『失われた過去と未来の犯罪』 小林 泰三
長期記憶を失った人類が、外部記憶装置を使って文明を繋いでいくお話です。
SF小説の体ですが「人格の本質は記憶の蓄積にあるのか、身体性にあるのか」を突き詰めた哲学的思索の書でもあります。
後半は、記憶が外部に出されたらどのようなトラブルが想定されるか、物語形式で問題提起をしています。
外部記憶装置を使って永遠に生き続けたい、と割と真剣に考えている自分にとっては、生々しく重たい話でした。
小林泰三さんは『アリス殺し』など、複雑なプロットを綺麗にまとめ上げるミステリ作家という印象でした。本書のようにリアルな「思考実験」的な内容も面白く仕上げる手腕はさすがです。
早逝が悔やまれます。
リンク先にあらすじと感想を上げました。