Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

山月記

【作者】

 中島 敦

 

【あらすじ・概要】

 進士登台した李徴 が、官職を捨て詩作に没頭するが、秀作を著すことができず生活にも困窮し、再び官の仕事に戻る。以前は凡人と見下していた同期たちもすでに昇進し、自らの立場を認められず苦しむなか、李徴は虎に姿を変えた。

 かつての友が通りかかった時、残っていた人間の理性で襲い掛かるのを止め、自らの想いを吐露した。詩作を志しながら自分の才能の限界を知るのを恐れるような「尊大な自尊心」が、飢え苦しむ妻子よりも自分の詩を先に考えるような「利己的な心」が、まさに獣であり、自分はそれにふさわしい姿になったのだ、と嘆く。

 

【感想・考察】

 文章が非常に美しい。やや硬い文体だが、月夜が明け行くさま等、引き締まりながら情景豊かで深い感銘を与える。小説のテーマは表現者の苦しみや、自尊心との戦いなのだが、内容自体よりも描かれる情景の美しさにまず心が引かれた。高校生の頃の教科書で読んだ記憶があるが、違う状況で読んでみるとまた面白い。 

 

 

わが復讐のディンゴ

【作者】

 逢坂 剛

 

【あらすじ・概要】

 取材でオーストラリアに訪れたカメラマンである主人公が、古本屋である本を入手した。その本を奪おうと、古本屋の店員、オーストラリア現地人であるアボリジナル、白人などが主人公に襲い掛かる。

 

【感想・考察】

 部隊はオーストラリアだが、西部劇のような雰囲気も感じる。主人公はカメラマンだが、かなりの「ハードボイルド」で、最近の軟弱男子主人公とは随分違う。古本屋を舞台とした企業スパイの戦いが主題だが、アボリジナルと白人の関係や、メルボルンの街の様子など、「オーストラリア」が描かれていて、現地の情景が思い浮かぶ。

 

脱水少女

【作者】

 根本 聡一郎

 

【あらすじ・概要】

 「人魚が現れた時に大きな災厄が起こる」という伝説が残る栗生町で、ごく普通の生活を送っていた3人の高校生、庸介、はづき、石丸が主人公。ある日庸介は熱中症で倒れた少女、瑠奈を助けたが、彼女は忽然と姿を消してしまう。再び姿を現した少女は、栗生町を待ち受けている運命や、3人のはるかな因果を庸介に伝え大きく驚愕させる。庸介たちは町を救い、3人の悲しい因果を振り切るために奔走していく。

 

【感想・考察】

 非常に美しい話。田舎の高校生の日常と、タイムリープによって引き起こされる切ない想いと、災厄と戦う緊張感が「君の名は」っぽいのだけれど、私にとってはこちらの作品の方がシンプルに心を揺さぶられた。それぞれのキャラクターの生きる力強さが伝わってくる。石丸が「歴史は正義を押し付けるので嫌い」だが、「自分には正しいと何かを正しいと確信できてしまう才能があり、ある意味それは弱さでもある」と語っているのは興味深い。何かを成し遂げる人は自分の進む道を無条件で信じる「強さ」がいるのだろうし、客観的に選択肢を提示できる「弱さ」を持ったパートナーも必要とするのだろう。 短い話だが単純に面白い。

 

白本

【作者】

 高城 剛

 

【あらすじ・概要】

 著者がメールマガジンで取り交わした問答集を書籍化したもの。「ハイパーメディアクリエイター」というよく分からない肩書きで知られていた氏だが、世界中を飛び回り様々なメディアを横断して発信を続けている仕事内容が理解できる。

 これからの世界で必要となるのは、「外国語の語学力」、「コンピュータのスキル」、「国際感覚」、「センス」 だという。

 「コンピュータスキル」については関連する質疑がいくつかあり、どんなハード・ソフトを使っているかという話で、ノマド的な移動生活に役立つかもしれないが、数年経つと古くなる情報。「語学力」については自身の英語勉強法を解説している。

「国際感覚」は世界の中での自分の立ち位置、日本の立ち位置を客観的に捉えることで磨かれるとしている。日本の中で自分の立ち位置は把握しやすいが、それを世界の舞台でも同じようにできるかという視点で興味深い。「センス」については多くの質疑のなかで分散して著者の持つ雰囲気を伝えていた。

 ノマド生活で便利な日用品、健康法、仕事との向き合い方、日本という国について等々、幅広い分野についての散発的な質問への答えに著者の哲学が垣間見える構成。

 

【感想・考察】

 場所に縛られないノマド的な生活の極端な一例として面白く読んだ。「自由とは何か」という問いに対し「自由とは決断だ」と答え、「自由に生きる」と決断するだけでいいとしているのは、超実践的な言葉で興味深い。

 好きなジーンズとか、玄米の炊き方だとか、著者の個人的ファンでなければ興味のない項目も多くざっと流し読みをしたが、中には非常に鋭い考察や刺激的な考え方がしめさるものもあった。

 

漫画でよく分かるエッセンシャル思考

【作者】

  グレック・マキューン、星井 博文、サノマリナ

 

【あらすじ・概要】

 グレック・マキューン氏の「エッセンシャル思考」の要素をダイジェスト的に取り上げ、漫画を使って具体的な例を示している。99%の無駄を捨て、1%の本当に大切なことに集中するという主旨は原著と同じ。

 

・99%の無駄を捨て1%に集中する。

  「やらなくてはいけない」ではなく「やると決める」

  「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」

  「全部できる」ではなく「何でもできるが、全部はやらない」

   という考え方を推奨している。

 

・努力の方向性を絞れば遠くまで行ける。

  優秀な人ほど人から頼られ便利屋になりがちだが、行きたい方向に全部の力を集中することで、より遠くまで行ける。不要なものを切る捨てる強さが必要。

 

・些末なことを捨てる。

  90点主義で完全に良いモノ、本当に鵜やりたいことだけに集中する。70点でまあ悪くないことに時間を費やすことは、本当に良いモノを得るためにはマイナスになる。

 

・本当に大事なもの、そのための最短距離を見極める。

  見極めるためには、一度立ち止まって考える時間を取る。一人になる時間も必要。意図的に集中できる時間を作ること。

 

・遊びは大事。

  遊びは精神の柔軟性を高めてくれるし、活力を与えてくれる。遊び心は忘れない。

 

・刺激的で具体的な「本質目標」を定める。

  刺激的だが具体性が無い「ミッション」は、それだけでは具体的な行動には結び付けにくい。具体的だが刺激が無いのは、例えば「中期経営計画」のようなもので、必要ではあるが、人々を鼓舞する力は弱い。刺激的でかつ具体的な目標が自分も人も引っ張っていく。

 

・断り方、捨て方が大事。

 重要な1%に集中するため 99%の雑事を断ることが必要。断り方をいくつか挙げている。「数秒沈黙してから意見を言う」、「代替案を出す」、「予定を確認して折り返す、として即決を避ける」、「相手に優先順位を選ばせる」、「冗談めかして断る」、「肯定しつつ、本質部分を断る」など。

 取り組んできたことを捨てるには、サンクコストを大きく見積もらない。

 

・最悪の事態を予想しバッファを設ける

 次部でできると思うことの半分から3分の2くらいしかできない。バッファを設けることで、しなりを全体が崩壊することを避ける。「小さく早く」始めることも大事。

 

・「今」「ここ」に集中する

 やるべきことが多くて混乱している時は、まず書き出す等で、外部に出し整理するだけでだいぶ落ち着く。その後に優先順位を決めて一ずつ取り組めばいい。

 

【感想・考察】

 原著の「エッセンシャル思考」も分かりやすく書かれていたが、具体例を示すのに漫画を使うことで更に理解を深めることができた。アドラー心理学を解説する漫画でも感じたが、文章での論理的な説明と漫画などを使った具体的内容の解説を併用することは効果が高いと感じた。漫画だけでは絵のインパクトが強すぎて、論理的な理解を妨げることもあるので文章による表現と「両方」というのがポイントだろう。

 「重要な1%に集中すべし」ということには100%同意するが、些事を回避するのに難しさを感じる。断る為のテクニックもあるだろうが「本質目標」がどれだけ自分を引っ張ろうとしているか、動機づけの強さも重要な要素なのだろう。

 

 

座右の諭吉 ~才能より決断~

【作者】

 齋藤

【あらすじ・概要】

 著者が敬愛するという「福沢諭吉」の精神を、その著作などから探っていく本。

福沢諭吉は「カラリとした」精神を持っており、人間関係に執着することが無い。自分の「学ぶ能力」に自信を持ち、日本を欧米列強と伍す国にするという「使命感」を持っていたため、「些事にこだわっている暇はない」という考えだった。

 権力者に取り入るし、偽の手紙を活用する等、コズルイところもあるが、公への貢献が全面に出て私利私欲は見えないため、清廉潔白な印象を残している。

 江戸時代から続いた階級制度には反感を覚える一方、自分の目的のためには権力を最大限活用することもあり、反権力にもこだわらない。オランダ語を必死で習得したが、英語が主流だと見定めたら躊躇なく切り替える決断力もある。学んでも実際に使わなければ意味がないし、時局を見て行動しないと成果につながらないとする。中国古典の造詣も深いが、時間感覚が薄い学問は趣味の範疇だと切り捨て、欧米の実学を吸収することに力を入れている。

 「根気」のある人物で、やると決めたことはやり抜くが、その根底には「使命感」と並んで、それを支える丈夫な体を維持することもあり、健康を強く意識していた。日常の雑事で体を鍛えるという意識だった。

 

【感想・考察】

 「福沢諭吉」という人物について、具体的なイメージはあまりなかったが、本書で生々しい福沢象が見えてきた。非常に強い目的意識を持ち、その前には人間関係も、お金稼ぎも、衣食住も全て些細なことであり、捉われている暇はないという姿勢が清々しい。福沢自身が自由な精神の持ち主だったのか、「江戸時代の身分制度からの独立」、「欧米列強の抑圧からの独立」など、束縛から解放され自分で自分の生き方を決めることを重視している部分には共感を覚える。

 本書の著者である齋藤孝氏は、「福沢諭吉」の偉業だけを語るのではなく、狡さや偏屈さも含め幅広い視点から描いていて、人物に共感しやすい構成となっている。また、音読を推奨するなど、学習の身体性に着目しているだけあって、福沢やその世代の人々に「根気」があったことを、体力とブレない芯の強さに見出していたのは面白い視点。

福沢諭吉の原著を読みたいと思わせる本だった。

 

家族ノマドのススメ ~好きなときに、好きな場所で暮らす生き方~

【作者】

 板羽 宣人

 

【あらすじ・概要】

  自らECサイトを運営しながら、運営のコンサルも行う著者が、家族単位でノマド生活をした経緯を書いた本。

 一つの場所に縛られるリスクを回避し、子供が外国人と一緒に生活することに慣れさせたい、というのが家族ノマドを選択した理由。著者はネット環境があれば場所に制限されない仕事をしているが、それでも家族全員を連れてノマド生活をするには、子供の学校など問題もあった。ただそれを上回る良さがあり、北海道ニセコやハワイなど子供が成長するまで毎年のようにノマド生活をしていた。

 家族単位でのノマド生活で、

・家族と向き合う時間

・最低限のモノでのシンプルな暮らし

・自分は何を幸せと感じるのか

を得られたという。

著者の仕事が場所に縛られないから、ノマド生活ができた分けではなく、意志を持って行動したから可能だったのだという。

 

【感想・考察】

 場所や時間に縛られず働くというのは理想的。この著作自体は、ニセコやハワイでの生活の楽しさにフォーカスされていて、コンサルタントとしてのポジショントーク的なところは差し引く必要はあるが、それでも縛られない生活には圧倒的な魅力がある。私の目指す生活スタイルだ。