毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

『黒の貴婦人』 西澤保彦

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「タック&タカチ」シリーズの短編集。
大学在学時から卒業後数年まで、長編の間を埋めるような6つのお話です。

 

このシリーズでは「安楽椅子探偵」的なミステリがメインです。
現場の捜査も、関係者からの聞き取りもなくて、誰かの報告をもとに「純粋に論理的に」時に妄想レベルまで飛躍しながら推理していきます。現場検証もないので正否が分かるもの後日。

こういうスタイルだと、やっぱり短編の方がキレがいいですね。
長編の『麦酒の家の冒険』では、「ビールが詰まった冷蔵庫」という謎だけで、長い話を引っ張るのにグダッた感がありましたが、本書の短編『ジャケットの地図』は、短い分かえって深く刺さりました。

順番バラバラですが、シリーズ作品を続けて読んでると、登場人物たちの成長が見えるのも面白いですね。

『スコッチ・ゲーム』とか『仔羊たちの聖夜』では「善意でコントロールしようとする大人たち」への嫌悪感が前面に出てくる作品で、強烈な反抗心が見えました。
一転、本作では「コントロールしたくなる大人側の視点」も語られ、その上で「やっぱり相手の自主性を尊重する」決断をみせたりと、成熟してきた感じです。

酔っ払って馬鹿騒ぎしていた大学生が、成熟した大人になって行く様子は、みていて嬉しいのだけれど、一方で「青春の終わり」的な寂しさもありますね。
とくに本書最終話の『夜空の向こう側』は感慨深い。

リンク先にあらすじと感想を上げました。

 

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