Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

足音にロック

【作者】

 奥田徹

 

【あらすじ・概要】

  ブラックな職場で働く主人公福岡は、ある時から自分に迫ってくる「死の足音」が聞こえるようになる。「息継ぎもせずに走り続けるような毎日」を惰性で過ごして居たが、少しずつ日常が動き出す。

 両親が離婚しかけニグレクトされている隣室の少年「心」が自室にやってきて、長らく失っていた「人と一緒にいる」感覚を味わったり、職場の地味な女性「馬乃石」さんが、街の雑貨店で自然で美しい笑顔を見せていたり。

 ある日無くなった財布が交番に届けられ拾いにいくと、無くした以上のお金が入っていた。届けてくれた女性「鈴音」さんに誘われ、今まで経験したことがないような、高級レストランや上流社会の社交場で、未知の世界に触れていく。

 馬乃石さんや心との交流で「僕はどこかへ行くことが出来る。何かを選ぶこともできる」と感じていく。

 

【感想・考察】

 冒頭の一節が好きだ。

 『漠然としたイメージだけど、「丸くて温かくて柔らかなもの」を大事に抱え、それが「壊されないように」と、僕は願う。

 純粋な物が傷つけられることがないまま、どうか幸せであって欲しいと。例えば、バス停で見かけたベビーカーの中にいる赤ん坊の柔らかな笑顔や、暖かな日差しに目を細め座っている犬。少し背伸びしてオシャレした少女の今日への期待。反応を期待して家族へお土産を買うサラリーマン。それらが、どうか「温かなもの」として、決してきずつけられませんようにと。』

 息苦しい日常に追い詰められながら、傷つきやすい「温かいもの」を必死に守って生きて行く主人公たちは逞しく美しい。

 「ラブ&ピース&フリー、僕たちは自由だ、ロックンロール」という「呪文」は心に残る。

 

崩れる脳を抱きしめて

【作者】

 知念実希人

 

【あらすじ・概要】(少しネタバレ)

 研修医として葉山の病院に派遣された碓氷(ウスイ)が、悪性脳腫瘍であるグリオブラストーマに罹患し、余命数ヶ月とみられる 弓狩 環(ユガリ タマキ)と出会う。「ユガリでは言いにくいから、ユカリと呼んで」という彼女と、ウスイのラブストーリー。

 ミステリとしては、「ウスイの父の失踪についての謎を解く第1章」、「彼女の死の真相を暴く第2章」の2部構成としつつ、両編をつないで恋愛物語が紡がれる。

 

1章 ダイヤの鳥籠から羽ばたいて

 ウスイの父は、愛人の元に走り自分たち家族を捨て、外国から絵葉書を送った切り失踪し、1年後に山から転落して死んでいた。ウスイの母は苦心して彼と妹を育ててきたが、ウスイは貧乏に復讐するように金を稼ぐことに執着し、身体を壊す限界まで勉強し、脳外科として海外で経験をつむことを目指していた。

 膨大な遺産を相続したと言うユカリは、自分の死後にウスイの借金分を贈与することを申し入れるが、彼のプライドを傷つけてしまい、二人の仲は壊れそうになるが、ユカリと同時期に入院し、ユカリと同じく脳に危険な病気を持つ朝霧由(アサギリ ユウ)という女性の中立もあって関係を取り戻す。

 十分な資産を持ち高級な病室にいるユカリも、外出恐怖症で病院から出ることができず「ダイヤの鳥籠」に閉じ込められている、と言う。ウスイは彼女を図書館に連れ出し、恐怖を克服させた。また、ユカリも、父へのわだかまりに縛られているウスイを解放すべく、ウスイの父が失踪した事情を探り出していく。

 1ヶ月の研修期間を終えたウスイは、病院を離れる前にユカリに思いを伝えようとするが、ユカリは「自分は幻だ」といって、告白させることを拒み、環という名で呼ぶことも許さなかった。失意のウスイは広島に戻る。

 

第2章 彼女の幻影を追いかけて

 広島の病院に戻ったウスイは、腐れ縁の続く同僚の冴子に煽られ、葉山のユカリに会いにいくことを決意するが、出発の直前に「弓狩 環は亡くなりました」ととある弁護士から聞く。ただ弓狩環が死んだ場所は葉山から離れた横浜で、外出恐怖症も彼女が何故離れt場所にいたのか疑問に思い、生前のユカリの言動から本当に病気で亡くなったのかも確認したく、ウスイは再び、葉山・横浜に赴く。

 弓狩環は死の直前に遺言状を書き換えていたことが分かり、彼女の死の前の思いを実現させるべく、ウスイは無くなった遺言状を探し歩く。調べるうちに、弓狩環が愛した紅茶店のマスターに出会い、死の瞬間には彼の腕の中に居たことを知り、嫉妬とともに安心感を覚える。

 その後さらに調べていくうちに、彼女の死の真相と、自分からユカリを引き離した「黒幕」の存在に気づき、ウスイは黒幕と対峙する。

 

【感想・考察】

 「死神シリーズ」に出てきたホスピスも登場し、黒猫とゴールデンレトリバーの出迎えを受けたりもしているが、死神や天使の登場はなく、純粋な人間同士のラブストーリーだった。作者が医師であることも一因かもしれないが、死を常に意識し、その裏返しとして生きることの尊さを賛美している。人が人を大切に思う気持ち、苦しくてもまっすぐ真摯に生きていこうとする姿勢に心が動かされる。

 

ファイアスターター湯川さん

【作者】

 永田栄一

 

【あらすじ・概要】

 主人公が管理をしてる古い木造アパートに、パイロキネシス(発火能力)を持つ女性 ”湯川四季”が入居した。前半では、壊れた風呂を沸かしたり、雪合戦でズルをしたり、アパート住人達との交流が暖かく描かれるが、途中 ”右腕の無い青年” 溝呂木が登場し、湯川さんの過去を明かしてから、物語は急展開する。

 

【感想・考察】

 いかにもラノベ的な展開ではあるが、溝呂木青年のノワール感あふれる造形など、描写がとても上手な作者だと思う。途中で暗く重々しい雰囲気になりながら、最後は暖かくまとめられていて、読んだ後に清々しい気持ちになる。

 

福家警部補の挨拶

【作者】

 大倉崇裕

 

【あらすじ・概要】

 4編からなる短編集。最初に犯行の描写があり、その犯行がどのように暴かれていくかを、犯人の視点から描く倒叙形式のミステリ。小柄で「刑事に見えない」と称される福家警部補が、卓越した観察眼で事件を解決していく。

 

・最後の一冊

 本を愛する図書館の館長雨宮が、図書館を閉鎖しようとしているオーナー江波戸を深夜の書庫に誘い込み、高価な本を盗み出そうとした罪を着せつつ事故に見せかけ殺害する。福家警部補は現場で見つけた違和感から、殺人事件として捜査を進めていく。

 

・オッカムの剃刀

 頭蓋骨から生前の顔を予測し復元する「復顔術」のエキスパートである大学講師柳田が、同じ大学の准教授池内に、ある過去の出来事をネタに脅されていた。柳田は「たまたま夜道を歩いていた池内が、周辺で多発していた連続強盗に襲われ殺された」ように見せかけ殺害する。かつて柳田から犯罪学の講義を受けたこともある福家は、彼が何重にも準備した仕掛けを暴き、柳田が隠したかった過去の出来事を調べ上げていく。

 タイトルの「オッカムの剃刀」は「もっともシンプルな仮定から検証をし、それが不可能であれば次にシンプルな仮定を考える」という話。

 

・愛憎のシナリオ

 女優のマリ子は、同業である女優の恵美にスキャンダルを掴まれ脅されていた。マリ子は排気ガスによる一酸化炭素中毒事故に見せかけ、恵美を殺害する。福家は恵美のへやで感じた違和感をもとに幅広く捜査を行い、マリ子の犯行とその本当の動機を暴いていく。

 

・月の雫

  谷元は「良い酒を造ること」を追及する酒造会社の社長だが、機会による量産で「安かろう悪かろう」の酒を造る佐藤酒造に買収されそうになっていた。谷元は佐藤が醸造蔵に忍び込み、技術を盗もうとして事故死したように見せかけ、殺害する。福家は驚異的な酒豪であることを見せつつ、事件の真相を暴いていく。

 

【感想・考察】

 犯人の立場から書く倒叙形式ミステリは、探偵側から事件解決を描く普通の形式よりも「怖さ」を感じる。罪を犯してしまった自分が追いつめられる状況の方が、感情移入しやすいということなのだろう。小学生の頃に読んだ江戸川乱歩の「心理試験」はとても怖かった記憶がある。

 この作品は犯人が残した「ミス」が比較的わかりやすく書かれており、それほどの「怖さ」は感じなかったが、追いつめられる切迫感を味わうことができた。

 また無表情ながら超人的な体力と卓越した捜査能力で 犯罪を暴く福家警部補というキャラクタもなかなか面白かった。

 

 

明日死ぬかもしれないから今お伝えします

【作者】

 サトウヒロシ

 

【あらすじ・概要】

 大人向けの絵本。

ある男の前に死神が現れ、「明日あなたの命をもらう」と言う。男は最後に手紙を書く機会をもらい、愛する人に感謝の言葉を綴っていく。最初は「なぜ自分が死ななければならないのか」という戸惑い憤りが強いが、徐々に感謝の気持ちが溢れ出し、愛する人と一緒に「生きたい」という強い気持ちに繋がっていく。

 

【感想・考察】

 人はいつ死ぬか分からない。それでも時間は無限にあると感じ、大切な人との関係に緊張感を持てない。「一期一会」の気持ちで、常に相手を大切にしていきたいと感じた。万年筆の絵は独特だが、こういう本は電子書籍ではなく、紙の本で読みたかった。

 

セカンド・ラブ

【作者】

 乾 くるみ

 

【あらすじ・概要】

 出会いの一年後、結婚式のシーンから始まる。

 主人公の正明と春香は、友人に誘われたスキーで出会う。正明は春香に惹かれるが、自分とは釣り合わない縁のない人として諦める。しかしながら数日後、春香から連絡を受け、二人は徐々に親しくなり、結婚を前提とした付き合いを始める。

 ある日街を歩いていると、春香が水商売の女性と間違われる。正明は春香に似た女性が気になり、その人が働く店を訪れ、春香に似た美奈子と出会う。正明は春香を大事に思いつつ、上品な春香と似た外見ながら、奔放な性格の美奈子にも惹かれていく。

 

【感想・考察】(少しネタバレあります)

 イニシエーション・ラブ」の時は、叙述トリックだということも、ミステリだということすら知らずに、なんだか退屈な恋愛小説だと思って読んでいたので、ラストには驚かされた。本作は「叙述トリックなのだろうな」という見方で読んでいたので、「二人は同一人物」というのは予測できた。ただ序章と終章の正明の視点はもう一つのネタとして驚かされた。

 春香の行動の動機が見えず、正明のクソ真面目な重さと重なって、読後にスッキリしない感じは残った。「イニシエーション・ラブ」のようにラスト数行でひっくり返す部分はあったが、主要部分は春香たちの説明的なセリフで伝えられたのも少し残念。

 そうはいっても、叙述トリックということが分かっていても、十分に楽しめる作品であったのは素晴らしいと思う。何の事前知識もない状態で読めれば幸せな作品。

 

現役東大院生3人が書いた 絶対に目標を達成するための3つの目標設定テクニック

【作者】

 くろまあくと

 

【あらすじ・概要】

 目標を達成させるための3つのテクニックを説く本。

 

 ①主体的な目標にする

 自己コントロール感がモチベーションを高める。

 例えば「昇進のためにTOEICで900点を取ること」だけでは達成は難しい。

 いくつか追加の動機を作ってしまうことは有効。例えば、「達成したら欲しかったPCを買おう」とか、「休みを取って旅行に行こう」とか。

 

 ②具体的な目標にする

  期限を切る、実際の試験日を意識して、計画を立てる。旅行をご褒美にするなら、旅行の計画を具体的に立てるなど。

 

 ③ニアーゴールを設定する

  1年後の目標のために頑張り続けることは難しい。今週中にこの参考書を終わらせる、今日中に単語50個を覚えるなど、目先の具体的な目標に落とし込み、細かく達成感を得るようにする。 

 

【感想・考察】

 目標設定が大事だという認識はあったが、この本ではごくシンプルにまとめられていて、実践しやすい内容だった。大きな目標を持って自分を引っ張ることも必要だが、具体的な事柄に落とし込み、「今」の活動につなげていくことが必要なのだと感じた。