毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

ひとつむぎの手

知念美希人さんによる、医療ミステリです。

スーパードクターや死神が出てくるわけでもなく

医師や患者たちの葛藤が淡々と描かれる人間ドラマでした。

「神様のカルテ」とかが好きな方なら楽しめると思います。

 

【タイトル】

ひとつむぎの手

 

【作者】

知念美希人

 

【あらすじ・概要】

大学付属病院の心臓外科医 平良祐介 が主人公。

 

祐介は教授の甥である針谷と競っていたが、

教授に心臓外科としての経験を積める病院への出向をちらつかされ

3人の研修医の指導を行うことになる。

 

研修医たちに心臓外科配属を希望してもらえるよう

過酷な実態を隠そうとするのが裏目に出て信頼を失うが

祐介の医師としての真剣な姿を見せることで

徐々に尊敬を集めていく。

 

そんなおり「教授が薬品会社と癒着している」という

怪文書が病院にひろがる。

教授は祐介に怪文書を出した人を突き止めるよう依頼する。

 

 

【感想・考察】

市中病院への医師派遣で影響力を持つ医局の功罪や

医局の人事権を武器に医師を支配する教授たちを描く。

 

過酷な労働環境の中で患者に寄り添い働く医師たちや

自らの命と理不尽な病気に向かい合う患者たちの心象を描いている。

 

従来の知念氏の作風と少し違ってかなり重い話になっている。

ミステリの要素もあるが薄く、病院を舞台にした人間ドラマだ。

 

平良祐介は、フラフラとブレるし、

打算的で嫉妬深いところもあるが、

医療に対して、患者に対して、部下に対しても

真面目に向かい合う真摯な医師だ。

 

特にすごいと思うのが、物語終盤で見せる「許し」だ。

勧善懲悪的なフォーマットから外れることには違和感があったし

賛否の分かれるところだとは思う。

ただ、やたらに不寛容さが広がっている現代では、

こういう選択をする人がいることにも意味があるのだと思う。

 

 

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