『ヒポクラテスの試練』 中山七里
法医学ミステリ「ヒポクラテス」シリーズの第3弾!
シリーズ3作目で急にスケールが広がりました。
前作までは「司法解剖制度」がないがしろにされることで「多くの異状死が闇に葬られている」ことに警鐘を鳴らしていましたが、本作では「法医学者」の範疇を超えて、マイノリティ差別の醜さを描き切っています。
本書の出版は2017年、前年にトランプが大統領に選出され、アメリカで「白人至上主義の根深さ」がはっきりとしてきた時期。
中山氏はマイノリティ差別が表面化することを予想していたのかもしれない。その後実際に経過による黒人の射殺事件が起きるなど、衝突は深刻化しています。
犯人の戦い方には「静かで深い」怒りが感じられます。直接的な暴力を伴うデモよりも、秘めた怒りの深さの方が怖い。
解剖学者視点であれば、人種なんて「皮一枚」の違いで、腹を掻っ捌いて内臓を引きずり出せば、大差ないということなのかもしれません。
実際に、身体についてそこまで即物的な見方をすることは難しいけれど。