毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

君はフィクション

中島らも氏による短編集です。

 抜群に「格好の良い」生き方が描かれています。

 

【タイトル】

君はフィクション

 

【作者】

中島らも

 

【あらすじ・概要】

 12編の短編集。

ホラー的な作品から、1970年代のロックを描いたものなど幅広い。

 

山紫館の怪

地図を作るための調査で男は山紫館に泊まる。

宿の女将に牡丹鍋をごちそうになった後、

夜中ふと目覚めると、天井に幽霊が浮かんでいる。

 

君はフィクション

作家の伊藤は清楚な女性の香織と付き合っていた。

 

ある日、香織が約束の場所に来れなくなった時

香織の双子の妹詩織が現れた。

伊藤は姉と全く違うタイプの詩織と話すうち

あっという間に打ち解けていった。

 

コルトナの亡霊

新聞記者の可児は、恐怖のあまり途中で観客が全員帰ってしまう

「コルトナの亡霊」という映画の噂を聞く。

映画評論家や字幕翻訳者たちも

「60分で耐えられなくなり、見るのを止めた」という。

サブリミナル効果を研究する心理学者にも話を聞き

フィルムをコマ割りで確認するが、異常は見つからない。

可児は椅子に縛り付けてもらい、映画を最後まで見ようとする。

 

 DECO-CHIN

音楽雑誌の記者である松本は、上司の命令で

つまらないバンドの取材をさせられ腐っていたが、

その後にでてきた「COLLECTED FREAKS」というバンドの

演奏に度肝を抜かれる。

COLLECTED FREAKSは、巨人症や双頭など

身体的な異常をもったメンバーの集まりだったが

外見以上に演奏レベルが稀有なものだった。

松本はCOLLECTED FREAKSへの加入を希望するが

「健常者」は加入できないと拒否される。

 

水妖はん

フリーライターの横山は、とある村落で「水妖はん」の噂を聞く。

平家に滅ぼされた地域の原住民たちが残した

「小さな虫、半ばの虫、大きな虫」の呪いの

大きな虫が水妖はんなのだという。

 

43号線の亡霊

鈴森はあらゆる快楽に飽き、新たな刺激を求めていた。

「43号線に競輪選手の亡霊が出る」と聞いた鈴森は

夜毎、ポルシェで43号線を走っていた。

 

結婚しようよ

おれとポコは、椛の湖で行わる

「第3回フォーク・ジャンボリー」を見に来ていた。

錚々たるメンバーが集う野外フェスだったが

途中「フォークソングが商業主義に堕した」と

煽る集団に占拠される。

帰りのバスの中で、おれはポコに「結婚しようよ」を歌う。

 

ポケットの中のコイン

夜の街に立ちすくんでいた僕は、

「世界と共に滅びるかどうか」をコイントスで決めようとした。

16年後の今、その時のコインはポケットにあるはずだが

いつかは何かに使い、巡り巡ってどこかの街角に立ち尽くす

少年のポケットに納まるだろう。

 

ORANGE'S FACE

地方出身の娘 「オレンジ」は

部屋の窓から見かけた男と瞬間的に恋に落ちる。

オレンジと男は二人で暮らし始めるが

男は交通事故であっけなく死んでしまう。

それからオレンジは「夢」に襲われ続け静かに老いていった。

 

ねたのよいー山口冨士夫さまへー

京都のライブハウスで「村八分」のライブをみた俺は

山口冨士夫の爆音のギターに魅了される。

 

狂言「地籍神」

コントの台本のような体裁。

太郎と次郎が「地籍」のため測量しているとき

邪魔だった祠をのこぎりで切断してしまう。

すると眠りを覚まされた地の神が登場し

太郎次郎と一緒に踊りだす。

 

バッド・チューニング

調律師である私は、人間の歪みも正そうと考えている。

恋人の和美は「私を調律することはできない」といい

私のもとを去っていった。

母の葬儀の日、家にある楽器をすべて完全に調律していて

葬儀の時間に遅れてしまい、兄からは縁を切られる。

「正しさを求めることが狂った行為である」ことに気づいた私は

整然よりも混沌を好む人間になることを誓う。

 

 

【感想・考察】

 中島らも氏は「調律された生き方への反発」が徹底している。

 

束縛を嫌い、自由に生きたいと願う気持ちはあっても

社会の同調圧力の多重攻撃に抗い続けることは難しく

楽な生き方に落ち着いてしまっている自分の目から見ると

らも氏の強さに惹かれるものがある。

 

らも氏は、「サブカル」を表舞台に引っ張り出す過程で

酒・ドラッグ・ロックなど「社会からのはみ出し方」自体が

型にはまりつつあることを理解していたのだろうが、

それでも、縛る鎖を振りほどこうとあがき続ける姿勢が

著作を通して見えてくる。

 

特に印象に残った話は、

ストーンズはライブ前にギターを完璧にチューニングした後

ギターを床にたたきつけ、少し調弦を狂わせていたということ。

「バッド・チューニング」の美しさというものがあることは

間違いないのだろうと思う。

 

 

 

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