毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

雨やどり

新宿を舞台に繰り広げられる「愚者たちの物語」です。

半村良さんの作品ですがSF的な要素はほぼなく、

バーで顔馴染みたちと一緒に飲んでいるような

こじんまりとした暖かさを感じる話でした。

 

【タイトル】

雨やどり

 

【作者】

半村良

 

【あらすじ・概要】

バー「ルヰ」のマスター仙田を中心とした

新宿の夜の街の人間模様を描く8編の短編集。

 

おさせ伝説

仙田はバーの客で会った建築士と意気投合し

いつか仙田の店を持つ計画を立てていた。

 

そのころ仙田が働いていたバー「壺」には

多可子というホステスがいたが、

彼女は客に口説かれると断ることができないたちで

夜毎男の誘いに乗っていた。

多可子に惚れた誠実な室谷も

彼女の素行を知り離れていってしまう。

 

そんな折、建築士が仙田にバーを持つという

かつての約束を果たす時が来た。

彼は仙田に交換条件として

「母の面倒を見て欲しい」と頼む。

 

ふたり

和風美人の芳江と洋風美人の京子は

新宿の小さなバー「ふたり」の共同経営者だった。

芳江と京子の二人は、店に訪れるようになった客で

渋みのある山崎に好意を抱き始める。

仙田から「山崎は殺し屋らしい」と聞いた二人は

その怪しげな魅力により深く惹かれていく。

 

新宿の名人

仙田が自分の店「ルヰ」を開店することとなり

仲間たちは開店祝いを贈ることを計画する。

「ふたり」の芳江と京子が中心となって取りまとめ

高額な贈り物をしようと計画したが、

「壺」のママが合同で贈ることに難色を示し

計画は分裂してしまった。

噂を聞いた仙田は「新宿の名人」

と呼ばれる男の力を借り事態を収拾する。

 

そして後日「新宿の名人」は「ふたり」の京子と

新宿で店を出す計画をぶち上げる。

 

新宿の男

かつての新宿の女「おまき」の息子が学生運動の内ゲバで狙われ、

滝口は彼を自分の店で匿っていた。

滝口の店を包囲するように集まった男たちに

入店させないため、界隈の仲間たちが集まり

やがて「おまき」が導きによる「同窓会」のような夜になる。

 

かえり唄

かつて仙田が働く店の客だった 谷本まさる は歌手だったが

1曲だけヒットした後は全く売れず、今では工場で働いていた。

工場近くの食堂で働く女性は、ただ一人谷本のファンとして振る舞う。

しかし谷本があるバーで歌い、心からの賞賛をもらった時

その女性は谷本のファンであることを止めてしまう。

 

雨やどり

ある雨の朝、仙田は自分が住むアパートの前で

雨やどりをしていたホステス邦子に会う。

その後、仙田と邦子はお互いに店を行き来するうちに親しくなり

やがて一緒に暮らすようになる。

 

昔ごっこ

関西の地上げ屋が、歌舞伎町の老舗キャバレーである

「ゴールデン・ベア」の土地を狙ってきた。

地上げ屋がゴールデン・ベアの周囲の土地を買い上げ、

クラブを出店してきたのに対抗し、

「古い新宿」を守ろうとする仲間たちが集う。

 

愚者の街

銀座から新宿の店を転々としてきた駒井は

数十年ぶりに再会した友人に身の上話をする。

 

かつて駒井たちが働いていた店の客の飯田は

小説の新人賞に入賞したのを機に退職したが

その後全く売れず、易者として生活をしていた。

 

駒井自身もいつか小説家となったが

いつか飯田のような「愚かな人間」への共感を失いつつあった。

 

【感想・考察】

どこかで打ち手を間違えてしまうような

「人間の愚かさ」を愛し慈しむような話。

後半の3作、「雨やどり」、「昔ごっこ」、

「愚者の街」が素晴らしい。

 

人間は愚かで、

正しいと思ってもできないことがあるし

正しくないと思っていてもしてしまうことがある。

SNSの影響か「正しくないことを糾弾しないこと」が

リスクとなり得る風潮だが

「愚かさを赦す」ことが必要な時もあるのだ思う。

 

「昔からの友達と、古い小さな店で、

酒を飲みながらバカ話をしたくなる」

あまり酒が好きではない自分でもそう思うような話だった。

 

 

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