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『コンテンツのつくり方』 髙瀬 敦也

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ヒットコンテンツは極限まで「引き算」されている。

何も加えてはいけない。

 

 

タイトル:コンテンツのつくり方

作者  :髙瀬 敦也

オススメ度

 分かりやすさ   ★★★★☆

 役立ち度     ★★★★★

 おもしろさ    ★★★★★

 総合オススメ度  ★★★★☆

 

要約

フジテレビで企画を行い、現在はコンテンツプロデュースのコンサルティングを行っている高瀬氏による、コンテンツの作り方についての本。

どんな形であれ、コンテンツを作って育てようと考える人であれば、得るものがある内容だと思う。

 

コンテンツを作る

「狭めること」でコンテンツ化されていく。

「ラーメン」→「東京ラーメン」→「浅草ラーメン」→「下町屋台の昔風ラーメン」と範囲を狭めるほどに、イメージが明確になる。

自分に関係あるのかどうかがはっきりするので、外れる人には興味を持ってもらえないが、関係ある人には深く刺さる。

テレビ番組のタイトルでも「お金が分かる番組」より「75歳からの年金生活を考える番組」の方が、ターゲットを絞る分深く刺さる。

 

予算や時間などの制限があることもプラスに働く。

夕食のメニューを考えるは大変だが、冷蔵庫にある豚肉と玉ねぎだけで何か作るのであればイメージがわく。誰かが「中華を食べたい気分」と言えばヒントになる。「制約」は発想を生むエンジンになり得る。

 

目的が明確であれば、どのようなコンテンツを作るべきか、何は変えて良くて、何を変えてはいけないのか、という軸が定まる。

大げさでも「世のため人のため」となる目的を持つべき。

 

人は飽きるものだが、変化を嫌うところもある。コンテンツを作るときは0から1を生み出すより、すでにある1を上手くアレンジすることを考えればいい。

オリジナルに何か付加するのは蛇足になりやすい。ヒットコンテンツというのは、極限まで引き算されたものであり、加えることはマイナスにしかならない。

 

コンテンツは受け手の視点で考えることが必要。自分というバイアスを避ける意識が必要。

例えば PS3 と Wii の戦いで、技術がベースであるSONY はスペック的に優位だったが、おもちゃ屋がベースである任天堂は、技術を利用して楽しいおもちゃを作ろうとして成功したという。一概には言えないが、ユーザー目線が大事だと言えるだろう。

 

受け手の視線が大事とはいえ、ターゲットに媚びてはいけない。特定層の女子のため、ライバル同士の男性キャラクタ二人を作っておくとかいうのが露骨だと、特定層女子は見透かして醒めてしまうそうだ。

子供も、はっきりと「子供向け」と思って作ったコンテンツより、大人向けコンテンツの分かりにくさにクールさを感じたりする。「老人向け」も同じだ。高齢者は自分が「老人」だとは思っていないし、少なくても自分はいわゆる「老人」とは違う感性を持っていると自認しているものだ。

 

伏線を張っておくのも、後で活用でき便利。使えなければ放置すればいいだけだし、うまくはまれば大きな効果を生み出せる。エヴァンゲリオン効果。

 

 

 

コンテンツを広げる

コンテンツを広げるには、まず何よりも「熱量」が必要。最初のターゲットは狭くても、その熱量・熱狂を伝えられるかどうかが大事。

 

熱量を伝えるには「細部」へのこだわりが必要。大事なポイントには徹底的にこだわる。逆に明確な目的がないと、ただの無駄なこだわりになってしまう。

 

コンテンツの狙いによって、熱さをコントロールする必要がある。ニッチを狙うなら狭く暑苦しい内容で良いが、例えばテレビ番組なら多くの人に嫌われない内容にする必要がある。

イクラが大好きな人であれば「イクラ丼」は魅力的だが、イクラがちょっと苦手な人は、色々楽しめる「海鮮丼」の方がいい。間口を広げることでニッチからマスに対応できる。ただ、イカでもサーモンでも嫌いな人はいるので、誰にも嫌われないようにしたら「ごはん丼」になってしまい、面白味がない。バランスが大切。

 

名前を定着させるのは難しいが「○○のやつ」と認識してもらえると強い。SEO対策にもなる。芸人の名前は憶えてなくても「裸でお盆もってるやつ」とか「赤い服着て金髪の」とか、受け手目線で引っ掛かりをつくることが効果的。

 

また、敢えて「気持ち悪い」という違和感を感じさせるのも印象を強める方法。

音楽でも、ちょっとした不協和音やリズムのズレは「気持ち悪い」が気になり、フックとなる。ゆるキャラも初見ではちょと不気味なものが多かったりする。

ただこれは、気持ち悪くない「基本」が分かったうえで、敢えて外すテクニックであり、基本を経ずに狙うとうまくいかない。

 

マネのしやすさも、コンテンツを広げるための重要な要素。「マネされて拡がっていくことこそが文化」だと考えている。

 

コンテンツが拡がっていくと、飽きられ陳腐化してしまうことがあるが、そこでリニューアルしたことを強調してはいけない。ロングセラーの「パインあめ」が、味や溝の数やサイズなど、時代に合わせて微妙に変えながら、変わったことに気づかれないようにしているのは一つの好例。

 

コンテンツもビジネスであれが、うまくいかなければ撤退する判断も必要だが、ある程度の期間が経過してやっと浸透していくこともあり、ガマンも大切。

 

 

テクノロジーとコンテンツ

以前はメディアがコンテンツを包括していた。出版社が本とすることでコンテンツが成立し、テレビが番組にすることでコンテンツが成立していた。

だが情報発信のコストが下がったことで、コンテンツが適したメディアを自由に選べるようになってきている。メディア選びもコンテンツの一部であり、コンテンツ自体の優劣がより純粋に結果に反映されるようになった。

 

 

 

コンテンツの終わらせ方

コンテンツの究極の栄誉は、マネされて一般化されること。

例えば「ウォシュレット」は商品名だが、温水洗浄便座を指すとき一般に使われる言葉となっている。作り出したコンテンツが生活に入り込んだというのが最大の成功だと考えられる。

 

 

 

感想・考察

メディアがコンテンツを支配していた時代から、コンテンツがメディアを選ぶようになってきた、というのは面白いと思う。

 

そのコンテンツが「どういうメディアを使うか」という選択自体も、コンテンツの一部だというのもその通りだろう。

最近でも Twitter発信のコンテンツが急にメディア展開を広げて反感を買っていた。これは、Twitterであればこそ「草の根感」とか「僕が見つけたコンテンツ感」があって、それがそのコンテンツの魅力の「主要な部分」だったことを軽くとらえていたからなのだと思う。

 

著者は「今後メガトレンドは生まれない」と言い切っている。テレビなどが新しく、大多数に共有されるコンテンツをつくることが格段に難しくなっているのは間違いないだろう。逆にニッチであっても世界に発信できれば 十分な規模になり得るから、小規模な発信者が増えてくるのだろう。

 

ただ、お金のかかる継続的な取材とか、膨大な下準備が必要なイベントなど、規模が必要なビジネスもあるし、そこが空洞化してしまうのも怖いな、とは思う。

 

 

 

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