《新装2017》本好きのための Amazon Kindle 読書術:電子書籍の特性を活かして可処分時間を増やそう!
【作者】
和田 稔
【あらすじ・概要】
読書をより効率的・効果的にしていくための、Kindle 活用方法。
なぜKIndelが優れているのか、紙の本と比べて何が良いのかという点で、
・かさばらず複数を常に持ち歩ける。
・隙間時間を利用して読書量を増やせる。
・ハイライト編集などソーシャルメディアとの親和性が高く、外部発信がしやすい。
・iOSや Android などの機能を利用し、オーディオブックとして使うこともできる。
などが挙げられていた。
特に、メディアマーカや Evernote などとの連携で、読書記録を残すことや Kindle for Mac や Kindle for PC などを使って様々な文書を Kindleで読んだり、記録を編集したりなどのテクニックが紹介されていた。
【感想・考察】
すでに9割以上は Kindle での読書となっているので、作者の主張はよく理解できる。Kidnleを使うことで隙間時間を有効利用し、読書量を増やすことに繋がっている。一方で Kindleならではのネットワーク連携機能などを十分活用することはできていなかった。ハイライトの編集などは試してみようと思う。
また、OS機能で画面の読み上げができることには気づいていなかった。オーディオブックは便利だが、発売されている書籍がごく限定されているので使う機会は少なかったが、この機能を使うと Kindleの本であればほとんどが音声読み上げで聞くことができる。早速試している。(iOSの場合、設定→一般→アクセシビリティー→スピーチ→画面の読み上げ on としてから、読み上げたい本の画面で、画面の上から下まで二本指スワイプで起動した)
音声読み上げの情報だけでも読む価値のある本だった。
彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?
【作者】
森 博嗣
【あらすじ・概要】
近未来、人工細胞により人間がほぼ不老不死となるのと引き換えに、生殖能力を急激に失いつつあった。一方、人造人間である ウォーカロンは最初は機械で作られていたが、徐々に人工細胞が用いられ ほぼ全身が有機物となるにいたり、人間とウォーカロンの境が曖昧になってきた。
主人公である 研究者ハギリ は人間のとウォーカロンの思考の違いから、ウォーカロンを識別する装置を開発していたが、何者かに命を狙われた。続けて人間の生殖力減衰についての研究をしていた生物学者のアリチ博士も毒殺されかける事態となった。
ハギリはボディーガードである ウグイ に守られながら、地下に隔離され研究を続けていたが、動物学者であるチカサカや、生物学者のリョウと話をする機会を得て、自分の研究が狙われる意味や、自分の命を狙う者たちの意図に気づいていく。
【感想・考察】
森博嗣の作品らしく、超絶理屈っぽい学者の視点から世の中を描写していく。人間が死を失い、世代交代のない世界で永遠に生きたらどうなるかという舞台装置も、作者独特の世界観にマッチしていた。人工知能が進歩していったら人間の知能とどう区別できるのか、肉体までが有機物で作られるようになったら、人間と区別することができるのか、そもそも人間の独自性はそれほど貴重で重要な者ではないのではないか、という疑問が提示されていた。人工知能が飛躍的に進歩している昨今ではリアリティーを感じられる話だった。
マガタと思われる人物が登場していたのは、S&Mシリーズが大好きだった私には嬉しい。この作者の世界観や理屈っぽい言い回しが嫌いでないなら、面白い本だと思う。
想像して想像する 望み通りの未来を創るイマジネーション力
【作者】
尾崎 里美
【あらすじ・概要】
Hypnotherapist(催眠セラピスト)として、セミナーなどを開催する作者の話。
前半は恵まれない環境からヘアアーティストとして頭角を表して事業を成功させた事や、その後海外への留学でセラピストとしての資格を取り、日本で事業の幅を広げたという自らの出自を語っている。
セラピーの内容としては「自ら強く思い描いたことは必ず叶う」という引き寄せの法則的な内容と、チャクラや呼吸法などの東洋医学的な思想を組み合わせたもののようだ。良いことも悪いこともイメージしたまま現実を引き寄せるので、悪いことは考えず、自分が望むものを既に叶ったように無意識に刻み込み、無意識の力が実現に引っ張っていく。
【感想・考察】
かなりの部分が自分語りではあるが、明るい文体で楽しく読むことができる。後半では波動やオーラの色など、少しオカルト的要素が混じってくるが、大凡はまともな話。軽く読むにはいいと思った。
バビロンの大富豪「繁栄と富と幸福」いかにして築かれるのか
【作者】
ジョージ・S・クレイソン
【あらすじ・概要】
古代バビロニアから出土した粘土板に刻まれていた、富を増やすための法則が説明される。大富豪となった幾人かの人生譚の形で、ストーリーに乗せて語られる。
そこで語られる五つの法則は、
① 収入の十分の一を自分のために取って置き、残りの収入で生活を回す。
② 自分のために貯めたお金の働き口を見つけ、家畜の群れのように増やしていく。
③ 富を増やすことに長けた智者の智恵を授かる。
④ 自分の知らないことや、富を増やすのに長けた人が認めない方法は取らない。
⑤ あり得ないような利益を産むような方法は取らない。
の5点に集約される。
また、仕事は人生の友達であり、勤勉に仕事に取り組むことは、必ず身を助けるとしている。
【感想・考察】
そもそもが数千年前の古代バビロニアの話であり、この本の出版も数十年前になり、古い部分はどうしても感じるが、原理原則の部分では役に立つ話であると思った。貯めるべきお金は天引きで貯めていくことは今でも間違いなく有効だろう。
一方で金融商品がやたらと複雑化してしまっているので、智恵のあるものから意見を聞いて、有効な投資策を探すことは難しくなっているようにも思える。
証券会社、保険会社や不動産投資の営業は知識を持っているかもしれないが、投資者と、ある意味では利害が対立するので単純に信用するのは難しい。個人的な利害関係なく、十分な富を蓄える経験をした人と知り合う機会を作るのが必要かもしれないと思った。
また、奴隷制がベースであった時代に労働礼賛の気風があったことには感銘を受けた。為政者に都合の良いポジショントークという面もあるかもしれないが、労働を通じて資産を蓄え、充実した人生を送った人間に関わる史実であるとすると、実に興味深いと思えた。
ちなみに iBooks のオーディオブックで聞いたが、演者の声が多彩で感情に沁みるような話し方だった。文字を追うよりも声で聞く方に適した作品かもしれない。
千里眼 背徳のシンデレラ 完全版 (上・下)
【作者】
松岡 圭祐
【あらすじ・概要】
元自衛隊員の臨床心理士である岬美由紀がヒロインとして活躍する連作の最終作。もともと小学館から出ていた話を、全シリーズ全面的に改定して角川文庫から出版している。
本作は上下巻を合わせて1200ページを超える長編。前作で岬美由紀が倒した友里佐知子の半生が記された日記をベースに話が進む。
友里の祖母であった御船千鶴子は、無意識のうちに選択的注意集中を駆使して、情報を読み取り千里眼と言われたが、インチキ扱いされ失意のうちに死んでいった。戦時下で友里の母も国から危険視され不遇な生活を強いられた。終戦後、まだ幼い友里は米兵相手の幼女売春で生活の糧を得ていたが、世界の歴史を操ってきたメフィストコンサルティングのゴリアテと出会い、徐々に運命を変えていった。国家に対する敵意が当時の日本の反体制運動に惹かれていった。
ゴリアテに導かれ、メフィストの幹部候補として育てられ、特殊な技術を身につけたが、やはり日本政府に対する敵意は消えず、メフィストを離れ既に下火となりつつあった学生運動に参加していった。
メフィストは心理観察や催眠の技術に秀でていたが、友里が身につけた特殊技術として人の前頭葉を一部削除することで、通常の催眠では行わせることができない、被催眠者の意思に逆らう犯罪や自傷行為をも行わせ、メフィストの裏をかき歴史を翻弄していった。
3億円事件やよど号ハイジャックなど、昭和の歴史にあった出来事をアレンジし、都市伝説的に語られていた内容も取り込んで、独自のミステリとしている。
友里が自分の影武者であった女性の娘を 鬼芭阿諛子 として育て、前頭葉を削除した兵隊を多数作り出し、日本を転覆させる計画の直前で、岬美由紀の止められ世を去った。鬼芭阿諛子は母の意思を継いで日本政府の転覆を謀り、岬と対決する。
【感想・考察】
耐震基準偽装建築などの時事問題や、GPSの精度の話など豆知識系の話が詰め込まれた、いつもの松岡流の展開だが、細かい部分まで伏線として回収され尽くしているのは驚いた。キーとなるミステリ部分で、前頭葉削除された意思のない共犯者がいる展開だけは興ざめで、展開に荒唐無稽なところが多すぎる気はするが、まあ、いつものように楽しめた。
選択的注意集中で観察力は高まるが、本能に依存する能力なので本能的に拒否しているものは見えない、ということが一つのキーになっていた。見たくないものを見ることは自分の心の弱さを直視することに繋がる。友里も阿諛子 も自分の弱さに気づけなかったが、岬美由紀にはその強さがあったということだろうか。同じような能力と意思の強さを持ち、同じように為政者に失望することもありながら、善く生きようという意思を失わなかった美由紀をヒロインとして描ききっている、
千里眼シリーズを読んできた人であれば楽しめる作品だが、
未読の人にはちょっと取っ付きにくいと思う。
64(ロクヨン)上・下巻
【作者】
横山 秀夫
【あらすじ・概要】
バリバリの刑事だった主人公が警務部の広報官となり、刑事部と警務部、警視庁と現地の警察署の権力争いに翻弄されつつ、自らの職業倫理や家族との関係を見つめ直していくストーリー。
醜形妄想に蝕まれた主人公の娘の家でと、14年前の昭和64年に発生した未解決の誘拐事件(符丁としてロクヨンと呼ばれる)、そして新たに発生したロクヨンを模した誘拐事件が重なり合っていく。
【感想・考察】
導入部では主人公の娘の失踪事件がメインになるのかと思ったが、中心は警察署内の権力闘争を描く部分だった。
警察には本当にここまで強烈な派閥争いや権力闘争があるのか分からないが、20万人を超える巨大な組織であり、危険に接することもある軍隊にも似た組織な分、明確な命令系統の存在があり、権力が強大になるのかもしれない。デフォルメされている部分もあるとは思うが、平和な民間企業で働いていると実感としては伝わらず、感情移入できなかった。
ただ、主人公が今の職業への取り組みで覚悟を決め、警察広報部とマスコミ記者クラブの間に信頼を取り戻すシーンには深い感銘を受けた。
複数の事件が起こり、多数の登場人物があるのにも関わらず、すっきりと頭に入る分かりやすい文章だったが、ミステリとしてひねりがあるわけではなかった。
評価の高い作品ではあったが、読む人を選ぶ作品かもしれない。権力闘争などの人間ドラマを見るのが好きな人には会う先品だと思うが、事件解決のスッキリ感を味わいたいミステリ好きには合わないかもしれない。
ぼくたちに、もうモノは必要ない。
【作者】
佐々木 典士
【あらすじ・概要】
ミニマリストとして情報発信している 佐々木氏の著作。幅広い見方からミニマリスト的な生き方を推奨している。
モノを溜め込んでしまうのは、人がモノに飽きるから。人は絶対値ではなく差を認識するので、欲しかったモノに囲まれていても昨日と同じであれば飽きてしまう。また、人は周囲の人から認められることを渇望しているが、内面を伝えるのは難しく、モノの持ち方で、センスや財力を表現しようとしているところもあると述べる。
一方で人のハードウェアとしての処理能力は数万年に渡って大きな変化はなく、モノに囲まれ、情報が溢れている現代で人はオーバーフローを起こしているという見方をしている。使っていないモノからも常にメッセージが発っせられている。脳のメモリを極力フリーにしていくべき。未来に備えるのでもなく、過去の思い出にすがるのでもなく、今を生きることに集中する。
人の目線で手に入れたモノ、必要ではなく欲しいから手に入れたモノ、使っていないけど捨てにくいモノを手放していくことで、身軽になり自尊心を回復することができる、と単なる生活の仕方ではなく、生き方としてのミニマリズムを提唱している。
【感想・考察】
ミニマリストと言われる人には、所有するものの数は少なくても、持っているモノに対するこだわりは大きい人も多いように感じる。モノを持ちすぎる人もミニマリストもある意味、モノに執着しているのかもしれない。モノを減らして日常を身軽にしたいという考えには単純に賛成だし、余計なものを持たず身軽に生きることには憧れる。
思ったよりも良い本だった。