Kennie の読書録

毎日1冊本を読み、記録を残したいと思います。

踊るジョーカー 名探偵音野順の事件簿

【作者】

 北山猛邦

 

【あらすじ・概要】

 気弱で引き籠り気味の名探偵「音野順」とマネージャ兼語り手の「白瀬」による、「本格ミステリ」短編集。

 

踊るジョーカー

 とある資産家が地下室で刺殺される。死体の周りにはトランプが散らばり、凶器のナイフにもトランプの束が刺さっていた。地下室の電子錠は被害者である資産家本人とその息子しか持っていなかったため、息子に容疑がかけられる。その息子は容疑を晴らし真犯人を見つけるため、名探偵の音野に捜査を依頼する。

 

時間泥棒

 美術品などの資産を親から相続した姉弟が2人で暮らしていたが、ある時から家の時計が次々となくなっていることに気づいた。盗まれた時計はどれも大した価値はなく、盗んだ人の意図は分からないが、家に入り込まれていることの気味悪さから音野に操作を依頼する。アナログ式の時計だけを盗み、他の高価な美術品などには手を付けない犯人は何を狙っているのか。

 

見えないダイイングメッセージ

 ケーブルが絡まなくなる「からまないくん」の発明で財を成した男が撲殺される。死ぬ直前に金庫の解錠番号を残していないことに思い至り、手が届く範囲にあったポラロイドカメラで室内を撮影した。

 後日、被害者の家族が金庫の解錠番号を探って欲しいと音野探偵事務所に依頼してくる。音野は被害者が残した写真に着目するが、本や時計など室内の風景を写しただけで、暗証番号のヒントが隠されているようには見えない。被害者はどうやって番号を伝えようとしたのか。

 

毒入りバレンタイン・チョコ

 バレンタインデーに大学のゼミで女子生徒2名が手作りチョコを持参し、男子生徒や教授と一緒にチョコを食べる。チョコの一つに微量の青酸系毒物が付着しており、チョコを作った女性の一人が病院に運ばれる。致死量には満たない毒の量だったため、被害者は一命をとりとめた。毒は36個あったチョコのうち1つだけに仕込まれていて、作った女性たちには仕込むことができたかもしれないが、誰に毒入りのチョコを食べさせるかコントロールすることはできない。

 誰がどのような意図でどのような方法でチョコに毒を仕込んだのか。

 

ゆきだるまが殺しにやってくる

 雪の中道に迷った音野と白瀬は、山奥の洋館にたどり着き助けを乞う。その洋館では資産家の男が娘の結婚相手を選抜しているところだった。娘の出した条件は「すばらしい雪だるまを作ること」、二人の候補者が雪だるまを作りまくる。音野もなぜか結婚相手の候補者に加えられたが、雪だるま作りには参加せず大人しくしている。

 夕食のあと候補者の一人が殺されているのが発見される。ゆきだるまの近くで後頭部を殴られ撲殺されていたが、犯人や被害者の足跡は周辺になく、凶器と思われるバールは雪だるまの腕として刺さっていた。犯人は雪だるま?

 

【感想・考察】

 気弱な名探偵である音野順や、ガサツだが親切な刑事岩飛、最終話に出てきた喋らない使用人深津など、面白いキャラクタが多くラノベ的に軽く読めるが、ミステリの謎掛けは緻密に練られていてかなりの「本格」推理。ダイイングメッセージで何を伝えたのか、毒入りチョコをどう選択させるのか、など斬新で伏線がきちんと張られ回収されている。読みがいのある作品だった。