Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

伝説のプレゼンターへの道!

【作者】

 三谷 宏治

 

【あらすじ・概要】

 BCG、アクセンチュアといったコンサルティングを経て、現在は金沢工業大学虎ノ門大学院の教授として、子供・親向けのセミナーを手がける著者による、プレゼンテーション技術についての本。

 BCG時代、プレゼンが苦手だった著者が学んで行った方法から説明。

 ・読んで分かるだけではなく、聴いて分かるよう話してみる。

 ・最初は脚本を作り丸暗記するつもりで。徐々にポイントだけをメモるようになる。

 ・アウトライン機能を使い、まずはプレゼンテーションの構造を考える。

 ・フォントサイズ縛り(ミニマム18ポイント)で1行30時前後におさめる。

 ・編集性の高いデータとする。他の誰かに編集されることを想定する。

 ・アニメーションの使い方は各スライドで統一する。図はフェード、文字はダウンなど。「ここぞ!」という箇所でタメを作るために違うアニメーションを使うのはいい。

 ・「場」の支配が大事。掴みの技術を身につける。バラバラの期待をコントロールする必要もある。

 ・声の影響は大きい。倍音を響かせるような話し方で「通る声」を心掛ける。

 

【感想・考察】

 Power Point の使い方から通る声を出す方法まで、極めて具体的な説明が盛りだくさんで、実践的に役立つ本。短い本だが内容が詰まっていた。

 

蘇る殺人者 ー天久鷹央の事件カルテー

【作者】

 知念 実希人

 

【あらすじ・概要】

 連続殺人犯が現場に残したDNAを調べると、ある男性と兄弟の関係にある人物だと判定された。しかしながら、その男性の唯一の兄弟は4年前にすでに死亡していた。その死亡確認を行った鷹央に警察の確認が来たことで事件に関わっていく。

 亡くなった兄の遺体は、母親が当時入信していた「死者をも蘇らせる」という宗教団体に引き取られたことが判明する。鷹央は、死亡診断のミス、患者のすり替えなど、あらゆる可能性を考えるが、犯人に至ることができない。

 快楽殺人者である犯人による「次の犯行」がいつ行われるか分からず、死亡判定のミスの可能性も考える鷹央は、強い責任を感じ憔悴していく。

 

【感想・考察】

 知念氏の作品にはいくつかのラインがあるが、この天久鷹央シリーズが最もラノベよりだろう。キャラクタ同士の掛け合いなど軽い要素も多く、気軽に読める。それでも初期作品と比べると「犯人が犯行に至った過程」や「鷹央自身が抱く自分の能力への不安」など、内容が重めになっている気はする。非常に完成度が高い作品だと感じた。

 

凡人を達人に変える77の心得

【作者】

 野村 克也

 

【あらすじ・概要】

 野村克也氏が、野球選手・監督として成功するにあたって大事だと考えていた心得を77あげている。

印象に残ったのは以下の項目。

・「テーマのない努力」は無駄になる

 努力そのものを目的にしても結果は出ない。「練習の過程で成長のヒントを見つける」ことを意識し、漫然と繰り返すのではなく、頭を使っていく。

 

・夢の実現のために「現実主義者」になれ

 野村氏はテスト生としてプロ野球に入団したが、憧れていた巨人ではなく「同年代で活躍しているキャッチャーがいないこと」を条件に希望球団を選んだ。現実的な戦略から糸口を掴み、大きな成功につなげている、

 

・「小事を大切にする」精神を持つ

 成功する人とできない人の差は小さい。細かいことに気がつけるかどうかが重要。

 

・不器用は器用に勝る

 才能があり簡単にある程度のレベルに到達してしまう器用な人もいるが、不器用であるからこそ克服のために、頭を使い努力を重ねることで最終的には器用な人間を追い越すことも良くある。

 

【感想・考察】

 データを重視し、弱点を克服し、上手くいかない人をすくい上げ、チームをまとめた監督として名を馳せた野村氏らしい著作。野球をベースに語っているので一般社会で全て当てはまるわけではないが、野村氏の哲学には共感できることが多い。また野村氏はチームを導くため「伝える方法」を徹底的に学んだと述べている。この本を読むと非常に分かりやすく、氏の努力・創意工夫が活きているのだと実感した。 

 

「憲法改正」の真実

【作者】

 樋口 陽一・小林 節

 

【あらすじ・概要】

 憲法改正について、「護憲派」の法学博士である樋口陽一 と「改憲推進派」でありながら、「現状での憲法改正には反対」とする 小林節 博士との対談形式で語られる本。

 護憲派と改憲推進派の対談の形式をとっているが、現状では両氏ともに自民党が作成した改定憲法草案には反対の立場。

 「憲法は個人の天賦の権利を守り、権力者を制限することが目的」であり、「立憲主義」の歴史の中で育まれた人類の財産であるとに認識で、自民党の草案は「国民の権利を義務と組み合わせで認められるもの」とし、「権力者が恣意的に執行できる権力の範囲を拡大」するものだと見て反対の立場をとっている。

 樋口氏は明治憲法もよく考えられた良い憲法であり、当時の政治家も「立憲主義」を守るために最大限の努力をしていたとみている。1933年ごろ美濃部氏の天皇機関説が否定され、天皇の統帥権を傘に軍部が立憲主義を踏みにじった時期からの十数年間に政治がおかしくなったとしている。一方で現在の自民党で主要な位置を占める二世、三世の議員は、この十数年間に郷愁を覚え、当時の政治体制を再現したがっているとする。

 「家族」、「伝統」、「和」といった道徳を法に組み込もうとすることの危険性についても述べている。道徳を論拠とすることで反論を封じられる危険性に言及している。

 自民党は「緊急事態条項」を受け入れられやすい内容として、先に組み込もうとしているが、為政者の制限を大幅に取り払うこの部分はむしろ本丸ではないかと見ている。立法権と行政権の分離は近代政治の重要な要素だが、ここが損じられるとしている。

 また9条の改変について、樋口氏は「日本を戦争から遠ざけるために実質的に役に立っている」としている。小林氏は9条の改変自体は賛成の立場だが、個別的自衛権に限ることを明確に述べ、政府の暴走を防ぐことに意義があるとしてる。また、現状の自民党政権の行動を見ていると、この状況で変えるべきではないと判断している。

 すでに自民党は憲法を無視する動きに入っていて、「静かなるクーデター」だとしている。これはワイマール憲法を静かに覆したヒットラーと同じだと断じる。

 国民には「知る権利」があるのと同時に「知る義務」もあり、現在どのようなことが行われているのか知る義務があり、法学者は知らせる義務があると考えている。

 

【感想・考察】

 自民党の憲法草案が、「為政者の制限を軽くしようとしている」、「個人の人権を公益を前提としたものに格下げしている」、「法律に道徳による善悪を持ち込もうとしている」部分には気持ちの悪さを感じる。

 一方で樋口氏のロジックは、「改憲はとんでもない悪」だという前提で述べられており、では「現状よりもっと良くしていくためには何ができるのか」という観点が薄く残念に思った。

 日本国憲法は非常に良い憲法だと確信している。しかし、基本哲学を打ち出すだけではなく、具体的なプロセスまで踏み込んで定めている「法」である以上、現実の社会状況の変化に対し硬直的でありすぎるのは不便だとも思う。「天賦の権利として個人の人権を尊重する」、「三権は分立し制限を受けるべき」、「戦争の放棄」といった骨格部分は極力「硬く」しながら、その下の「法律」で、もう少し「柔らかく」運用することが必要なのかもしれない。

 

財布はいますぐ捨てなさい

【作者】

 金川 顕教

 

【あらすじ・概要】

  ものごとを成し遂げるためには、「なにをするか」よりも「なにをしないか」が大事だとする。

・「成功の方法を知る」よりも「成功の確信を高める」ことが大事だと言う。

・今の環境から新しい環境へ思い切って主軸を移さないと、中途半端に終わる。人には現状維持の引力が強くかかる。

・プライベートな時間に何をするかが大事。まずは、なんとなく過ごしている時間を減らし、夢の実現のために集中するべきとする。

・決断すると精神の力を消費する。自分の中に基準を作り、自動的に判断できるようにしておく。自分がしなくても良いことは極力外出ししていく。

 

【感想・考察】

 「財布はいますぐ捨てなさい」というタイトルはキャッチーだが、実際に財布についての話はあまりない。「現金主義よりカードの方がリスクが低いし、ポイントも貯まるよ」 という程度の内容だった。それよりも、何かを成し遂げるためには集中が必要で、そのためには人間関係も含め無駄なものは容赦無く切り捨てる強さが必要だという姿勢が、メッセージとして伝わって来る。ただ内容的にはオリジナリティーはなく敢えて時間をかけて読むほどの本ではないと感じた。

 

 

サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ

【作者】

 大崎 梢

 

【あらすじ・概要】

 「配達あかずきん」に続く、成風堂書店シリーズ。途中に番外編として「晩夏に捧ぐ」という作品もあり、発表順で言うと第3作。

 「配達あかずきん」と同じく、「杏子」と「多絵」が、成風堂の周辺で起きた事件を解決する連作短編集の形式をとっている。

 

・取り寄せトラップ

 4人から取り寄せを依頼された本が入手不可能で電話連絡をしたところ、4人とも注文はしていないと言う。同じ4名の名でまた偽の取り寄せ注文が入り、何者かが書店を利用しメッセージを送ろうとしているのではないかと思い至る。

 ある女性が店に現れ、「亡くなった祖父に関わることで知り合いが書店を利用しているかもしれない」と訴えて来る。多絵は4人の関係者の行動を読み、謎を解いていく。

 

・君と語る永遠

 社会科見学で成風堂に来た小学生の少年が、書店で使われる言葉に強い興味を示し、「広辞苑」にも関心を持つ。社会科見学のあとから、少年は時々書店に来て本を眺めるようになった。同じ頃、近所で年少者による幼女誘拐が発生しており、一人で行動することが多く、人間関係が不器用な少年が疑われてしまう。杏子と多絵は少年が書店に関心を持った理由に気づき、少年に伝えようとした永遠の願いを見る。

 

・バイト金森くんの告白

 成風堂でアルバイトをする金森くんが、飲み会の場で書店で恋に落ちたことを告白する。雑誌の譲り合いで知り合い、少しずつ話をするようになったが、彼女には長く付き合っている彼氏がいることを洩れ聞き落ち込む。ある日、雑誌の付録をもらうが「ストーカについて」の特集号の付録だったことから、ストーカー認定されたと感じ完全に打ちのめされる。多絵は金森くんの話を聞き、その矛盾に気づく。

 

・サイン会はいかが?

 成風堂書店で新進ミステリー作家によるサイン会が計画される。それほど規模の大きくない書店としては大きなチャンスだが、サイン会を開くための条件が、ミステリー作家の熱烈なファンである「レッドリーフ」が誰であるのかを調べ出すことだった。多絵は作者の元に送られたメモや、作者の過去の作品から「レッドリーフ」の招待に迫る。

 

・ヤギさんの忘れもの

 とある老人が成風堂のパート社員に写真を見せたいと持って来たが、パート社員はすでに退職したあとだった。落ち込んだ老人は帰り際に写真を忘れてしまう。多絵は写真のありかを推理し、思い出をつなげていく。

 

【感想・考察】

 書店での仕事の大変さが具体的に伝わって来る。前作と比べて、杏子、多絵や店長などのキャラクタが明確になり、掛け合いを見るのが非常に楽しい。多絵の頭の鋭さと性格のまっすぐさ、不器用さなどが魅力的に描かれている。

 全て書店に関するミステリーだが、「サイン会はいかが?」の暗号は実在しない本のタイトルをキーにするなど、暗号だけをいくら考えても解けないのは少し残念。

 最近は電子書籍ばかりだが、たまには書店に行って本を買いたいと思わされる本。

 

自由論

【作者】

  ジョン・スチュワート・ミル

 

【あらすじ・概要】

  19世紀初めのロンドンに生まれた功利主義哲学者による著作。功利主義的観点から自由論を語る。

 

 ポイントとなるのは以下の二つ。

・「個人は、自分の行動が自分以外の誰の利害にも関係しないかぎり、社会に対して責任を負わない。他の人々は自分たちにとって良いことだと思えば、彼に向かって忠告したり教え諭したり説得したり、さらには敬遠することができる。彼の行動に嫌悪や非難を表明したくても、社会はこれ以外の方法を用いてはならない」

・「個人は、他の人々が利益を損なうような行動をとったならば、社会に対して責任を負う。そして、社会を守るためには社会による制裁か、もしくは法による制裁が必要と社会が判断すれば、その人はどちらかの制裁をうけることなる」

 この二つを公理として、いかにバランスをとるかを語る。

例えば、「他人に迷惑をかけない限り、麻薬や賭け事を禁止すべきではないのか」、など現代でも討議されるような限界例を語る。ベンサムの功利主義論では、「父権的干渉」として人々が愚かな行為で自らを不幸にすることがないよう干渉することを認める方向に寄りがちだが、一方でミルは、自らが幸福を追求する「個性」を発展させることを提唱する。その上で、私的領域と公的領域を厳密に区分することを提唱し、例えば「賭け事で堕落した生活をするのは私的領域だが、子供の養育に障害が出るなら公的領域だし、賭博を開帳するのも公的領域」というように考える。

 

 「思想・言論の自由」についても功利主義的な観点から必要性を語る。

・発表を封じられることで真理が見つからないかもしれない。

・間違った意見だとしても部分的な真理を含んでいる可能性がある。

・世間一般で受け入れられる意見も活発な議論がなければ、大多数の人は合理的な根拠を知ることがなく、確信を持つことができなくなる。

 というように、利があるので「思想・言論の自由」は尊重すべきという立場。

 

 また、官僚組織が強すぎることにも警戒している。活発な意見のぶつかり合いがないところは停滞腐敗していくという考えから、官僚組織の外にも優秀な人材を配置し、相互が切磋琢磨していくような政治体制を理想としている、

 

【感想・考察】

 議会制民主主義が成立し、多数派による数の暴力が現実的問題となった時期の著作だからだと思うが、少数意見が封殺され「衆愚的」な 体制に陥ることに対して警鐘を鳴らしている。また、プロテスタントのキリスト教的道徳観が通底しているが、とはいえ盲信・盲従すべきではないと語る。

 おそらくミルが本作を著した時期よりも、現代の方が交通・通信が発達し、世界規模での平準化・没個性化が進んでいると思われる。また、優秀な知性の一極集中も歯止めなく進展している。「個性」のぶつかり合いが大事、間違った意見でも多様性には価値がある、という考え方は現代でも生きるのだと感じる。