毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

祈りのカルテ

2年間の臨床研修で各科を巡回しながら

患者たちの隠した思いを解き明かしていきます。

「医療ミステリ」の範疇に入るのだと思いますが

病気や治療がキーになるわけではなく

患者たちが守ろうとしているものに気づき

救い出していく、という話でした。

 

 

【タイトル】

祈りのカルテ

 

【作者】

知念美希人

 

【あらすじ・概要】

純正医大附属病院で研修医として各科を巡回しながら

将来の配属先を考えている 諏訪野良太が主人公。

各科での事件を描いた5つの連作短編集。

 

彼女が瞳を閉じる理由

精神科での研修中に

二ヶ月に一回は睡眠薬の多量服薬で

救急搬送され入院する女性患者を受け持つ。

彼女には自傷癖があり、大量のリストカットの跡や

元夫の名を焼き付けた跡も見られた。

彼女の入院履歴のカルテを見た諏訪野は

定期的な多量服薬について、ある可能性に思い至る。

 

悪性の境界線

外科での実習中、

胃癌で手術が必要となった高齢の男性を受け持つ。

ごく初期だったため、開腹せず内視鏡での

粘膜切除だけで完治する可能性の高い症例だった。

本人と娘に術式を説明し、一度は了解を得たが

翌日男性は急遽態度を変え、

「内視鏡での切除ではなく、開腹手術にして欲しい、

手術は来遊中に行って欲しい」と言い出した。

男性患者は何故手術を急ぐのか。

 

冷めない傷跡

皮膚科での研修中に、

ふくらはぎの火傷で 救急搬送された女性を受け持つ。

彼女の処置をしていて、入院後に火傷の範囲が

広がっているようにみうけられた。

諏訪野は彼女の過去のカルテを調べ

7年前に突発性難聴での通院履歴がありがなら

MRI検査も受けていなかったことに気づき、

ある可能性に思い至る。

 

シンデレラの吐息

小児科での実習中に

喘息の発作で 入院してきた少女を受け持つ。

検査の結果、処方された薬を服用していない

「怠薬」であることがわかる。

指導医は親による「代理ミュンハウゼン症候群」

(同情を引くため代理のものを傷つける)を疑う。

 

胸に嘘を秘めて

循環器内科で研修をしていた諏訪野は

拡張性心筋症で入院する女優 を受け持つ。

拡張性心筋症は心臓移植以外の治療法がないが

日本でドナーが現れる可能性は低いため

海外への転院を計画していた。

彼女はイメージの悪化を恐れ、入院の事実を隠し

プライバシーが確保できる特別病室に入っていたが

週刊誌が彼女の病気をリークする。 

 

 

【感想・考察】

最後の話「胸に嘘を秘めて」が特に良い。

研修医の諏訪野、指導医、患者である女優、

患者の母、患者を支えるマネージャーたち、

交差するそれぞれの想いが切なく美しい。

あまり現実味のある話では無いが

美しい物語に触れると心うたれる。

 

巡回先のどこからも「向いてない」と

言われる諏訪野はちょっとかわいそうだ。

「患者一人一人に深く関わりすぎると

医者としてはやっていけない」というのが

現実なのかも知れないけれど。。

 

 

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