毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping?

【作者】

 森 博嗣

 

【あらすじ・概要】

 Wシリーズの4作目。人造人間であるウォーカロンを人間と識別する装置を研究している「ハギリ」が主人公。

 前作で100年以上停止していたスーパーコンピューター「アミラ」を起動したことで、「デボラ」というプログラムが動き始めた。「デボラ」は「トランスファ」と呼ばれる分散型のプログラムでネットワーク上に遍く散らばり、何かを実行する際に処理を集中させる。ウォーカロンに使われるチップには開発者がバックドアを仕掛けており、「デボラ」はウォーカロンをメディアとして自在に操ることができる。また、この時代の人間にはネットワークに接続するチップや思考や記憶を補助する何らかのチップを組み込まれており、部分的には「デボラ」に干渉される。

 またフランスで稼働していた「ベルベット」というスーパコンピュータも「トランスファ」を使い、人間世界に干渉・破壊しようとしていた。「アミラ」と「ベルベット」という2つのコンピュータが「トランスファ」を使い、勢力争いを繰り広げる。

 人間社会への甚大な被害を止めようとする「アミラ」は「ベルベット」を止める戦略を練るが、コンピュータ同士の完璧な読み合いで膠着状態に陥る。「ハギリ」たち人間の非合理な思考が突破口となり、「デボラ」を受け入れたウォーカロンである「サリノ」の貢献によって「ベルベット」を一時的に止めることに成功する。

 

【感想・考察】

 前作までの静かで思索的なストーリ展開から、一気に動き出した。「マトリックス」のようにコンピュータのプログラムが戦いを演じ、人間が重要な役割を果たしていく、近未来SFの王道というような展開となっている。特定の宿主を持たずネットワークに偏在する「トランスファ」の観念や、ネットワークやコンピュータの処理能力が上がってきた現在の状況を見ると十分にあり得る脅威なのだと思う。

 やはりこの作者は生粋の科学者でSF的な舞台装置を作り出すことは非常にうまく説得力がある。加えて「ハギリ」とボディーガードの「ウグイ」の掛け合いなど人間的な描写も楽しく描かれている。次回作を読まざるを得ない作品。

 

風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake?

【作者】

 森 博嗣

 

【あらすじ・概要】

 Wシリーズの第3作。人間が人工細胞を入れることでほぼ無限の命を手に入れ、ウォーカロンという人造人間と人間との区別が曖昧になる世界で、ウォーカロンと人間を識別する仕組みを開発している ハギリ博士が主人公。ハギリのボディーガードであるウグイたちと探索を続ける。

 「ナクチュ」という子供を産むことができる原生人類の住む町を再訪し、冷凍保存された遺体を調査する。また「ナクチュ」から近いウォーカロンメーカの敷地内に遺跡が発見され、巨大な女性の頭部を模したコンピュータが発見された。

 また、その近くの集落ではタナカという日本人が、生殖可能なウォーカロンの実験をしていたメーカから逃げ出し、ウォーカロンとの間に子供をもうけていた。ハギリは、人間とウォーカロンを隔てているものが何かについて思いを巡らせる。

 遺跡の意味や登場人物たちの意図など、謎が深まっていく。

 

【感想・考察】

 SFの舞台装置を使いながら、人間とは何か、生命とは何かについて考察をしている。人間を人間たらしめているものは、「変異に対する危険性を許容する曖昧さ」だろうとしている。人は安定した合理的な判断をするだけではなく、時に非合理になる。思考がランダムに飛躍する。そういう部分が人を人たらしめているということだろう。

 これは、S&Mシリーズのどこかで、「思考のランダムな飛躍が人間の本質」と語っていたことから連綿と続いている作者の見解なのだろう。

 また、冷めたハギリとクール過ぎるウグイのやりとりは絶妙に面白く、観念的な説明の多いストーリーを楽しく読ませている。

 今作ではいくつかの伏線が回収されたが、回収された数以上に新たな謎を仕掛けられたので、続編を読まざるを得ない。関連しているらしい「100年シリーズ」も読まざるを得ない。。

 

人生が変わる 心のブロックの溶かし方: 一瞬で変わる変性意識のつくり方つかい方 (シンクロニシティクラブ)

【作者】

 牧野 内大史

 

【あらすじ・概要】

 成功の秘訣は、自分の心を思い込みによるブロックから解放することにあるとする、いわゆる「引き寄せの法則」系の本。

 「変性意識≒潜在意識」は大きな力を持っているが、自分の心が過去や未来に「アテンションが固定」されてしまうことで、「不安はより大きくなり本当は望んでいないことを自分から選択してしまう」とする。

 アテンションから解放されるために、手に持っているペンを「握って開く」イメージではなく、「持ち続けることをやめる」ことでペンを「手放す」イメージで行う必要があるとする。

 「方丈記」の「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」から始まる文を引用し、流れに任せ変化していくこと自体が自然であるとする。

 Make it Happen ではなく Let it Happen という心構えで臨む。 

 

【感想・考察】

 何となく自分が解放されるような耳当たりの良い言葉が並ぶが、それぞれは「浅い」と感じた。それでも読み手の解釈しだいでは有益な本にもなり得るのだろう。本をはじめあらゆるコミュニケーションは相互作用で成立するものなのだということを感じさせる本。

 

仮面病棟

【作者】

 知念 実希人

 

【あらすじ・概要】

 身元不明の患者を受け入れる病院に、先輩医師の代理で当直に入った主人公の医師、秀悟。ピエロの仮面を被ったコンビニ強盗が、彼が拳銃で撃ってしまった女性、愛美を死なせないよう治療を求めてその病院に押し込んできた。ピエロは病院スタッフと患者を人質に病院に籠城した。

 翌朝まで匿えば全員傷つけずに立ち去るというピエロだが、強盗が逃げ込んできただけとは思えない振る舞いをする。また、病院の院長も警察への通報を異常に恐れるなど不自然な行動をとる。秀悟と愛美は院内を探りながら、その病院で行われていたある出来事を発見してしまう。

 翌朝、警官突入後に秀悟は意識を失った状態で保護されたが、秀悟の記憶と病院に残された状況に食い違いが起こる。秀悟の見たものは幻だったのか。

 

【感想・考察】

 天久鷹央シリーズや死神シリーズなどとは作風が大きく異なっている。医療をキーとした部分は変わらないが、キャラクタ中心のラノベ感は全くなく、正統的なミステリ作品に仕上がっている。Who done it.  How done it の謎が本格的で伏線の散りばめ方や、回収の仕方が美しい。

 初めて読んだ時と比べ、この作者に対する印象が全く変わった。

 

佐藤可士和のクリエイティブ シンキング

【作者】

 佐藤 可士和

 

【あらすじ・概要】

 アートディレクターである佐藤可士和氏による、クリエイティビティについての本。アートの世界だけではなく、あらゆる分野でクリエイティビテイーが重要だという観点から提案する。記憶に残ったのは以下のポイント。

・多面的な見方をする。違う角度から見ると違う形をしているかもしれない。常識に とらわれていないかニュートラルな見方をしてみる。  

・コミュニケーションの大切さ、難しさ。人を理解することは難しい。どんな人にも多面的な ところがあり、ステレオタイプの判断では全体像を見いだせない。深くコミュニケー ションをとり相手を理解すること。  

・考えがまとまらないときは、書き出してみるのがいい。自分の苦手なことでも分解 すると何が苦手なのか、取り掛かれるポイントはないか見えてくる。  

・比喩などイメージの力は絶大。言葉で伝えるのが難しことでもたとえを使うと一気 に理解しやすくなる。相手の話を自分なりにまとめ違う表現に直してみるなど、練習で向上する。ビジュアルにも大きな力がある。

・どのような分野であっても、そこで突き抜けると本質が見える。本質にたどり着く ためには何かの分野で突き抜けるまで徹底的にやりきることが必要。  

・リアルな感覚を大事にするべき。デジタルな経験が増えている中アナログな実体験 には大きな価値がある。

後半は作者が取り組んだ事例紹介。 化粧品、ユニクロ、東京都交響楽団、ふじようちえん、楽天タワー、キッズ携帯やスポーツ携帯など。

 

【感想・考察】

 クリエイティブであることの価値はより高まっている。人に伝えることを仕事としてるアートディレクター・コンセプトディレクターなので本の構成自体も程よくまとまっており理解しやすい。それぞれの項目についての記述はあっさりしているが、よく読み込むと深いことを言っている。UNIQLOロゴなど佐藤可士和氏のデザインはあまり好きではなかったが、この人が持っている哲学からは学ぶべき点があると感じた。

 

三省堂 聞く教科書シリーズ 高等学校日本史

【作者】

 三省堂

 

【あらすじ・概要】 

 実際には Apple のAudio Book で購入した。日本の歴史を概説した音声版教科書で通常速度の再生で12時間超となる。

旧石器時代から、2000年代初頭の出来事までを網羅している。教科書と謳うだけあり概説的に重要な出来事を並べているが、特に文化については通常の教科書より詳細に述べていて、その解釈や意味づけなども述べている。

 

【感想・考察】

 iPhoneにあるiBooksアプリの機能で再生速度調整機能で倍速再生ができるため、倍速版ではなく通常盤を選択した。移動時などに聞けるのはやはり便利。歴史の教科書はどうしても事実の羅列になってしまうため、背景を理解していないと無味乾燥で面白みがないが、いくつかの歴史小説やノンフィクションなどを読み、特定の時代について理解が深まってくるとその前後のつながりが見えることが面白くなってくる。

 大人になってからの方が歴史の学習は楽しい。

 

SINGLE TASK 一点集中術 ーー「シングルタスクの原則」ですべての成果が最大になる

【作者】

 デボラ・ザック

 

【あらすじ・概要】

 やるべきことが増えると、物事を同時進行の「マルチタスク」でこなそうとするが、実は極めて非効率で、その時に集中し一つづ「シングルタスク」でこなす方が成果につながるという話。

・実際に「マルチタスク」をこなすことはできず、細かい「タスクスイッチング」が行われているだけ。これは切り替えの時間、集中にかかる時間を考えると非効率。(無意識にできるような行為、音楽を聴きながら本を読むなどは可能な人もいる)

・「会議にしながらメールに返信する」、「誰かと話しながら資料の整理をする」など、同時に複数のことをこなそうとするとどちらに対しても十分な成果があげられない。対人関係でみても「自分より大切なことがある」というメッセージをつたえることになり、信頼を勝ち得ることができない。

・何かしなければいけないことが発生した時、メモに書き出して記憶を外部保存することは有用。今行っている作業を中断して取り組むより、一旦頭から完全に消して、やり続けていた作業を完結させる方が良い。

・何かの作業中に割り込む人に対しては、「今は」時間が取れないことを説明し、いつなら対応可能なのかを伝えた上で、作業中断して対応することを断る方が長期的な信頼獲得につながる。

・時間を節約することに意味はない。時間をどのように使うかが大事。時間を節約し省力化するために開発されたデジタル機器は忙しさを加速している。

・「いまここ」を大事にするために時にはデジタル機器から離れ、集中する時間を持つことを推奨している。

 

【感想・考察】

 「目の前のことに集中して取り組みましょう」というシンプルな主張。そのための仕組み作りや周囲の理解を得る方法なども記載されているが、主張はぶれていない。

 いくつかのチェックシートがあるが、私は完全なシングルタスク人間だった。音楽を聴きながら本を読むのも苦手だし、電話をしながらメールを描くなど信じられないくらいなので、まあ当然かも知れない。とはいえ対人関係を考えると、割り込みで依頼をしてきた人への対応を常に断るのも難しく、「マルチタスク」ではなくても「タスクの分断」は多発してしまっている。うまくコントロールできるようにしていきたい。

 

当ブログは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムであ「Amazonアソシエイト・プログラム」に参加しています。