毎日一冊! Kennie の読書日記

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サイレントサード

「オカルトトリック」など、独特の雰囲気を持つミステリを書いてきた八槻翔さんの、ホラー寄りのミステリです。

人の心の弱さを熟知し、そこにつけ込むことを生業とする詐欺師でも、自分自身の心の弱さに翻弄されてしまう。その姿が切ない話です。

 

タイトル

サイレントサード 

 

作者

八槻翔

 

 

あらすじ・概要

 アメミヤリョージの詐欺現場を見とがめた水島凛々香が「詐欺のやり方を教えて欲しい」と頼み、リョージの指導を受けた凛々香はオレオレ詐欺で老婦人を騙すことに成功した。

 

会社を辞め一文なしだという凛々香はその後もリョージに付きまとい、アンケートを装った個人情報収集などをしていたが、その途中で「犬神憑き」について語る怪しい男 尾形と出会った。その頃、凛々香たちの住む街では、犬の首なし死体が地面に埋められるという事件が連続して発生していた。リョージは犯行がエスカレートするに違いないと考え、凛々香は尾形を疑い始める。

 

凛々香とリョージはずっと一緒に行動をしていたが、リョージは凛々香を疑い始る。彼女の素性を情報屋に探らせ、ライターであることを隠していたことが分かり、疑いを深めていく。

 

犬神憑きの呪詛を完成させたいと尾形は、祖母が呪いを行ったいた生まれ故郷に戻り、ついには人間の子供に手を出し殺してしまう。さらに強い呪いのため大人の生贄を求めて凛々香を探し始めた。そしてちょうどそのタイミングで凛々香から尾形に連絡を入れ

 

 

 

感想・考察

詐欺師アメミヤの「騙される奴が悪い」という言葉は自分を守るためのものなのだろう。良心を押し殺して周囲の人間を食い物にしていく真性のクズであるのは間違いないが、自身の心の弱さと葛藤する姿は憎みきれない。

 

「因果応報」で「自業自得」だが、シンプルな「勧善懲悪」ではない。

「スカッとする」より「胸くそ悪い」描写の方が多いが、最後には切なさが残る。

 

加えて、詐欺師との情報戦も面白い。

どの場面で、どういう効果を期待して、どういう情報を出していたのか、後から振り返るとよく計算されていることに驚かされる。

 

詐欺の描写自体も興味深い。オレオレ詐欺も進化していると感じる。

老婦人の娘のフリをして詐欺を仕掛ける本作のケースでは、

・まずは被害者の家族関係などを徹底的に調査。

・「母親が娘にハムを贈った」という個別具体的な情報を買う。

・娘の側にストーカー紛いの電話をかけて電源を切らせ、確認を阻止する。

・最初は「忘れ物を探すのを手伝って欲しい」とハードルの低い依頼をする。

・ある程度動き始めたところで「お金がなくなって困った」という話をすると「一貫性の原則」からて最後まで助けようとする傾向が高い。

・悩み相談する暇を与えないよう、ギリギリのタイムリミットを設ける。

・最初は娘が受け取りに行くとして安心させ、現金を用意した後で代理人が取りに行く話をする。

等々、これだったらウチの親も騙されるかも、、と思うくらいだ。  

 

 

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