サクラ咲く
学校を舞台にした3つの連作短編集です。
辻村深月さんには、時々影を感じますが
本作はまっすぐに優しい作品でした。
この作者の作品では、いまのところ一番好きです。
【タイトル】
サクラ咲く
【作者】
辻村深月
【あらすじ・概要】
3編の連作短編集。
約束の場所、約束の時間
若美谷中学の陸上部で活躍する朋彦のクラスに
地味な転校生 悠 がやって来た。
朋彦は、自分と 悠 はタイプが違い
交わることがないと思っていたが、
悠 が持っていたゲームをきっかけに親しくなっていく。
サクラ咲く
若美谷中学一年生の マチは
自分の意見をはっきり言えない性格を
直したいと考えていた。
小学校時代からの友人 琴穂の推薦や助言でで
学級委員の書記になったり
希望していた陸上部を諦め科学部に入ったりした。
それでも、マチは学級委員長の みなみ や、
科学部の 奏人 たちと親しくなり
中学校での生活を楽しみ始めていた。
そんなある日、マチは図書室で借りた本に
「サクラチル」と書かれたメモがはさまれているのを見つける。
その後も、マチが借りた本の何冊かに
まるで マチに向けたようなメッセージがはさまれていた。
世界で一番美しい宝石
若美谷高校で映画同好会を立ち上げた一平は
主演女優を探していた。
図書室で、三年生の 亜麻里 先輩を見つけ
何としても映画に出て欲しいと口説き続けるが
亜麻里先輩は頑として受け付けない。
しつこく食い下がる一平に亜麻里は
子供のころ読んだ 「世界で一番美しい宝石の本」を
探し出してくれたら出演しても良いと交換条件を出す。
児童文学に詳しい司書の先生や、
出版社などに問い合わせるが
どうしてもその本を見つけることができない。
【感想・考察】
辻村深月の作品は、学校生活で葛藤を抱える
子供たちの闘いなど、繊細な感情を描くことが多く
時に表現が暗くなることもある。
だが本作は、真っ直ぐに暖かく、
ただただ 感動した。
3つ短編集だが、話の繋がりが見えてくると
友達との約束を果たすため頑張っていた朋彦や、
自分に正直に生きることができたマチの姿が格好良くて、
心が暖かくなる。
素晴らしい作品だった。
