恋する寄生虫
極度の潔癖症で 社会に馴染めない男が
一回り近く年下の女子高生と恋に落ちる物語です。
クリスマスイブの夜に通信ネットワークを遮断する
「Silent Night」というワーム型マルウェアを作るくらい
拗らせていた男が、
恋に落ち生きる喜びを取り戻すけれど
単純なハッピーエンドはならないのが、
この作者らしさです。
【タイトル】
恋する寄生虫
【作者】
三秋 縋
【あらすじ・概要】
27歳の高坂は異常な潔癖症のため社会に適応できず、
清潔な自室に引きこもっていた。
彼は、暇に任せてマルウェア作り拡散させていた。
ある夜、部屋に訪れた和泉という男から
「マルウェアのことを告発されたくなければ
とある少女と友達になれ」という依頼を受ける。
17歳の少女 佐薙も、周囲から孤立し不登校だった。
佐薙は高坂と友達になることを了承し
翌日から高坂の部屋に訪れる。
潔癖症の高坂は他人が部屋に入ることが不快だったが
段々と二人でいることに慣れてくる。
佐薙が「寄生虫」に並々ならぬ関心を持っていることを知り
彼女から寄生虫の生態について話を聞く。
やがて高坂は二人の置かれた本当の状況を理解していく。
【感想・考察】
どうしようもなく追い詰められたバッドエンドでも
主人公たちの主観ではハッピーエンドになっている。
状況が悲惨であるほど、お互いの絆が強くなる。
「三日間の幸福」とか
「いたいのいたいの、とんでゆけ」など、
この作者の描く恋愛は、どれも追い詰められた先の
淡い幸福を描いている。
寄生虫に操られた孤独と恋というのも面白い。
寄生虫が宿主の精神的・肉体的な活動に
影響を及ぼすことはあるのだろう。
でも、そいうった寄生虫がいなかったとしても
人間の行動は環境に縛られていると言えるだろう。
本当は 「自由意志」など無いのかも知れないけれど
それでも「自分が決めた」ことを楽しめるのが人間なのだと思う。