午前0時のラジオ局
ラジオ局での「ちょっと不思議なできごと」の物語です。
現役のアナウンサーさんが書いているだけあって
仕事内容の描写はリアリティと迫力のあるものでしたが
設定はファンタジー寄りです。
6話ともとも悲しいストーリーなのですが、
主人公たちの関りをみて「救われた」気持ちになりました。
【タイトル】
午前0時のラジオ局
【作者】
村山仁志
【あらすじ・概要】
ラジオ局を舞台にした6つの連作短編集。
洋館ラジオ局
2年目アナウンサー 鴨川優はラジオ局に異動し、
ディレクター蓮池陽一の指名を受けて
帯番組のパーソナリティーに大抜擢された。
番組アシスタントの選抜面接で深夜まで局にいた
優と陽一は、内気な少女 山野佳澄が残っていたことに気づく。
その後、ゲリラ豪雨による発電所の停止で
山間の村が孤立しているとの情報が入る。
優と陽一と佳澄の3人は緊急ラジオ速報で
村の人々に情報を届け続けた。
最後の一球
優と佳澄の二人がパーソナリティーとなる新番組
「ミッドナイト☆レディオステーション」が始まった。
初回放送でスタジオの照明トラブルが発生し
不可思議なファックスメッセージが届く。
ファックスは「6年前に死んでしまった野球少年」
からのメッセージだった。
番組終了後、車で休んでいた優は
高校時代に一緒に甲子園を目指していた親友と出会う。
月夜の夢
陽一は「犬の言葉を翻訳するプログラム」を完成させ、
優と佳澄は犬の声を録音して集めていた。
公園で寂しそうに鳴いていた犬の声を翻訳したところ
「つき、かわ、にじ、むこう、まってる、とおい」と繰り返していた。
プレイボール
高校野球を観て実況中継の練習をしていた優は
少し前までチームの監督だったという男性から
「ピッチャーの手からボールが離れる瞬間には
『投げました!』を言い終えているように」
というコツを教わった。
局の先輩アナウンサーである 海野あおい は
「大事な人を取られたから、野球は大嫌い」だという。
光のフルート
その日の番組、優と佳澄は一通の長い手紙を読んでいた。
手紙の送り主の女性は、第二次世界大戦の終戦直前に
夫とお腹にいた子供を亡くし、その後、彼女自身も
長崎に堕ちた原子爆弾の影響で長らく意識を失っていた。
意識を失っていた3ヶ月の間、女性はずっと
夫と生まれなかった子供の3人で過ごしていた。
彼女が目覚めたとき、手元に残っていた夫のフルートが
「誰か必要な人に届けたい」という言葉を添えて
ラジオ局に送られてきた。
いつまでも君に
「とある女性」が、海野あおいアナウンサーや
局のマスコットとなっていた犬の力を借りて
ラジオ局に訪れた。
陽一ディレクターが何十年もの間
ラジオ番組の制作を続けてきた理由が明かされる。
【感想・考察】
ラジオ局を舞台にした物語。
設定は完全にファンタジーで、
全編で悲惨な話がベースになっているのだが
主人公たち真摯で優しい視点を通して見ると
何だか救われたような気分になる。
好き嫌いの別れるストーリーだとは思うが
私は面白いと思った。
続編もあるようなので読んでみよう。