毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

『本バスめぐりん。』 大崎 梢

 移動図書館を舞台に、本にまつわる小さな謎を解く5話の連作短編集です。

作者の大崎梢さんは「成風堂書店シリーズ」でも、本や書店にまつわる謎を書きながら、本自体や本の出版や流通に携わる人に対する愛情を感じさせています。

本作も、ミステリとして謎を解くというよりも、移動図書館の職員と利用者たちの交流が描かれている「人情もの」っぽいノリがメインでした。

ホッとする暖かさのある一冊です。

 

タイトル

本バスめぐりん。

 

作者

大崎 梢

あらすじ・概要

  • テルさん、ウメさん

定年退職した照岡は友人の紹介で、バスによる移動図書館「本バス めぐりん号」の運転手として働き始める。めぐりんは図書館へのアクセスが悪い場所に巡回して本の貸出を行う図書館のサービスだ。照岡は慣れない仕事に戸惑うが、明るく積極的な司書の梅園の助けを得て徐々に馴染んでいく。40歳は年の離れた二人だが、テルさん、ウメちゃんと呼び合うようになる。

ある日、ある女性が「前回、本に大事なものを挟んだまま返却してしまった」と申し出てきた。次にその本を借りた女性に聞いてみたところ何故か挙動不審となり「知らない」という。

コージー・ミステリーを愛する二人の女性はそれぞれ何を抱えているのか。

 

  • 気立てがよくて賢くて

市内の高級住宅エリアである殿ヶ丘は住民の高齢化が進み、徐々に寂れてきていた。本バスの利用者も減り続け巡回先から外さざるを得ない状況となっていく。

殿ヶ丘のめぐりん愛好者たちは利用者を増やす方法を考え、近くの幼稚園にも利用してもらうことを考えたが、幼稚園の関係者からは「お互いに嫌な思いをすることになるからやめた方がいい」という。

過去にどのような確執があったのだろうか。

 

  • ランチタイム・フェイバリット

めぐりんの巡回先の一つに昼休憩時間のビジネスエリアがあった。そこに訪れる好青年 野庭にウメちゃんは好意を寄せているようだったが、野庭はいつも近くのエリアを見つめ何かを気にしているようだった。

野庭は図書館で開催されたイベントに来場した後、めぐりんに来なくなってしまう。

 

  • 道を照らす花

団地エリアの巡回先で女子中学生の杏奈がめぐりんを利用していた。杏奈は前年に母を病気で亡くし、父と二人で団地に引越し生活していた。杏奈はとても可愛らしく、めぐりんの利用者たちから人気があったが、学校では友達を作るのに苦労しているようだった。

ある巡回日、杏奈は急に泣き出し本を借りずに帰っていった。次の巡回日にも彼女は姿を現さなかった。

テルさんとウメちゃんは杏奈がいつも借りていた本から彼女の思いを探る。

 

  • 降っても晴れても 

めぐりんが市民祭りに参加することになり、テルさんとウメちゃんは準備に奔走していた。

そんな折、図書館宛てに苦情の手紙が届く。「本バスの運転手が特定の女性だけに親しく対応し、他の利用者としては気分が悪い」という内容だった。テルさんには全く心当たりがなく、一緒に行動しているウメちゃんもそんな様子は全くないと言うが、やはり気になってしまう。

手紙の内容から真相を推理していく。

 

感想・考察

成風堂書店シリーズ」の多絵や、「ビブリア古書堂シリーズ」の栞子さんのように、本の知識と洞察力を兼ね備えた探偵役がいるわけではない。

司書としての本の知識を持ち、図書館職員としての経験もあるウメちゃんが、データベース的ワトソン役をこなし、本についての知識はないが人の心の機微を知る老練のテルさんが謎を解いていくパターンだ。

まあ、とはいえ、謎解きがメインという訳でもなく「本」を媒介とした人と人の繋がりが主なテーマなのだろう。基本的に登場人物はみな優しく暖かい。

本が好きな人はその感想を誰かに話したり、自分とは違う読み方を刷る人の話を聞いたり、自分の好きな本を進めて読んでもらったり、面白い本を紹介し絵もらったりすることは本当に嬉しい。

大崎さんが描く 本を通した交流の暖かさが心地よい。 

 

 

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