毎日一冊! Kennie の読書日記

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『彼女と彼女の猫』 新海 誠、永川 成基

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タイトル : 彼女と彼女の猫

作者   : 新海 誠、永川 成基

オススメ度

 ねこの気持ち   ★★★★

 人間の気持ち   ★☆

 世代を超えた絆  ★★★

 総合オススメ度  ★★

 

あらすじ

ネコから見た人の世界と、人から見たネコたちを描く、4つの連作短編集。

映画「天気の子」や「君の名は。」などの監督、新海誠さんの初期作品のノベライズ。

  • ことばの海

美術系専門学校の職員として働く美優は、ある雨の日、オスの白猫を拾いチョビと名付けて育てる。

 

美優の引越しに親友珠希が連れてきた年下の男性ノブと深い関係になるが、間も無く会う機会が減っていく。「私たちは付き合ってるよね」とさえ聞くことができないでいた。やがて本当はノブが好きだった珠希が二人の関係を知り離れていく。美優がノブとの関係を確認しようとするとノブも離れて行ってしまった。

 

チョビは散歩中に「生命の創造の時を知る」という老犬ジョンから声をかけられる。 チョビの母親シロの縄張りを彼に任せるという。

チョビはミミという白い仔猫から好意を寄せられるが、チョビにとって美優がコイビトだった。

 

チョビは美優の問題を解決することはできない。

ただそばにいるだけ、だった。

  • はじまりの花

美優が働く美術系専門学校に通う麗奈は絵の才能に恵まれていた。教師が押し付ける型にはまったスタイルに反感を覚え、才能のない同級生達を見下していた。

学校に通わなくなってしまった麗奈のアパートに美優が訪れ、彼女の描いた絵の素晴らしさを評価し、美大受験をあらためて勧めてきた。

麗奈はインターンとして大手デザイン事務所に行き、そこのチーフと懇意になる。チーフから絵を見たいと言われ部屋に招き入れるが、彼は絵には全く興味を示さず急に襲いかかられる。

なんとか逃れた麗奈だったが、絵を描くことを止めてしま。見下していた同級生がコンペに作品を出展していることを知り、置いて行かれたような悲しさを覚える。

 

ミミは麗奈からご飯をもらい懐いていた。ミミはチョビが好きだったが相手にされなかった。散歩中に出会った強い猫、カギシッポの子供を身籠もるが、出産前にカギシッポが死んでしまったことボスネコのクロから聞く。

もともと体力のないネコだったシロは出産の負担で死を覚悟するが、麗奈に助けられ一命を取り留める。

 

そしてミミは麗奈の飼い猫になった。

  • まどろみと空

葵は親友の麻里と共同で漫画を描いていた。

麻里がストーリーを考え、葵がそれを絵にしていたが、漫画雑誌からオファーを受けたチャンスのときに、麻里は急に話をかけなくなってしまう。

いらだった葵は口汚く麻里を罵ってしまったが、その夜、麻里は心臓発作で死んでしまった。それから葵は一歩も家を出ることができなくなってしまった。

 

葵を心配した両親は、ミミの子供クッキーをもらい受け、葵に与えた。

 

クッキーは母親ミミの具合が良くないと聞き、お見舞いに行くことにする。

クッキーが逃げ出し、なんとか助けなければと思った葵は麻里のミサンガから力をもらい、家を出てクッキーを追った。

  • せかいの体温

老犬のジョンは自らの死期が近いことをさとり、ボスネコのクロに飼い主の志乃さんのことを頼む。月の綺麗な夜、ジョンはチョビとクロに「私はいつか戻ってくる。その時は君たちの願いを叶えてあげよう」と伝え、二匹の前から消えてしまった。

 

志乃は義父と義母を介護していたが、二人ともなくなってしまい、夫は別の女性の元に行ってしまったため一人暮らしをしていた。

ある日、志乃のもとに甥っ子の亮太がやってくる。彼はブラック企業で追い詰められ「カップラーメンの作り方がわからなくなるほど」壊れてしまい、逃げ出してきた。やがて亮太の父がやってくるが、志乃はクロの加勢も得て亮太を守りきる。

 

そして冬のある日、ジョンの気配を感じたクロとチョビは雪の降る小高い丘を駆け上る。 

暖かくて優しい話だ。

独立心旺盛で自由だが、やっぱり人間が好きなネコたちが可愛い。

 

新海誠さんはストーリーの組み立てがとてもうまいと思う。

ネコの目から見た人間と人間の目から見たネコを、場面を切り替えて描写するのが、とても鮮やかな効果を生んでいる。

例えば美優の悲しみが、まず本人の独白で語られるが、その直後ネコ目線での距離を置いた描写がかえって深い痛みを感じさせる。

それぞれの短編の中でも、ネコ目線と人間視点で重層的だが、さらにそれぞれの短編同士もまた重層的に絡み合う。

別々のストーリーで悲しみを知った人が、悲しみゆえの優しさを持ち寄って、最後にすべて繋がっていく。

 

ラストの数行が素晴らしい。

「この世界が好きだ。僕は、はっきりとそう思った。

僕の考えたことは、彼女にも伝わっている。

彼女も多分、この世界が好きなんだと思う」

こういうベタなハッピーエンドの優しさが大好きだ。 

 

 

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