毎日一冊! Kennie の読書日記

面白い本をガンガン紹介していきます!!

毒入りチョコレート事件

「真実はいつも一つじゃない!」

ミステリの結末なんて、いくらでも恣意的に

コントロールできるよね

という少々自虐的なミステリです。 

 

ミステリを論理パズルとみてはいないので、

作者の仕掛けた罠にはめられたり

キレイな伏線回収があったりして

楽しく読めれば十分だと思うのですが

こういうメタ的な視点もまた面白いと思います。

 

【タイトル】

毒入りチョコレート事件

 

【作者】

アンソニー・バークレー

 

【あらすじ・概要】

 ロジャー・シェリンガムが主催する

「犯罪研究サークル」のメンバーが

「毒入りチョコレート事件」について

それぞれ自分の解釈を述べていく。

 

「毒入りチョコレート事件」の概略は以下の通り。

ユースタス男爵が、試供品として届けられたチョコを

グラハム氏に渡し、グラハム氏は妻と一緒に

そのチョコを食べた。

チョコには毒が仕込まれており、

グラハム氏は一命をとりとめたが妻はなくなってしまった。

 

警察はユースタス男爵に毒入りのチョコを送った犯人を

探していたが、捜査が暗礁に乗り上げたため

「犯罪研究サークル」の助力を得ようとした。

 

6人のメンバーはそれぞれ違う解釈を提示する。

・弁護士のチャールズは

 「誰が利益を得るか」をキーに考え、

 ユースタス男爵チョコを食べ死んだ場合に

 利益を得る男爵夫人が怪しいと考えた。

 

・劇作家のフィールダ夫人は

 「隠れた三角関係」がカギだと考え

 自分の娘と素行の悪いユースタス男爵との

 結婚を阻止しようとしたチャールズ弁護士が犯人だと考えた。

 

・推理作家のブラドリは

 小説家としての実験として考え、

 毒薬の入手やアリバイなど全ての条件を

 満たしている人間として自分自身が犯人だとした。

 

・サークルの主催者ロジャーは

 グラハム夫人の公正な性格から違和感を覚え

 グラハム氏が夫人を殺そうとした事件だと考えた。

 

・小説家のダマーズ嬢は

 グラハム夫人とユースタス男爵に関係があったと見抜き

 ユースタス男爵がグラハム夫人を殺した事件だと考えた。

 

・最後にチタウィク氏は

 グラハム夫人とユースタス男爵の不倫関係から

 また別の事件の構図を提示した。

 

 

【感想・考察】

ひとつの事件に、6人がそれぞれ違う解釈を述べる。

 

そのどれもが「名探偵の解決編」という感じで

読んだ直後はそれこそが間違いない真実だと思わされる。

ところが次の人がその解釈の間違いを指摘すると

明らかに間違っていると感じられる。

 

ミステリの世界で手掛かりの提示など

いくらでも恣意的にコントロールできる。

「これが結論!」という方向性に添って

提示されたヒントを解釈していけばそれらしく見える。

 

小五郎のダメダメ推理を

コナンが「論理的」な推理で覆すのは様式美だが

コナンの「論理的」な推理を、

金田一が「別の論理的」な推理で覆したとすると

何となくモヤモヤ感が残るだろう。

結局は恣意的に操作できることの気持ち悪さだ。

(小五郎のダメ推理はわざとだが)

 

別にミステリに限った話ではなく

「これが結論!」という前提で世界を見るならば

それにそった解釈しか出てこない、

ということもあるのあろう。

 

「それ以外にない」と思っているときこそ

「別の結論でも矛盾は生じないのではないか」

という冷静な見方もできるようになりたい。

 

 

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