Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

未来を変える洗濯 未来授業〜明日の日本人たちへ

【作者】

 養老 孟司

 

【あらすじ・概要】

 「未来授業」というラジオ番組で放送された講義を書籍化したもの。「バカの壁」などのベストセラーを持つ解剖学者である養老氏の、若者世代に向けた講義録。

 印象に残った点は以下の通り。

・「好きな仕事と仕事を好きになること」と題して、仕事との関わり方を述べている。自分の好きなことを仕事にできれば素晴らしいが、好きなことを仕事にする中でも、やりたいことと苦手なことが出てくる。養老氏自身も臨床より基礎研究がしたいという思いから解剖学を選んだが、解剖用の献体を集めることなど「好きなことをするためにはしなければならないが、それ自体は好きではないこと」もこなす必要がある。「好きなこと」を選ぶだけではなく、「やっている仕事」自体を好きになることも大切だとしているい。

・幸福の基準が「人間関係」に偏りすぎている。例えば自然の美しさにも幸せを得られる感性があれば、幸せも不幸せももっと広く普遍的に感じられる。人との関係だけに重点を置くのは危うさがある。

 

【感想・考察】

 アドラーは人の悩みは全て「人間関係」に起因するとしているが、「幸せ・不幸せ」の基準まで全てを「人間関係」に置くことの危うさは感じる。より良い人間関係を築くための努力は必要だが、もっと広い根源的な価値基準を持つことで、より安定することができると思う。

 

 

すべての疲労は脳が原因

【作者】

 梶本 修身

 

【あらすじ・概要】

 疲労についての研究をしている医学博士の著作。疲労の原因は乳酸ではなく活性酸素だという見解。疲労を定量的に評価するための疲労バイオマーカを見つけ、実際には有酸素運動程度では筋肉疲労は発生していないことが確認され、脳の自律神経を調整する部分(前頭葉の眼窩前頭野)が活動低下することが主因で、その根本的な原因は活性酸素による酸化であるとしている。

 精神的な高揚感やアルコールなどは疲労感をマスキングし感じにくくするが、疲労自体は蓄積しているので、過労による事故や健康障害に繋がるとしてる。

 疲労の発生を抑え、回復を早める為の方法として以下のような提言をしている。

・紫外線による活性酸素の発生を抑える為、直射日光に気をつけサングラスも活用。

・質の良い睡眠が不可欠。睡眠時無呼吸症候群防止のための治療法、補助器具(CPAP)を紹介。

・質の良い眠りのため、アルコールを避けること。

・質の良い眠りのため、夕方には橙色の光を使う、就寝前のブルーライトを避けるなど、サーカディアンリズムを整える工夫をすること。

・疲労を回復するための栄養素として「イミダペプチド」を紹介。鶏の胸肉などに多く含まれる。一度小さい構成のアミノ酸に分解されてから脳内で再構築されるため、脳疲労に集中的に効果を示す。

・ビタミンCも抗酸化効果はあるが、持続時間が短いため脳への効果は限定的。

・BCAAは直接的な疲労回復効果はない。筋肉増強には有効。

・アミノ酸はエネルギー代謝に必要となるため、細胞のエネルギー供給に有効。イミダペプチドなどの抗酸化物質と合わせて使うと効果が高い。

・鰻などビタミンB1を含む食品がスタミナをつけるという話もあるが、現代では十分足りている栄養素で特に補助する必要はない。

・脳をリラックスさせる環境も必要。脳は自然な揺らぎのある状況を好む。

・脳のワーキングメモリを増やし、脳の活動領域を広げることで疲労発生箇所が集中せず、疲れにくくなる。物事を多面的に見る、人とコミュニケーションをとる、多趣味となる、などが有効。

 

【感想・考察】

 疲労についての本だが、睡眠・栄養・環境 から脳の使い方まで広範囲について言及されていて学ぶべき点が多い。医学博士の著作だけあって、「睡眠時の呼吸改善(CPAP)」や「疲労回復に効果のある栄養素(イミダペプチド)」など具体的な施策についてはきちんとしたエビデンスを提示している。「疲れをきちんと感じてきちんと休むことが大事」だというメッセージは伝わってきた。

 

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団

【作者】

 瀬名 秀明

 

【あらすじ・概要】

 藤子・F・不二雄漫画のSF作家瀬名氏によるノベライズ作品で、大筋は原作と同じ。

 のび太が拾って組み立てたロボット「ザンダクロス」は地球侵略を狙う機械宇宙人の尖兵「ジュド」だった。のび太たちは鏡面世界に「ジュド」を隠す。

 人間の少女を模した「リルル」がのび太に奪われた「ジュド」の奪回をはかるが、鏡面世界からの無理な脱出による爆発で大きなダメージを負ってしまう。静香が侵略者の手先だと知りつつも献身的に治療するのを見るうちに、「リルル」の「心」に迷いが生じる。

 機械宇宙人の鉄人兵団が来襲し圧倒的な武力で地球を制圧しようとするとき、「リルル」は人間をかばい、静香と共に自分たちの起源である「神」まで遡って解決を図る。

 

【感想・考察】

 「ドラえもん」の世界観そのままの作品だが、SF作家である瀬名氏の手によるものだけあって、道具やロボットの知能に対する解説や、タイムマシンによる歴史改変に対する独自の解釈が加わるなど読みどころが多かった。

 長編では「いいやつ」になるジャイアンは、いつも通り「いいやつ」だったが、スネ夫の心理描写が深く、味わいのあるキャラクターになっていた。特に「昆虫型ロボットは壊せるのに、人間を模したロボットは壊せないのはどうしてだ」という人間のエゴを切り出しながら、反面、感情移入による「思いやり」の美しさを描き出している。

 成長した星野スミレが、少年少女たちの冒険を支え、その活躍を祈り讃える歌を歌うシーンは映画版以上に映画的に情景が浮かぶ美しいシーンだった。

 「機械が心を持てるのか」という見方をすると、人工知能が急激に進歩している現代的な問題提起でもあると言える。そういえばドラえもんもロボット。「機械は人間と同等の心を持てる」というのが、藤子・F・不二雄氏の当たり前の世界観だったのかもしれない。

 

シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件

【作者】

  斎藤 和紀

 

【あらすじ・概要】

 AIの権威である レイ・カーツワイルが2045年に「テクノロジー進歩の速度が無限大になる」特異点としてのシンギュラリティが訪れると予言した。

 カーツワイルが提唱したシンギュラリティは、AIが人間の能力を超えることをゆうのではなく、技術が指数関数的「エクスポネンシャル」に進化をし、ある閾値を超えることで実質的に無限大に速い速度で進化する点がくるとしている。

 この「エクスポネンシャル」の凄さを示す例として挙げられているのが、ゲノム解析プロジェクト。15年の期限で取り組まれたプロジェクトだが、7年経過した時点で解析は1%しか進展していなかった。ところがカーツワイルは「1%解析ができたということは、半分以上は終わったということ」だと評価した。実際には当初の予定通り15年で完了したため、7年目1%の解析が終わった段階で半分以上は感リュしていたということになる。こういう加速感を持って世の中を見ていかないと取り残されると警告している。

 またカーツワイルは技術進化は G.N.R(ジェネティクス・ナノテクノロジー・ロボティクス)の革命的な進歩が起きると見ている。進歩の段階として「デジタル化」、「潜行」、「破壊」、「非収益化」、「非物質化」、「大衆化」の段階を踏むとしている。

「デジタル化」は0、1への変換だけではなく、自然界のアナログな現象を評価可能な数値に変えて見ること。

「潜行」は「エクスポネンシャル」な進化は直線的な進化に比べると初期段階の進展が遅く見えるため、大した影響はないと思われる段階。

「破壊」は「エクスポネンシャル」は進化が閾値を超えて変化が明確になること。

「非収益化」は従来収益を上げていた周辺分野の産業が収益を失うことを指す。

「非物質化」は例えば写真が印画紙という物質的なものからデータに移行したことや、ワープロ専用機が一つのアプリになってしまったことなどをいう。

「大衆化」は「非物質化」の影響で価格が下がることで多くの人が使うようになること。発売当初であれば合計で数億円はするテレビ会議、カメラ、音楽再生装置、時計等々様々な機器がスマートフォンに取り込まれたことで安価になり広く使われている。

 このような「エクスポネンシャル」な技術進化が、エネルギー・教育・健康・宇宙開発などの分野で「人間の存在を根底的に変える」レベルで進むことが、「シンギュラリティー」の示すものだという。

 人工知能に仕事を奪われるのではないかという不安も聞くが、これは産業革命当初に機械が人間の仕事を奪うという恐怖から機械の打ちこわしを行った「ラッダイト運動」と同じような捉え方で、技術は加速度的に進化することを当然として受け入れ、それをベースとした思考ができる人でなければ、先に進むことができないとしている。

 そのほか、Uberや民泊アレンジをする Airbnbなどシェアリングサービスの進展にも言及し、技術が社会を変えること、それを見越すことで正しい投資ができるということを主張している。

 

【感想・考察】

  巻末の人工知能専門家との対談で、「人工知能が人の仕事を奪うことの何が怖いのか」との発言があり、全く同感であった。もちろん、より上手く人工知能を使う人に富が集中する傾向は高まるので、富の再分配の仕組みも新たに考える必要があるとは思うが、うまく運用することができれば、人は肉体的・精神的な苦痛から解放され、より生きる意義に直結するような活動を行うことができるのだと思う。

 シンギュラリティーが起こるのが、2045年とするとあと28年。なんとか生き延びて、その世界を見てみたいと思う。

 

 

黄砂の籠城 (上・下)

【作者】

 松岡 圭祐

 

【あらすじ・概要】

 清朝末期の義和団事件を題材とし、史実を織り交ぜた時代小説。

 アヘン戦争や日清戦争を経て列強に分割侵攻されつつあった清朝末期の中国北京で、列強8カ国の公使館が集まっていた「東交民巷地区」を、「扶清滅洋」スローガンに掲げる義和団が包囲する。のちに西太后の勅を得て清の正規軍も参戦し、数百日に及ぶ籠城が行われた。この籠城戦では公使付き武官として北京に駐在していた柴五郎陸軍中佐が重要な役割を果たす。8カ国連合の中で籠城戦を実質指揮した柴五郎は、英国のクロード・マクドナルド公使の高い評価を得て、のちの日英同盟実現の要因ともなった。

 こういった史実をベースに、オリジナルの要素として柴五郎の元で籠城戦に奔走する櫻井や民間人の義勇兵、ロシアなど他国の兵士達との共同戦線が描かれる。内部に潜むスパイは誰か、どうやって攻め込もうとしているのかなどミステリの要素も盛り込まれている。

 

【感想・考察】

 松岡氏の作品はたくさん読んでいるが、この作品は異色の作品となっている。細かく物事を調べて豆知識を並べ、それをミステリーの肝とすることが多いが、今作では細かい取材が歴史的事件の背景を緻密に描き出す方向に活きていて、作品の重みが違うと感じた。また主人公も従来作品で多いスーパーヒロインではなく、戦いに翻弄されつつ自らの生き様を定めていく陸軍兵士としているが、今までのスーパースターよりも数段格好良かった。(ミステリには荒唐無稽な部分だし、戦闘シーンの描写ではスーパーヒーロー的な描写になってしまってはいるが。。)

 また柴五郎が冷静沈着な状況判断で周囲を巻き込み、最初は舐められていた状況から徐々に主導権を握っていく様も読んでいて気持ちがいい。日本人アゲが極端すぎると感じるところもあり、ここは多様な視点で公平に見る必要があるとは思う。それでも、このような人物が昭和初期の陸軍中枢部に残っていれば、軍部による暴走を抑止することができたのかもしれないと感じさせる。

 この作品を読む前に、浅田次郎氏の「蒼穹の昴」と「珍姫の井戸」を読んでいたので、時代背景はよく理解できた。このあたりの作品と一緒に読むと面白さが増す。

 

量子コンピュータが人工知能を加速する

【作者】
 西森 秀稔、大岡 真之

【あらすじ・概要】
 実用化が進んでいる量子コンピュータとはどのようなものなのか。その技術が人工知能の発展にどのような影響を与えるのか、かなり学術体視点からではあるが、数式などは使わずに分かりやすく解説した本。

D-Wave社が商用展開を始め、Googleが「従来型のコンピュータより1億倍速い」と評価した量子コンピュータだが、「組み合わせ最適化問題」に特化したもので、従来コンピュータのような汎用性はない。特定の条件下で1億倍速くなる可能性があるということ。

それまで開発がすすめられていたのは、「量子ゲート」方式という従来のコンピュータに近い使い方ができる方式だったが、D-Wave社が研究しているのは「量子アニーリング」方式というもの。いくつかの量子ビットが相互にどのような影響を与えるか重みづけを行い、横磁場をかけ「0」と「1」が重なり合った状態にしながら、それぞれの量子ビットが「0」と「1」のどちらになりたがるか、どちらの状態がより低エネルギーであるかを見る方式。

「組み合わせ最適化問題」というのは、例えば「宅配便のドライバが複数ポイントをどのように回ると最も効率的か」というような問題。仮にポイントが15カ所だとすると1兆3000億通りのまわり方があり、総当たりの計算では相当のパワーを使う。これを「量子アニーリング」方式で解くと量子が安定する形に自然に落ち着くため、完全解ではなくても最適解に近いものが得られる。「アニーリング」とは「やきなまし」のことで熱を加えた金属が分子構成を安定させることで硬度を増す現象を元にした言葉だが、イメージとしては特定のパターンを持つ板の上で砂をふるい続けると模様が現れるようなものだろう。

 次に「量子アニーリング」方式の量子コンピュータが人工知能の発展にどのように寄与するかという話。人工知能を急速に発展させたのは機械学習だが、人工知能が学習する際に「様々な要素が結果に対してどのような影響を持つか」ということの関連付け「クラスタリング」を行うことが重要になる。これは「組合せ最適化問題」が各要素の重み付けが決まった状態から最適解を出すことのちょうど反対で、「数多くの結果をサンプリングすることで各要素がどのような重みを持っているか」を出すことにあたる。例えば、猫と犬を見分けるのに当たって、「目の形」、「耳の形」、「口と目の大きさの比率」などどの要素が大事で、各要素にどのような相関関係があるのか等を求めていくことになるのだろう。「組合せ最適化問題」に適した「漁師アニーリング」方式は逆方向で活用できるということになるだろう。

 また、量子力学のごく初歩的な説明や、基礎研究の大切さや、完全解が得られなくても実用化に踏み切る思い切りなど、科学者・研究者としての提言もされていた。

【感想・考察】

 量子コンピュータという説明の難易度が高い技術に対して、実にわかりやすい説明がされていた。自分の理解がどこまで正しいのか自信のないところもあるが、今実用化されている量子コンピュータがどのようなものなのか、概要イメージを掴むことはできた。「よく理解している人は分かりやすく説明することができる」ことの好例と言える本。



 

1日36万円のかばん持ち ー三流が一流に変わる40の心得

【作者】

 小山 昇

 

【あらすじ・概要】

 企業向け研修、セミナーを企画運営する「武蔵野」の社長である小山氏が 提供するかばん持ち実習で教える内容を書籍化したもの。

「やり方」を教えるのはセミナーだが、「あり方」を伝えるには一定の時間を 一緒に過ごすのが一番だと考え実践している。

 ・借金を返すよりも現金を持つことにこだわれ、B/Sをよく読め

 ・従業員とのコミュニケーションは密に、プライベートにも踏み込め

 ・銀行との関係は大事にする

 ・社長自らのトップセールスは効く

 ・売上額より、利益率、利益率より利益額

 ・パクリは悪くない、最初は徹底的にパくる

 ・健康には留意するように  

   ・パチンコはギャンブルではなく仮説検証の練習の場

 ・目先の利益より会社のオーナーシップにこだわれ

といったようなことを、実際に同行する中で伝えていく研修。

 

【感想・考察】

 現金へのこだわりや社員との関わり方、会社のオーナーシップなど 中小企業の社長を対象にした研修なのだろうと感じた。

 パチンコや成功率の話など、確率の理論はむちゃくちゃだが勢いがある。 「かばん持ち」体験をビジネス化するという発想は素晴らしいと思う。

こういう本は、成功した人が自分の成功経験を元に語るので それぞれ違う視点から書かれていて、人によっていうことが違うことも多い。 ただ、数を読むことで傾向として見えてきたのは、 「拙速」「人間への関心」「バイタリティー」が必要なのだということ。 特に「拙速」はどんな本にも書かれていて、「完ぺきをきたすよりも素早く実行し 良い点・悪い点をはっきりさせていく」ことが絶対に必要なのだと感じた。