

【感想・考察】

 教育については著者自身の経験もあり面白いし、自動運転やブロックチェーンの話などは楽観的過ぎるが提言として面白いと感じる。ただ国防、民主主義などについては非常にお粗末だと感じた。「戦略」として総花的に語るより、著者自身が強みを持つ部分に集中したほうが有益な本になるのではと感じた。

 

【オススメ度】

 ★☆☆☆☆

 

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