Kennie の読書録

毎日本を読んで、面白い本を紹介したいと思います。

人と組織を効果的に動かす KPIマネジメント 楠本 和矢

【作者】

 楠本和矢

 

【あらすじ・概要】

 KPI (Key Performance Indicator) は、事業目標を達成するために管理する指標であるが、KPI を適切に定め、管理運用していくことが事業戦略そのものであるとする。

 

 KPIの種類

 ・KFI (Key Financial Indicator) 財務的な成果指標、企業の場合は売上や利益など最終的な指標が KFI となることが多い。最終目的が財務的な成果出ない場合は、KGI (Key Goal Indicator) とすることもある。

 ・KRI (Key Result Indicator)  最終的なKFI に効果的につながっていく状態(Key Result) がどの程度成立しているかの指標。これにはステイクホルダーのInsightを深堀りし、言語改善の欲求をつかむことも必要。
 ・KAI (Key Action Indicator)活動指標
KRI を高めていくための具体的なアクションをどれだけ実施したかを把握するための指標。

 KPI はストーリーから考える
業績を高めるためのアクションが、どのようなメカニズムで連鎖していくのかがわかる「筋の良いストーリー」構築が必要。会社の置かれている状況など様々な要因を捉え通り一遍の教科書的解釈ではない個別のストーリーを作る。必要な情報が最初から集まることはないので、推論からストーリーを立て、検証しながら練度を高めていくのが KPI マネジメントの本質だとする。

 KPI マネジメントの失敗例
ネガティブな行動を誘発
例:「顧客単価だけ」をKPI にした場合、高額商品の強引な売り込みで長期的には顧客離れを起こすなど。
無意味なオプションを選んでしまう
例:「従業員の幸せ」を高めるため、定量的に捉えられる指標として「離職率の低下」を KPI としたが、売上向上との優位な関連性がみられなかったなど。
競争環境の変化に対応しない
例:新規サービスの導入時、「面」を広げるため「新規顧客獲得数」を KPI としていたが、市場成熟後も変更せず、「解約率低下」や「単価UP」といった指標に移行できなかったなど。
制御不能な要素が影響を与える
例:広告された製品の売上額に連動した広告代金としたが、売上増減には広告以外の要因の方が大きな影響を持っていたなど。
バイアスがかかる測測定手法
例:営業担当者の目の前でアンケートを記入してもらうことで、本音が表れにくいなど。
KPI が多すぎる
例:売上、利益率、損益分岐点比率、時間当たり生産性など多岐に渡り、つじつま合わせに終始してしまうなど。

ステイクホルダーにどのような影響を与えるか、「想像力」が欠如した KPI設定は失敗する。
教科書的なクライテリアとして
 S: Specific  具体的
 M:Mesurable 測定可能
 A:Achievable  実現可能
 R:Relevant   達成すべき目標との関連
 T:Time-Bound 期限がある

インサイトの探索
 人間的な視点に基づいた「インサイトの探索」が実効性あるKPI マネジメントに欠かせない。人は常に合理的に動くわけではなく、三重、損失回避バイアス、感情、習慣 など非合理な判断が重要な意味を持つ。よく使われるマーケティング理論のフレームワーク 3C(Customer、Company、Competitor)、STP(Segmentation、Targeting、Positioning)、4P (Product、Price、Place、Promotion)などでの分析は汎用的プロセスの構築に多大な貢献をしたが、「すべての人間が合理的な判断をする」という考えが前提となっているため、そこに落とし込むだけで思考停止に陥らないよう注意する必要がある。

 インサイト探索のアプローチとして、阻害要因を探索するネガティブアプローチ、対象に行動を起こさせた「心理」に着目するポジティブアプローチ の両方がある。

 実企業でのKPI マネジメント実例

JAL 定時到着率を KPI とする。顧客へ提供するサービスの本質を考え設定した。各部門の連携が促される。


丸井 女性従業員の意識「女性の上位職志向」、「女性活躍浸透度」をKPIとした。顧客、従業員とも女性が多い職場で女性の活躍が必要だった。


あさひ 自転車販売店だが、390円での安全点検「サンキュー点検」の顧客数を KPI とした。気軽に店舗に訪れる顧客が増え、買い替えや新規需要の掘り起こしにつながった。


小林製薬 新製品寄与率を KPI とした。新製品の開発モチベーションが上がり、既存の要素から新製品開発につながるケースも増えた。


サイゼリア 一人が一時間で生み出す粗利益「人的生産性」をKPI とした。無駄の削減につながっている。


ハウステンボス 「オンリーワン/ナンバーワン企画」の取り組みをKPI とした。景観型の施設であったハウステンボスは新規顧客をよぶ話題性に乏しかったが、オンリーワン、ナンバーワンという縛りがむしろ発想を広げ、顧客を増やした。


SBI証券 コールセンターで顧客からお礼を言われる「ありがとう件数」を KPI とした。


KPI 策定の具体的ステップ

活動の大目的を KFI として設定する
その達成に向け「インサイト」の推論をする
成果につながるあるべき状態「KR」を導く
KRを作るためのアクション「KA」を検討する
KAを想定される波及効果でつなぎ「ストーリー」として取りまとめる
最後にそれを動かすための 「指標」を定める

KPIの測定
問いの立て方に気を配る。直接カウントできるものでない場合、アンケートなどを挟むがそれが効果的であるためには注意が必要。
 ある事象を直接カウントできない場合、代替指標を立てるのも有効だが関連性に気を付ける。

 KPI は硬直的なものではなく、運用によって練度を上げていくことを前提とすべき。


【感想・考察】
KPI は活動を測定するための「指標」であるが、その定め方や運用は「企業戦略の本質」であるとする。

 理論が先行するビジネス書は冗長なものも多いが、本書では具体的な事例を豊富に載せることが著者の KPIマネジメントの考え方を伝える助けとなっている。

KPI マネジメントはビジネスだけでなく個人的な目標管理にも使えるし、組織を動かすだけでなく、個人対個人の関係でも役に立つと感じた。

組織でも個人同士の関係でも「何をしたら評価されるのか」を明確に示すことで相手を動かすことができるのは間違いない。人を動かす方法としては非常に強力だ。

 「”あなたが” ~をしてください」という依頼では、束縛された感じを受け、自立心の強い人は拒否感を示すかもしれない。一方で、「”私は”こういう活動を評価しています」という私が主語になるメッセージであれば、判断は受け手側にゆだねられ束縛された感じはしない。

基本を学ぶには良い本だと思う。

 

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