歪顔(ビザール・フェイス)
【作者】
前川 裕
【あらすじ・概要】
感染すると自分では気づかないが周囲には分かる程度に顔が歪み始め、数日間すると顔面は完全に崩壊し身体中の血管が破裂して死ぬ「赤死病」が流行した。「赤死病」を防ぐワクチンや治療薬は開発されおらず、先天的に抵抗性を持っているごくわずかな例を除き、ほぼ100%の致死率となる恐ろしい病気だった。大学職員である主人公の周辺でも感染を恐れ、ナーバスな状況になっているが、同僚の女性から「あなたには最後まで死んでほしくない」と言われる。主人公の過去が判明し、驚愕のラストへと繋がる。
【感想・考察】
「唯識論」の話が作中で出てくる。人が「自分・相手・周囲の環境」などをどのように認識しているかだけが、存在の本質であるという考え方。この作品では病気やその感染の描写が怖いのではなく、主人公の自己認識が揺さぶられ、結果世界が不安定になり何を信じれば良いのか分からなくなっていく、というところに怖さを感じる。
エドガー・アラン・ポーの「赤い死の仮面」という短編が元ネタらしいので、そちらも読んで見たい。