中東から世界が崩れる 〜イランの復活、サウジアラビアの変貌
高橋和夫
中東情勢は分かりにくいと感じていたが、この著者の見方はシンプルで理解しやすい。
中東の紛争はイスラム教を軸に語られることが多いが、
実際には地政学的な必要性から生じていて
宗教、宗派の違いが決定的な要因では無いという前提で見ると
イランやサウジアラビアの動きが理解しやすい。
イランはイスラムの国ではあるが、アラブ系ではなくペルシア系の民族が中心となっていること。
サウジアラビアなどは国民を元にした国家ではなく、王の一族と周辺が肥大化しただけの国もどきであること。
中東が不安定であるのは実際の民族や歴史を無視した形で、欧米諸国が国境を引いたことが原因になっていること。
など、キーとなる部分を理解すると、その周辺の流れも理解しやすい。
中東情勢理解の入門には最適な本だと思う。
がんばりすぎるあなたへ 完璧主義を健全な習慣に変える方法
ジェフ・シマンスキー
完璧主義により苦しくなることは多々あるが、健全な完璧主義は正当に自分を高めることにつながる。
完璧主義を否定するのではなく、完璧主義の良い部分を拾い、健全な習慣にしていこうと提唱している。
幾つかのポイントを上げると、
①やればやるほど良いということはなく、収穫は逓減していく
最適なところで見切りをつけるのは、
怠惰ではなく最大限の効果を上げるための工夫。
②すべてを完璧にしようとして重要なことが漏れてしまう
価値を基準とした優先順位付けが必要、大事な部分を判断することが
一番最初に必要。
③ 完璧で無いものを見せると、ポテンシャルの限界をバラしてしまうという恐れ
これは自分に当てはまると感じた。
成果物を見せなければ周囲は自分の実力を高く評価してくれるという誤解がある
誰も自分にそこまでの期待はしていないし、途中でも成果を見せていくことで
フィードバックを得て、より良いものを作り出すことができる。
自分は完璧主義とは程遠いところにいると思っていたが、
ポテンシャルを守ろうとして、動けなくなることは多々あった。
無意味なプライドは捨てて、今自分にあるものをさらけ出していこうと思った。
速読日本一が教える1日10分速読トレーニング
角田 和将
まず前提として、速読自体は目的ではなく
目的を達成するための手段であるべきという点が大事。
早く読むことで時間を捻出できたり、たくさん読むことで人生を豊かにしたりすることが目的であり、1分間に何文字読めるかは大事では無い。
また、速読自体は継続的なトレーニングをすれば、ある程度までは必ず向上する。
肝要なのはは毎日継続的にトレーニングをすることと、完璧主義に陥らず
必要なレベルでできることに手をつけるということ。
速読のポイントとして
① 目線を早く動かす。
目の筋肉をリラックスさせ早く動かす練習が必要。
やり方をつかめば、道具もなくどこでも実践できる。
② 文字を見る幅を広げる
文字の塊をブロックとして認識する。
完全に理解できなくても、要点を理解していく。
③ 瞬間的に認識できる力を上げる
文字を見る速度が早くなっても、認識が追いつかないと内容が理解できない。
脳には可塑性があり、早い処理を習慣にしていれば慣れてくる。
文字をブロックで捉えることは時々意識はしているが、意図的な練習で効率を上げることができるかもしれない。電子書籍は速読に向かないかもしれないが、それでも少しは速度を上げることができるだろう。
2
野崎 まど
野崎まど作品の集大成。
創作とは何か、美しいとは何か、面白いとは何か、愛とは何か
何が私たちを動かし、導いていくのか、突き詰められ狂気の一歩手前か
あるいは一歩先まで見せてくれる作品。
アムリタから始まり、お面の少女、死なない生徒、小説家のつくり方、パーフェクトフレンドと続くシリーズから、ストーリーが収束しているので、順番を守って読むことが大事。
特にアムリタからの伏線の張り方には、鳥肌がたった。
最原最早は 二見に出会ってすぐに、「愛とは何ですか」「私を愛していますか」と聞いていた。
その段階ではいかにもラノベ的な、会話のテンポずらしだと感じ、
アムリタを読み終わった時点では、人格変異の確認だと思っていたが
2を読むと、このポイントは、5年以上にわたる期間でずっと温めてきた伏線であり、不変で最大のテーマだったと気付き、またしても圧倒された。
偏執的な知識欲を描いていたが、相手を知りたいと思うことは愛なのだと定義している。
どんでん返しが繰り返されるストーリー展開は面白いが、全ては表現したいことのために集めた駒で、表現したいことを印象深く刻むためのプロットなのだと知らされた。
恐ろしい作者だ。
パーフェクトフレンド
野崎 まど
10歳にして数学の博士課程を取得した天才少女 さなか が
友達とはなにかを、掴まされていく物語。
友人関係をシミュレーションで”理解した”と考える気味の悪さと
数式では表現しきれない”感情”に戸惑う姿は美しい。
後半は超展開だが、作者が人間関係とは何か、友達とは何か
突き詰めて考える熱量に圧倒され飲み込まれた。
ラノベの語り口で軽く読ませながら、重いテーマを叩き込んでくる。
最後には過去作からの伏線がつながり、驚かされた。
素晴らしい作品。
死なない生徒殺人事件 〜識別組子とさまよえる不死〜
野崎 まど
プロローグで「俺は”人に物を教える”という事を、舐めていたのだ」とあるが
教師としての反省を超えた意味が込められていることに気づいた。
不死となってしたいことは勉強だという。
この作者は”知る”ということに、並ならぬ情熱を持っているようだ。
ここまで読んだすべての作品に、限りなく多くの事を知りたいという好奇心の爆発を感じる。
ミステリっぽいストーリー運びだが、最後まで読むと純粋な謎解きでは無い。
ただひたすら引き込まれる話だった。
四角形と五角形の中間の図形というモチーフも頭を離れない。
読者の知識欲や好奇心を刺激する作者だ。