グリーンボーイ・アッパータイム
ちょっと読みにくい文体なのですが、慣れてくると独特の勢いを感じます。
【作者】
小林オヲイ
【あらすじ・概要】
3編の短編小説集。
・電話
女性からの電話を待ち続ける男の話。繊細過ぎる感受性を持つことの、息苦しさが描かれる。
・KEY TO THE HIGHWAY
バラックに住んでいた男が、妻のアローネから離れ、ビリジアン色の車に乗って「古門」を目指す。ガス欠で立ち往生した場所で、同じく「古門」を目指してた チエ嬢と出会い、一緒に旅をする。途中に通った集落で「魔女」であると疑われたチエ嬢は捉えられ、男も諮問に掛けられ監禁される。男はチエ嬢に助けられ、一緒に集落を抜け出す。チエ嬢は恋人のアロンから離れ「古門」を目指すに至った過去を男に打ち明け、集落からの脱出のために自らに課した禁を破り、その償いのためこれ以上一緒に旅はできないと告げる。
男は一人「古門」を目指し、車を走らせる。
・対話篇「パブリテス」
親友に貸した金を返してもらえないだけで、胸の悶えを抑えることができないパブリテスは、師であるオウニポテレスに尋ねた。
師オウニポテレスは、真の強さとは「主体的人生を生きること」にあり、主体的人生に置ける強さは、「鈍さ」と「無知」にあると言う。
人生には「人間は必ず死ぬ」、「人間は何かのために生まれてくることはない」、「宇宙はひとりひとりの人間に全く興味がない」という3つの絶対的真実がある。「人は自らの信念に基づいて生きることが許されている」ということであり、自分に関心を持たない宇宙に対しある種の「退屈」を感じながら、内在するものについて得られる満足感こそがが「しあわせ」であるとする。こういう態度は「鈍く」、「無知」であるよう見えるが、外部から崩すことができない強さを持つと言う。
【感想・考察】
最初の「電話」は、意図的に「気味の悪さ」を描いているのは理解できるが、なんとも読みにくい。「KEY TO THE HIGHWAY」と、対話篇「パブリテス」は、アイロニーが効きすぎているが、それなりに面白かった。
【オススメ度】
★★☆☆☆