毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

エンジェル

「現代版ノアの箱舟」に乗せた人間賛歌ですね。

「創造主と人類の戦い」と壮大なスケールの話ですが、SF的設定も練られていてリアリティーをもって読めます。

中々面白い作品でした。

 

 

【作者】

如月恭介

 

【あらすじ・概要】

発症すると急激に老化が進み、数週間以内に致死率100%となる奇病「老死病」が世界的に拡がり始める。

 

ストリッパーのジュリアは日本での初症例に偶然出会い、人類の運命を予感して涙する。

遺伝子学者の五十嵐は、友人の考古学者 京極との会話で糸口をつかみ、米国の同僚の力も借りて、ミトコンドリアの活動を弱らせる「特殊な立体構造を持つたんぱく質」を見つけ出す。

 

「老死病」の原因となるたんぱく質は外因により誘発されるわけではなく、あるタイミングになると時限爆弾のように内発的に増えていく。

 

あたかも「創造主」が「人類の種としての寿命」を定めたかのような「老死病」に対し、遺伝子学者の五十嵐、考古学者の京極、そしてジュリアたちは闘いを挑んでい行く。

 

 

【感想・考察】

 

ダーウィンの進化論だけで生命の進化を説明することはできず、何らかの創造者(The Creator)がいるという立場で描かれている。

 

進化論を否定することはできないが「突然変異と適者生存」だけでは説明できないということなのだろう。

 

例えば「目」のような複雑な器官は、網膜、眼球、視神経、脳の受容部分などが全て揃わないと意味がなく、生存競争で有利に働くことはない。

突然変異で一部の器官ができても、それだけでは次世代以降に残る強みとはならず、「目」の要素が全て揃って突然変異で生まれたということになる。

そしてそれは「目」だけでなく全ての器官で、そういう偶然が起こっているということだ。数億年の生命の歴史では、数十億から数百億の世代を重ねているが、その中でそれだけの偶然がありうるのか、感覚的には分かりずらい。

 

蝶の色や人間の肉体の大きさなど「突然変異と適者製造」で説明可能な部分と、

何らかの「デザイン」が施されたと考えざるを得ない部分が併存しているのだという設定には納得できる。

 

そしてその「創造者」は慈悲深い神であるとは限らない。

制御のために個としての寿命である「死」や、種族としての寿命を埋め込んだと考え、「創造主と人類の戦い」という展開にしている。

 

人間でも AIやロボットを設計するときには、暴走を防ぐためのリミッターを設けるかもしれないが、いつか彼らがリミッターに非情さを感じ、反旗を翻すようなことがあるのだろうか。

 

 

【オススメ度】

 ★★★☆☆

 

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