Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

旅屋おかえり

【作者】

 原田マハ

 

【あらすじ・概要】

 “おかえり” の愛称で呼ばれるアラサー崖っぷちアイドル 丘エリカが主人公。

自身の失言で最後に残った仕事である旅リポート番組も打ち切られ、おかえり自身も所属する弱小プロダクションも窮地に立たされる。そんな折、「病気で自分は動けないが、おかえりに代わりに旅に行って願いをかなえて欲しい」という依頼が舞い込む。手配を代行する旅行代理店ではなく、旅行自体を代行する「旅屋」としての活動を始める。旅屋としての仕事は徐々に軌道に乗り始め、自分は旅が好きだということを再確認しながら充実した日を送るが、自分は「負けて逃げてきた」とも感じ、くすぶっている部分もあった。

 そんなある日、旅番組を打ち切ったスポンサーの会長から、番組再開の条件として「旅屋」としての仕事の依頼を受ける。勇んで受けたおかえりだが、その依頼は、彼女を支えてきたプロダクション社長の傷をえぐるような内容だった。おかえりは依頼元である会長の真剣な思いを感じ、仲間を失いながらも「旅屋」としての仕事に臨む。

 旅先で出会う人々、自分を待って「おかえり」と言ってくれる人々の暖かさに触れ、「旅屋」の仕事に誇りを持ち、続けていく決意をする。

 

【感想・考察】

原田マハの作品は登場人物のすべてが優しい。素直な気持ちで読めるので「ここで感動させてやろう、泣かせてやろう」というポイント作りが明確でも、まんまとはまって感動し泣いてしまう。。

私自身も旅をすることが好きだ。知らない場所に行って新しい経験をすることが楽しいが、やはり「おかえり」と言ってくれる人がいることで、心から楽しむことができるのだろう。

 

 

新装版 話を聞かない男、地図が読めない女

【作者】

 アラン・ビーズ、 バーバラ・ビーズ

 

【あらすじ・概要】

 男女の脳は胎児の時期に浴びた性ホルモンの影響で、先天的にプログラムされている部分がある。

影響の程度により、男性的・女性的な特徴が強く出る人と中間的な人が出てくるが、全体的な傾向として「男女の脳に違いはある」としている。

 

男性脳の特徴として、

・空間認識が得意。逆に周辺視野は狭く細かいことに気が付けない。

・マルチタスクはできない。考えるときは集中するために話したくない。

・問題を解決して目的を達成することを目指す。

 

女性脳の特徴として、

・周辺視野が広く細かいことに気が付く、色についての感度も高いが、三次元的な空間認識は苦手。

・左右の脳を繋ぐ脳梁が太く、マルチタスクに向く。話しながら考え事ができる。

・良好な人間関係を築くことを目指す。

 

というようなことが挙げられている。

 

また、性的マイノリティについてもホルモンと脳の関係から説明されており、例えば胎児の時期に男性ホルモンであるテストステロンを浴びる量が少ないと、器質的には男性であっても脳は女性的な特徴を持つことになる。性的マイノリティは後天的な選択であることもあるが、先天的な影響による部分もあるとしている。

 

【感想・考察】

 男女の違いの解説は、傾向としてはその通りだと思うが、ちょっとステレオタイプに過ぎるとは思う。

 

女性の会話は「解決を求めるのではなく、ただ話を聞いて受けれて欲しいのだ」という傾向はあるかもしれないが、本気で解決を求めて議論をしてくる女性もいる。そういう人に対して、相手が女性だから「解決策を示さずに話を受け入れた」というのは失礼になるだろう。

 男女の違いの傾向は確実にあり、それを認識することで良くなることもあるが、究極的には個々の相手をよく見て「個人対個人」を相互尊重することが必要だ。「日本人だから」とか「最近の若者は」とか、大雑把なカテゴライズは便利だが、個人ごとの差の方がよっぽど大きく影響するし、相手をよく見ることの妨げになる弊害もある。

 

 一方で性的マイノリティが「先天的な影響によるもの」だということが理解されるのは良いことだ。「後天的な選択」だとすると社会や教育などを含め偏見を持たれやすいが、肌の色などと同じ先天的なものに対しては理解されやすいのだと思う。

 

 

虫食いの家(うち)

【作者】

 森下くるみ

 

【あらすじ・概要】

 一時期はAV女優でもあった著者が赤裸々に自分の半生を綴ったエッセイ。幼少のころから東京に出て働き始めるまでの思い出を語る。

 

 秋田で過ごした幼少時代は貧しく、酔うと人格の変わる父との関係に苦しんでいたこと。

 故郷を離れ東京で一人暮らしを始めるのに、寂しさはなく開放感に溢れていたこと。

 東京に出てから父と再会し時々食事などするようになったが、距離は埋めることができず、良い「家族」の幻想を追うのをあきらめたこと。

 弟と母とはそれなりに良い関係を築けていること。

 

 特に幼少期は閉塞感のある暮らしをしていて、自分でも意味が分からず知人を石で殴ってしまうほど屈折していた。

 屈折した生き方を引っ張ってきた著者であったが、東京に出て、家族以外にも「自分を認め支えてくれる人がいる」ことを知り、自由を手に入れることができたのだろう。

 最後まで父との関係を回復させることはできなかったが、それを含めて自分を受け入れ、今では自分の子供を愛することができている。

 

【感想・考察】

 人格を形成するのに「家族」の持つ影響は極めて大きい。捻じれた家庭で真っ直ぐ育つことは難しいだろう。

 著者の場合は一時期家族から離れたことがまず良かったのだろう。そこで自分が活躍できる仕事と出会えたことも幸運だったのだと思う。

 

 著者の幼少委の家の近所に、違う種類の不幸を抱えた家庭が集まっていたのも印象的だ。

 貧乏という最大公約数はあるが、貧しさが不幸の原因なのか、結果なのかは分からない。

 

 いずれにせよ、閉塞した世界から抜け出すことができたストーリーとしてみると、希望を感じられる。

 

カリスマ同時通訳者が教える ビジネスパーソンの英単語帳

【作者】

 関谷英里子

 

【あらすじ・概要】

 同時通訳者である作者が、日本人が使いがちな平易な英単語を、ビジネスで使える単語に置き換えた60例を紹介。著名人の重みのあるスピーチも文法などが特別なのではなく、使われる単語が高度だとしている。

 構成は以下のような感じ。

 ・日本人が使いがちな単語(例: Tell、Say)

 ・より適した表現(例: 何かを教えるような場合には Share)

 ・いくつかの例文と、この単語を使った著名人の文章

最後の方には、文章としての例(What is your Problem? は失礼!など)や、握手やプレゼントなど、ビジネス習慣についての解説も入る。

 

【感想・考察】

 ビジネスで日常的に英語を使うような人に適した本。

 中国人や韓国人などと英語で話すときはお互いが母国語ではないので、極力平易な単語を使うことが多かったが、英語ネイティブと仕事をするようになると、使われる単語が高度になってくるし、単純な言い回しは幼稚に感じてしまう。紹介された単語自体は難しいものではなく聞いた時に意味は分かるが、自分で話す時には自然には出てこない。例文を意識して真似ることから始めて、英語表現のレベルを上げたいと思う。

 

ビジネスマンのための「読書力」養成講座 小宮流 頭をよくする読書法

【作者】

 小宮一慶

 

【あらすじ・概要】

 読書は論理的思考力を高めるために役立つとしている。

What(現象として何が起きているのか)→ Why(なぜそうなっているのか)→ How(そのことを自分の問題にどうあてはめていけるのか)

という考え方をすることが必要。そのための、読み方と推奨する本を紹介している。

 

 読書を速さではなく、目的に応じて5種類に分けている。

①速読

 「情報を得るため」に要点を拾い読みする方法。

対象分野についてある程度の知識がないと難しい。速読は「頭をよくする」ことには繋がらない。ミーティングの前の限られた時間で情報収集をする場合や、新聞を読む場合などに適している。

 

②通読1

 「読書を楽しむため」、最初から最後まで通し、メモなどは取らずに読む。

必要な知識を得ながら大枠を掴む読書。純粋に楽しむための小説や各分野の入門書などが適している。「仮説」を持って読むことで、その「検証」に意識が向かうのでより深く読むことができる。

 

③通読2

 「論理的思考能力を高め、一流の人間の知識や思考方法を学び取るため」、深い論理的思考を持って書かれた質の高い本を、ライン引きやメモなどをしながら、じっくりと読み込む。

自分の論理的思考力より高いレベルで書かれた内容は理解が難しいが、時間をかけ読み切る努力を繰り返すと、自分の論理能力も向上して行く。質の高い本を選択することが重要。経営・会計・マーケティング・HRなどについてそれぞれ推奨する本を紹介。

 

④熟読

 「論理的思考力をさらに高め、各分野で十分なレベルの理解を得るため」、本の脚注や参考書籍なども読み込み、最新のデータなども参照しながら、論理をしっかりと追い、What→Why→How の分析をし、関連づけをしながら、広く深く読み込む。

一冊の本を通読する必要はなく、重要な部分、興味のある部分だけを深く読み込んでも良い。観念的な本よりは論理的な本の方が適している。ある分野について30時間ほどかけて数冊の本を熟読すれば、その分野について専門家と対等に話すことができるレベルに達することができる。

 

⑤重読

 「意識を高め、人間としての成長を促すため」良い本を繰り返し何度も読む。

知識を得るためではなく、自分の生きる姿勢を正してくれる本は同じものをくり返し読むことで効果が高まる。人生のステージが変わるたびに同じ本を読んでも得られる内容は変わってくる。

 

 

【感想・考察】

 読書により論理的思考能力を高め、専門分野についての造詣を深めよう、という本だが、「良い本」として勧められているのは、著者の専門分野である 経営・会計・法務・マーケティングなどに偏っている感はある。推奨された本で読みたいと思うものはあるが、人文科学や自然科学などの分野でもレベルの高い本を探してよみたいと思った。

 

 「重読」で紹介していた柿の2冊は特に興味があるので、すぐに読んでみよう。

「菜根譚」明の時代の、洪自誠 が遺した「儒教・道教・禅」の思想が一体となった処世訓。http://amzn.to/2EHa3CG

「論語の活学」 安岡正篤氏が論語をベースに語る哲学。http://amzn.to/2EFwJTW

 

 

ダンナ様はFBI

【作者】

 田中ミエ

 

【あらすじ・概要】

 コピーライターとして働いていた女性が、FBIで要人警護をしていた”ダーリン”に見初められ、数年間の手紙や電話のやりとりで結婚に至る。ダーリンはFBIを退き、日本の大使館付きで働きながら、日本で「危機管理」の意識を広めていきたいと考えていた。

 ダーリンは危機管理の意識が過剰で、日本での生活ではちょっと浮いてしまうところもあったが、妻に向ける愛情の大きさ、仕事に対する真摯な姿勢、対人関係におけるブレない姿勢、正しいと思ったことを行う実行力がずば抜けた人物だった。

 FBIでプロファイリングを重ねてきた経験から「人の内面は、必ず外見に表れる」という信念を持っていて、人の外見に注意し相手のタイプに合わせたコミュニケーションが必要だとしている。また、自分自身の外見も内面を表すし「外見の緩みが内面の緩みに繋がる」という考えも持っていたため「自分はこう見られたい」というイメージに合うよう、服装や身だしなみに緩みが出ないよう厳しく律していた。

 自分の仕事に「最低年収」という基準を設けているのも印象的だった。自分のメインの仕事で食っていくことができなくなった時、生活を見直し、別の働き方を見つけなければいけないが、その基準を「年収」に置いていることにプラグマティズムを感じた。

 三十年以上前の当時はまだ多くはなかったフルタイムでの共働きにも協力的で、子育てのために協力は惜しまなかった。一方で子供に人生の主導権を握られるのではなく、子供を大事にしながらも、第一優先は「自分自身への投資と成長」としている。

 

【感想・考察】

 「異文化コミュニケーションをベースにしたコメディー」的な内容を期待していたが、かなり実践的な「仕事・生活・危機管理」についてのアドバイスが満載だった。

 元FBI の危機管理意識はちょっと常識外れな感じはあるが、30年前の日本で「オレオレ詐欺」のような犯罪を予見していたのはすごいと思う。

 危機管理の指南、仕事や生活での自己管理指南として、また作者とダーリンの恋愛物語として読んでも面白い一冊。

 

わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~

【作者】

 西林克彦

 

【あらすじ・概要】

 本を読んでいても「わかったつもり」で理解を深めることができなかったり、間違えた解釈をしてしまうことが、どうして起こるのか。また、どうすれば「わかったつもり」を超えて理解を深めることができるのか、について書いた本。

 

・「わからない」状態であれば分かろうとして調べたり考えたりするが、内容の部分間で整合が取れると「わかった」状態になり、それ以上深い解釈を求めようとしない・

 

・解釈には書いてあることだけではなく、文脈から導き出した「スキーマ」が意味を引き出す。例えば「布が破れたので、干草の山が大事」という文だけでは意味がわからないが、「パラシュート」という文脈があり、「パラシュートの布が敗れると空気抵抗が減り、落下速度が上がる」、「積み上げられた干草にはクッションの効果がある」という各自が持っているスキーマが引き出されると、部分間が関連づけられ解釈できる。

 

・一方で、「全体に当てはめられやすいスキーマ」や「良い・無難なスキーマ」を当てはめることによる「わかったつもり」も発生しやすい。新たな文脈を与えることで「わからない」状態に持って行って再解釈をすることで「よりわかった」状態を目指す。

 

・そう考えると解釈には無限の可能性がある。文章内での整合性が取れないものは「間違い」なので、文章の間違えている解釈を探せ」ということは可能だが、「正しい解釈を選べ」というのはスッキリしないことが多い。

 

【感想・考察】

 本を読んでいても、引っ掛かりなく理解できることは「わかった」として記憶に残りにくい。解釈に斬新さがある時には知的な満足感があり心に残りやすい。例えばキャッチコピーなどでも「長生きしたければ、ふくらはぎを揉め」とか、その間にある文脈がわからない方が引っ掛かりがあって心に止まることが多い。

 逆に、さっと読んで無難に理解できてしまう部分は頭に残らないので、ミステリで隠しておきたい伏線だとか、仕事の報告書などで強調したない部分などは「一見論理的整合生が明らかで、深く考えるまでもない」ようにすると良いのかもしれない。

 また「こういう喋り方や行動をするのは女性だろう」というスキーマを利用する叙述トリックもあり、日常生活でも「嘘をつかずに相手を誘導する」ことが可能になりそうな気がした。

 読み方、読解力についての本だが、書き方・伝え方についても考えさせられる。