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孤独の価値

森 博嗣

 

孤独を感じる心は、孤立が生存を脅かすことに繋がることもあるが、現代においては社会的な刷り込みの要因が大きい。

孤独であること自体は必ずしも悪いことではなく、積極的に楽しむこともできる。

創作や研究に没頭する人には、孤独はむしろ必要不可欠な要素であるということ。

寂しさを感じるなら詩でも書いてみよう、と述べている。

 

一人で静かに過ごすことが好きな私には、受け入れやすい内容だった。

 

端的に言えば、他者との関わりを控えている作者が、「孤独でも別にいいだろう」と言いながら、周囲を気にして必死に正当化しているように見える内容で、作者を可愛らしく感じる。

この作家のミステリの登場人物が、天才肌でありながら、憎めない可愛さを持つのは、作者の人格がにじみ出ているということだろうか。

 

孤独を愛する人、孤独を恐すぎる人の両方に勧められる本。

 

 

 

 

一流の記憶術 ーあなたの頭が劇的に良くなり「天才への扉」がひらく

六波羅 穣

 

物事を記憶する方法を述べた本。

短い本だが、内容は濃かった。

 

記憶を活用するには、銘記、保持、想起の3ステップを確実に行わなければならない。著者は下記の3点が重要だとしている。

 ①対象に注意を向け、情報を短期記憶に入れる

 ②想起練習を繰り返し、情報を長期記憶に入れる

 ③記憶対象を手がかりと結びつける

 

まずは対象を意識していなければ、見えていても聞こえていても短期記憶にも残らず、何も始まらない。全てを記憶する必要はないが記憶する必要があることを選択し注意することが始まり。

 

ついで、短期記憶に残った情報を長期記憶に残すことが必要。エヴィングハウスの忘却曲線の話もあったが、1時間後に覚えていることは1日後も覚えているし、1週間後に覚えていることは1ヶ月後にも覚えている。保持の期間が長くなればなるほど、忘れる可能性は低くなる。

長期記憶へ定着させるには、”繰り返し” ”想起する” 訓練が必要。メモを何回も読んだり、唱えたりするのも効果はあるが、意志を持って思い出そうとして思い出すことがもっとも有効。

 

そのあとで定着した記憶を手がかりと結びつけて引き出す技術が必要。

 

特に記憶しにくい事柄を覚えるために、幾つかの記憶術を紹介していたが、その中でも汎用性が高そうなものは以下の3つ。

 

 

 ・頭文字法

  記憶すべき事柄の頭文字を並べて記憶する。

  あまり対象項目が多いと難しいが、簡単に導入できる。

 

 ・物語法

  記憶すべき情報のイメージを一繋ぎの物語として記憶する方法。

  物語を考える手間はあるが、記憶しやすく想起しやすい。

 

 ・場所法

  Sharlockに出てきた Mind Palace。場所をペグとして情報を結びつける。

  高度だが習得してみたい。

 

情報はネットでなんでも検索できる時代だが、自分の中に記憶を保持しておく能力がないと、溢れる情報から価値ある意味を取り出すことはできないのだろうと思う。

 

 

 

 

火花

又吉 直樹

 

売れない芸人と、彼が師と仰ぐ先輩芸人の話。

芸人さんの作品が芥川賞を受賞したということで話題になっていたが、空虚さと熱さを同時に感じさせる作品の雰囲気は話題性を差し引いてもとても心地よく、没入しやすいストーリーだった。

芸人の感性や笑いに対する真摯さは十分伝わるし、エンターテインメントとして読者を楽しませようという思いが随所で伝わってくる。笑かしたり、寂しくさせたり、感動させたり、心を揺さぶろうとしてくる。

巻末の芥川への手紙も面白い。やはり芸人でエンターテイナーなのだと思う。

話題性が強すぎる本ということで色眼鏡で見られているところもあるが、一度は読んでおいて損はない本だと思った。

 

Kindle PaperWhite

Amazon

 

本を読む道具として重宝している Kindle について。

 

効率的に本を読みたいという思いが強く、本を読む手段について試行錯誤を重ねている。今のところ Kindle は読書の道具として最適解の一つだと思う。

 

・紙の本か、電子書籍か

 

紙の本自体はとても好きだ。特に書店に行って本を探すのは、どこの電子書籍サイトよりも楽しいし、新しい発見を誘発してくれる。

また、大雑把な検索性が高く、「本の大体三分の一くらいの場所で、右ページの中頃にあった」というような記憶で、文章を探すときとか、あるキャラクターの初出の時の描写を探そうとするときは、紙の本のアナログな検索が有利。ぱらぱらとページをめくって、スキャニングをするにも紙の本の方が効率が高い。

電池切れの心配もないし、風呂に持ち込んで多少濡れても大丈夫。

 

ただ、そういった点を差し引いても、電子書籍のメリットは大きい。

数冊の本を常に持ち歩ける手軽さ、海外など気軽に書店にいけない状況でも本を買えたり、複数のデバイス間で読書状況まで共有できたり、辞書の検索がその場でできたりと紙の書籍にはない強みがある。一冊の本の中の検索性では紙の本の方が優れていると思うが、複数書籍に渡る検索では電子書籍の方が優れている。

また文字の大きさを最適化できるのも嬉しい。古い時代の文庫本など文字が詰まっていて読みにくいと感じることが多い。まったく同じ内容でも文字の大きさや行間が最適化されるだけで理解しやすさが違ってくる。

 

いまだ電子書籍が劣っていると思われる検索性などでも、日進月歩で改善されており、いつか追いつき追い越す日が来るのではないかと期待している。

 

今では、原則は Kindle で購入、読みたい本が電子書籍化されていない場合のみ紙の本を買うという感じだ。

 

・専用端末か アプリを使うか

 

当初は iPhone と iPad の Kindle アプリを使用していたが、長時間読んでいるとどうしても目が疲れる。仕事でもほぼ終日PCスクリーンと向き合っていて、通勤時間や就寝前まで発光するスクリーンを見るのは目の負担になる。iPhone の Kindleアプリで長時間本を読んだ後は目が霞む。

 

電子Paperを採用した Kindle 専用端末は目の負担感が全く違う。長時間見ていても疲れを感じにくいし、目が霞むこともない。文字の大きさや画面の明るさも調節できるので紙の本よりも目に優しいと感じる。

 

iPhoneのKindleアプリは、移動中の隙間時間などにさっと読むのに適しているので、状況に応じて併用している。WhisperSync で読んだ最終ページのリンクもできるが、面倒もあるので、専用端末で読む本とアプリで読む本は分けている。

小説やじっくり読みたい本などはKindleの専用端末を使い、家やカフェなどでじっくり読む。ある程度流し読みできるようなビジネス書やハウツーものは iPhoneアプリを使い電車の中やちょっとした隙間時間に細切れで読んでいく。また、雑誌や固定レイアウトのイラストが多用されているような本を読む場合は、iPadの Kindle アプリを使っている。

電子書籍を快適に読むにはデバイスの使い分けも必要だと思う。

 

・無印Kindle、Kindle PaperWhinte、Kindle Voyage、Kindle Oasis

 

専用端末の中で何を使うかにも悩んだ。

読書のための基本機能としてはどれも大きな違いはない。バックライトは欲しかったので、無印Kindleは選択肢から外れた。無印以外は解像度も同等だし操作に対する反応速度などもほぼ同じらしい。

大きな違いはページ送りがタッチスクリーンだけか、物理ボタンも備えているかだ。物理ボタンがないと目次ページなどでページめくりの際にリンクに触ってページが飛んでしまうなど不便を感じることもあり、そこは大きなメリットになると感じた。

物理ボタンを除いては、PaperWhite、Voyage、Oasisの3機種に大きな違いはない。バッテリーの持ちはすでに十分以上だし、カバーが必要だと感じたことはない。

価格は最上位の Oasisでも3万6千円程度と、電子書籍自体の価格と比べたら微々たるものだが、Paperwhite が Amazon Primeのクーポン利用で実質1万円程度で買えることと比べると差は大きい。

Amazonの戦略として、電子書籍の入り口としては原価割れとなるレベルでも手軽な端末を用意し、書籍代で長期的に回収する。機能にこだわるような層に対しては赤字にならない適正レベルで販売していくということだろう。

あきらかに入門機種に対する優遇が見て取れたので、PaperWhiteを購入した。ページ送りの物理ボタンだけはあった方が良かったと思うが、100点満点中98点くらいの満足度で、買い物としては正解だったと思う。

 

・Wi-Fi Only か Wi-Fi + 3Gか

 

本を買うのはWi-Fi接続可能なポイントだけで十分だと考えている。読んだポイントを複数端末間で共有できる WhisperSyncは便利だが、端末ごとに読む本を分け複数冊を並行して読むスタイルにしてからは、WhisperSyncはほぼ使っていない。

海外など3Gの電波を掴まない場所での電池消耗が気になることもあり、Wi-Fi 接続だけの機種を購入したが全く問題ない。

 

・キャンペーン情報あり、なし

 

本を読むたびにワンアクション増えるだけだが、少しでも気軽に読書に入りたい思いがあり、数千円の差であればキャンペーン情報なし一択だった。

 

ということで、Kindle専用端末の PaperWhite Wi-Fi接続のみ、キャンペーン情報なしのモデルを購入し満足している。

 

 

やっぱりページ送りの物理ボタンが欲しいと思ったら、次はVoyageかOasisを試してみるかもしれない。

 

 

AirPods

Apple

 

本ではないが、主に本を読む(聴く)ための道具として使っている AirPodsのレビューを載せようと思う。

 

完全無線のイヤホンに興味があり、Bose の SoundLink on-ear Bluetooth headphone を使っており、音質には完全に満足していたが、大きさや取り扱いの不便さで、使う頻度はそれほど高くなかった。

 

もう少し小さくて持ち歩きやすいもの、充電などが簡便にできるものということで、Apple の AirPods を試してみた。

 

私の場合、オーディオブックや、英語・中国語などのテキストや、ネットラジオを聞くのが中心で、音楽は無料版の Spotify をたまに聴く程度なので音質面はそれほど重要ではない。

使うシーンとしては、片道1時間弱の通勤途中や、マックス2時間程度の散歩の最中なので、電池持ちはそこそこでいい。

 

求める条件としては、

 ・小さく持ち歩きが便利

 ・充電などの取り回しが簡単

 ・ある程度の遮音性

 ・装着感の快適さ

といったところだった。

 

Bose の SoundLink on-ear と比較すると、大きさは完全に AirPods の勝ち。

ケースに入れた状態でもとても小さく、ポケットに違和感なく収まる。

カバンを持ち歩かない散歩のときでも手軽に持ち歩けるし、カバンに入れても重さは無視できるレベル。

 

充電などの取り回しでも、iPhoneとの組み合わせで使うなら AirPods の方が使いやすい。充電ケーブルは iPhone と共通の Lightning なので荷物が増えない。またケース自体が充電器とバッテリーを兼ねているので、使い終わってケースにしまっておけば数日間は充電を気にしないで済む。非常によく考えられている。

 

遮音性については、Bose の勝ち。 AirPods は耳に差し込むカナル型ではなく、耳に合わせて置く感じなので、外部の音がよく聞こえる。電車の中や、自動車の多い道などではある程度音量を上げないと、聞き取れない。 Bose の SoundLink は on-earで密閉式ではないが、ある程度の側圧があり、音量を絞っても聞き取りやすい

外部の音が聞こえるのは逆にメリットとなることもあるが、集中するためには Boseの方が優れていた。

 

装着感については、使う環境によってどちらにも強み弱みがある。

Airpods の購入前は、歩いていて外れてしまわないかという点が一番心配だった。iPhone付属の EarPods と自分の耳の形が絶望的に合わず、5歩歩くとずり落ちてしまう状態で、ほぼ同形状の AirPods はまず自分の耳には合わないだろうと考えていた。

ところが AirPods を試してみたところ、落ちることはほぼなかった。

一番大きいのはケーブルがないことだろう。EarPods ではケーブルの重さに引っ張られてずり落ちていたが、ケーブルレスとなることで引っ張られる感じがなくなる。また形状自体も EarPods とは若干異なるようで、安定性が増していた。

EarPodsが耳に合わない人も諦めずに試してみて欲しいと思う。

それでも AirPodsは落ちてしまわないかという心配は付きまとうので、人混みや激しい動きのある時は Bose の SoundLink  on-ear の方が安心感がある。一方でBoseの方は夏の暑い時期などに長時間装着していると汗ばんで不快になることもあり、そういう環境では AirPods の方が快適だ。

 

ほとんど音楽を聴くのに使っていないので、音質については述べるほどでもないが、Boseの好みに合っている。低音域の粒感が高く小音量でも迫力がある、高音域も伸びやかで弦楽なども美しく聴こえる。AirPodsは遮音性の低さが致命的で、外出先で聴く場合、音質云々よりも外部の雑音が遮断されていないところで、音楽鑑賞の前提条件も満たしていない。

 

最後にデザイン面では、Boseの方が好みにあう。

AirPods はどうしても「耳からうどん」 にしか見えず、カラーリングを含めてなんとかならないものかと思う。 

 

全体的には AirPods に満足で、使う機会は大幅に増えた。

良い買い物だったと思う。

 

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ミステリーの書き方

日本推理作家協会 編著

 

著名ばミステリ作家たちが、ミステリの書き方について、それぞれのテーマに沿って解説をした本。インタビュー形式だが、回答者がめちゃくちゃ豪華。

 

福井晴敏の「まずは人間に興味を持つこと」という論から始まり、東野圭吾のミステリのアイディア探しの方法、宮部みゆきの(だいぶ感覚的な)プロットの作り方、真保裕一の視点の選び方や、石田衣良の会話の書き方などなど、極めて濃度の高い内容。

 

ミステリを書きたいという人だけでなく、ミステリや小説を読むのが好きな人にとっても、作者がどのような意図をもって作品世界を見せようとしているのか理解する助けとなり、より一層読書が楽しくなっていく本だと思う。

 

防壁

真保 裕一

 

SP、海上保安庁特殊救難隊、自衛隊の不発弾処理隊員、消防士といった人を守ることを職業とする人が主人公となる4つの短編の連作。

 

謎解きミステリーとしての側面もあるが、人が死ぬことはなく、主人公が自分の職業に対し真摯に取り組む姿と、それぞれの話で語られる女性との愛の姿が、心を暖かくする。

 

特に最終話の、余炎は好きな話だった。